2017/11/11
新作をリリースすることが、ここまで大きなニュースとして取り上げられるアーティストも珍しい。アメリカだけで600万枚、全世界で1000万枚以上を売り上げた『1989』から3年振り、通算6作目となるスタジオ・アルバム『レピュテーション』。前作が凄まじいセールスを記録したこともあり、注目されるのは当然といえば当然だが、“そう仕向ける”彼女の見事なプロモーションに感服する。
今夏、SNSの投稿を全て削除し、ヘビが不気味に動く謎の動画を連投したと思ったら、フォトグラファー・デュオ=マート・アラス&マーカス・ピゴットがデザインした、モノクロのジャケット・アートと、新作のタイトルを突如公開。その翌日にリリースされた1stシングル「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」は、「昔のテイラーは死んだから電話に出れない」というつぶやきや、批判的なメッセージが誰に対するものなのか……など、歌詞についての様々な憶測がネット上に飛び交い、10億円以上を費やした宝石風呂や、アメリカ自由人権協会から批判されているヒトラーを連想させるシーンなど、ミュージック・ビデオも大きな話題となった。
その1週間後に配信がスタートした2ndシングル「…レディ・フォー・イット?」は、テイラーのヒット曲でもおなじみのマックス・マーティン(「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」や「トラブル」など)と、シェルバック(「ブランク・スペース」、「シェイク・イット・オフ」など)の2人が手掛けた、インダストリアル風のエレポップ・チューン。ラップを絡めたヴァースとキャッチーなサビ、そして元彼を連想させるフレーズなど、テイラー節全開だ。10月26日に公開されたばかりのミュージック・ビデオも、裸体風の衣装が話題になっている。
彼らの他には、アルバム中6曲を担当したしたジャック・アントノフ(ロード、シーア、フィフス・ハーモニーなど)や、前作『1989』でも大活躍したアリ・パヤミ(ケイティ・ペリー、アリアナ・グランデ、デミ・ロヴァートなど)がソングライターとしてクレジットされている。いずれも、エレクトロ・ポップをお得意とする売れっ子プロデューサーで、過去の実績をみてもテイラーとの相性は抜群。
アルバム・ゲストは、今年の春にリリースしたアルバム『÷(ディバイド)』が大ヒット中のエドー・シーランと、引っ張りだこの人気ラッパー、フューチャーの2人が参加。その2人とコラボした「エンド・ゲーム」は、これまでのテイラーの作品では決して聴けなかったタイプの、シンセ・サウンドとヒップホップが融合した斬新なナンバー。この曲は、アルバムの中でも特にインパクトが強く、クオリティが高い。その他、近未来的な「アイ・ディド・サムシング・バッド」や、ずっしり重たいミッド・チューン「ドント・ブレイム・ミー」~「ソー・イット・ゴーズ…」など、良い意味でテイラーらしさとポップ色を薄めたタイトルが、なかなか聴きごたえある。
一方、アルバム後半には、先行配信された「ゴージャス」や「コール・イット・ホワット・ユー・ウォント」、2015年のヒット曲「アウト・オブ・ザ・ウッズ」をそっくり真似たような「ゲッタウェイ・カー」や「キング・オブ・マイ・ハート」など、テイラーの真骨頂とも言えるポップ・チューンが目白押し。「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」のような、ひたすら耳に残るキャッチーなサビの「ディス・イズ・ホワイ・ウィ・キャント・ハヴ・ナイス・シングス」や「ダンシング・ウィズ・アワ・ハンズ・タイド」など、『レッド』や『1989』の続編的な曲もある。おセンチな「デリケート」や、浮遊感漂うファルセットに浸っていたくなる「ドレス」、初期のカントリー時代を彷彿させる「ニュー・イヤーズ・デイ」など、メロウ系も充実。
プロモーションについては、若干ヤリ過ぎた感否めないが、楽曲に関しては計算高くも上質なポップ・ミュージックが揃っている。リリース直前に、ディプロが「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥは若者が聴きたい曲じゃない」などとSNSで批判したことが話題となったが、逆をいえば、テイラーの音楽は、もはや若年層よりもひと回り上の世代が聴く音楽に進化を遂げた……ということかもしれない。
Text: 本家 一成
◎リリース情報
『レピュテーション』
テイラー・スウィフト
2017/11/10 RELEASE
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