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2018/02/05 18:00

インドネシア出身の注目ラッパーによる傑作デビューAL / 『Amen』リッチ・ブライアン(Album Review)

 インドネシア・ジャカルタ出身の19歳。ラッパー/シンガー・ソングライター、コメディアンとしても活躍するリッチ・チガが、Rich Brian(リッチ・ブライアン)へ改名し、実質上のデビュー・アルバム『Amen』を2018年2月2日に発表した。

 これまでに、ゴールド・ディスクに認定されたデビュー曲「Dat Stick」(2016年)や、ソウル出身のラッパー=キース・エイプと、米フロリダ州出身の若手ラッパーXXXテンタシオンとのコラボ曲「Gospel」、そしてポスト・マローンの「ロックスター」(全米8週1位)のフィーチャリング・ゲストとして大注目された21サヴェージ参加の「Crisis」などが全米でもスマッシュ・ヒットを記録したが、本作にはいずれのシングルも収録せず、攻めの姿勢をゆるめない。

 ブルーの丸メガネとファーで装ってみても、上手い具合に垢ぬけない(失礼)ビジュアルが逆に愛らしいリッチ・ブライアンだが、目を瞑って聴いていると、米ラッパーも顔負けの見事なラップを披露する。また、ソング・ライティングの才能もすばらしく、本作は彼の個性と内面が表現された力作といえる。

 1stシングルの「Glow Like Dat」をはじめ、不気味なバック・サウンドに耳をとられるタイトル曲や、お経を唱えているような無機質なラップの「Occupied」、独特の音階の「Cold」や「Kitty」など、本作にはアジアン・テイストが随所に感じられるナンバーが目白押し。エキゾチックな雰囲気漂う「Trespass」や、ノスタルジックな感覚になるラストの「Arizona」も、母国の音楽を節々に取り入れている。その他にも、エフェクト効果で眩暈がするような「Chaos」や、ファレルをお手本にしたような気だるいファンク・チューンの「Introvert」(同レーベルのJojiが参加)など、アジアの音楽を微妙な配分でブレンドした傑作が続く。

 宙に浮くような「Flight」や、ラップを控え目にした歌モノの「See Me」など、我々日本人にも馴染みやすいメロウ・チューンの完成度も高い。女性シンガーのNIKIと、受け答えするようにデュエットする「Little Prince」もしっとり甘く、聴きやすい。ミーゴズのオフセットとコラボした「Attention」は、彼らお得意のトラップ・ソング。同路線の「Enemies」など、アメリカの流行を意識したようなナンバーもある。

 実をいうと、あまり期待しないで聴いてみたのだが、これが意外とすんなり受け入れられた。聴き終わった後、しばらくは不思議な空気に包まれるが、それは心地悪いものではなく、また聴いてみたくなる中毒性をもつ。彼の音楽からは、感傷的な一面や毒も感じられるが、それはアーティストとしての才能がある証拠……だろう。同じアジア人としても、今後の活躍が楽しみだ。怠るべからず。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『Amen』
リッチ・ブライアン
2018/2/2 RELEASE

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