2012/07/19 17:00
2011年春にアニメ『フラクタル』のオープニングに起用された「ハリネズミ」でメジャーデビューした女性シンガーソングライター AZUMA HITOMIが、毎週木曜日23時からUSTREAM配信番組『じっけんじゅんびしつ』を行っている。
小学校高学年より楽曲制作を開始し、中学生で作曲ソフトを出会ってデスクトップレコーディングに目覚めた彼女は、前述アニメで監督を務めた山本寛氏や原案の哲学者 東浩紀氏も絶賛の歌唱力を持つ24歳の女性シンガー。そんな彼女が毎週木曜日に自宅から生放送している当番組は、卓上に並んだ楽器やPC、ペダル鍵盤などを忙しなく操作しながら、歌までうたってしまうという内容の実験的な番組だ。
<どういうテンションで臨めばいいのか>
“Season 1”の放送開始は2011年4月。日本が震災に始まる様々な問題に揺れていた時期だ。実際に多くのミュージシャンが無料配信などで楽曲を発表していたが、そうした影響は「特別関係していた訳ではない」と振り返る。それ以上に、次のリリースやライブまでの間隔が空いてしまったため、デビューしたからには発信を続けていきたいという想いから興したプロジェクトなのだという。
確かにAZUMA HITOMIは『ハリネズミ』をリリースした翌月にデビューライブを行ったが、次作のリリースは同年8月。それから現在に到るまで音源のリリースはなく、ライブも数えるほどしか行っていない。新人ミュージシャンにとって表立った活動を定期的に続けることは必要不可欠なだけに、不特定多数に発信できるネットの特性は彼女にとって渡りに船だったという訳だ。
しかしその一方で、未完成の作品を開示していくことにはミュージシャンとして抵抗を覚える所もあるという。特に彼女はオンとオフをはっきりさせたい性格ということもあり、「“家の中から配信していく”という形だとごっちゃになっちゃうし、どういうテンションで臨めばいいのか難しいんです」と悩ましい表情を浮かべる。
<宅録に興味がない人にも見てもらいたい>
そうした葛藤を抱えながらも、“Season 1”では後に2ndシングルへ収録される「ヒーロー」の制作過程をイチから放送し、同年秋には“Season 2”を開始。放送スタイルも日々進化しており、Season 1~2で楽曲制作ソフトのデスクトップ画面をそのまま配信していた彼女は「画面的にはめちゃくちゃ地味(笑)」と気付き、“Season 3”からはエレクトーンのようなペダル鍵盤も導入。両手に足まで使った演奏風景を中継するライブ的なアプローチに変更した。
「宅録に興味がない人にも見てもらいたい」とは彼女の弁だが、キーボードや各種エフェクト、PCなどを駆使する姿は演奏の忙しなさもあって、確かに見ているだけでも面白い。また最近では昭和歌謡曲のカバーやアレンジした賛美歌に挑戦するコーナーなど、これまで以上の振り幅も備わってきた。放送中は歌もうたうため事前に隣近所に挨拶したそうだが、そんな人柄溢れる柔らかいトークだって実にキュートだ。
<ズレてるくらいが面白い>
そして何より特筆したいのが、薄暗く狭い室内の映像からはまったく想像だにしない音を楽しめる点だ。前述通りミュージシャンとしての評価は抜群の彼女だ。自身も「あの部屋のビジュアルにぴったりする音ではダメなんです。その状況からガッと鳴る音、見えてるモノと聴こえているモノがズレてるくらいが面白い」と胸を張るように、その小さな部屋からド迫力のサウンドが世界に発信されていく。
映像とのギャップという意味では、基本的に顔出しはNGなので映るのは首から下、というカメラ位置も相まって非常にシュールな一面もある。狭い自室から世界に鳴らされていく本物の音楽。AZUMA HITOMIが毎週木曜の深夜に行っている“じっけんのじゅんびしつ”は、シーンを更新していく新しい音楽の可能性が方々に満ち溢れている。
◎USTREAM『AZUMA HITOMIのじっけんじゅんびしつ』
毎週木曜日 23時より放送
http://ustre.am/upes
info:
http://azumahitomi.com/
取材・文 杉岡祐樹
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