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2017/11/04

銀杏BOYZ「抱き締めてくれ かけがえのない愛しい人よ!」よどみ続ける愛を独り独りが歌い叫んだ夜―――いつか国立競技場で

 2017年10月13日(金)日本武道館、銀杏BOYZが過去最大規模となるワンマンライブ【日本の銀杏好きの集まり】を開催。峯田和伸(vo,g)をはじめ、そこに集いし銀杏好きたちがよどみ続ける愛を歌い叫びながら泣いた。あれから3週間経った今でも夢だったんじゃないかと思うような、けれども確実に「夢で逢えた」実感を残したままの夜について記したい。

<銀杏BOYZから卒業できなかった=相変わらず上手く生きれない者達の集い>

 銀杏BOYZによって人生を変えられたと語るファンは多い。自分もそう思っているひとりだ。関心の湧かない人が冷静にライブを見たら「気持ち悪い」「うるさい」「汚い」「いいかげん大人になれ」と笑われてしまうかもしれない、でも、例えば、誰もがあたりまえのように出来ることが出来なくて、どこにいても誰といても虚しくて寂しくて怖くて怖くて仕方なくて、それでも死ぬことも出来ずにそこに生き続けていくしかない、そんな絶望と対峙し続けている人。例えば、30代になっても40代になっても50代になっても世間との折り合いの付け方が分からず、それでもいいや俺は俺なんだからと笑いながら生きていくんだけれども、時折寄せてはかえす憂鬱の波に飲み込まれて立ち往生してしまう人。例えば、もう死ぬほど大好きな人がいて、その人のことを想うと夜も眠れなくて、その人の為なら何だってしてあげたい、もしこの世界で一緒に生きてくれるのなら死んでもかまわないとまで思うのに、その想いが伝えられなくて、もしくは伝わらなくて、愛があるのに捌け口が見つからなくていつも泣いている人。そんなどうにもこうにもみんなのように上手く生きれなくて、でも発狂する場もなくて、大人にもなりきれなくて、大好きなあなたへの想いも抑えられなくてのたうちまわっているクソったれにとって、銀杏BOYZと峯田和伸の生き方とソレが2000%溢れ出す恋と性春とよどみ続ける愛の歌は、どうしようもなくその人生に突き刺さり、気付けば生きる指針となっていた。

 あの日、日本武道館で開催されたワンマンライブ【日本の銀杏好きの集まり】は、そんな銀杏BOYZから卒業できなかった=相変わらず上手く生きれない者達が集い、そんな自らの人生を今一度気が狂うほどに奮い立たせながら、行く宛のないよどみ続ける愛を独り独り歌い叫んでいく。そんな夜のように感じられた。

<今日だけは、銀杏BOYZがこの国を背負って歌わせて頂きます!>

 銀杏BOYZ初の日本武道館公演。銀杏BOYZによって人生を変えられた人々が、銀杏BOYZへの狂信的なまでの純粋な想いを語る映像がスクリーンに映し出される。そんな自分の分身のような人々の姿をまっすぐに見つめるていると、山本幹宗(g)、藤原寛(b,AL)、岡山健二(dr,classicus)、加藤綾太(g)といった面々がステージに登場。重く激しくノイジィな轟音が怒り狂ったように唸りを上げる空間、そのど真ん中で峯田和伸が呼びかける。「ハローマイフレンズ! ハローマイフレンズ! そこに! そこに居るんだろ!? そこに居るんだろ!? ハローマイフレェェェェンズ!!!!!!!」それがかつてのバンドメンバーへの呼びかけのなのか、会場に集いし独り独りへの呼びかけのなのか、真相は知る由もないが、音源の数百倍と言っても過言ではない熱量を叩きつけた音の渦の中で「ロックンロールは世界を変えて 涙を抱きしめて」と決死の形相で峯田が歌い、それに決死の形相で呼応しながら暴れ狂う人々の姿……といった光景は純度100%の銀杏BOYZ。メンバーが辞めたからとか新しくなったからとか、峯田が年齢を重ねたからとか、俺たちも大人になっちまったからとか、あの頃の銀杏のほうが良かったとか、もうそんなこと全部全部どうでもよくなる、余裕で吹っ飛ばしていく次元の、要するに「俺たちはコレに人生を変えられたのだ」と再確信させられる銀杏BOYZが日本武道館で体現されていく。

 「2017年10月13日の金曜日。今日だけは、今日だけは、銀杏BOYZがこの国を背負って歌わせて頂きます!」

 宙に浮かぶ巨大な日の丸の下、輪郭がぶっ壊れるほどの衝動で歌い鳴らされるナンバーは「若者たち」「駆け抜けて性春」といった代名詞的な楽曲たち。国を背負って命懸けで歌い叫ばれる「少年よ! ナイフを握れ! 心の闇を切り裂いてぇぇぇえ! この時代に! この国に生まれ落ちた俺達……光溢れ 涙ふいて 気がふれちまうような! そんな歌が歌いたいだけさ! サア! タマシイヲ! ツカマエルンダー!」といった衝動。さらには「あなたがこの世界に! 一緒に生きてくれるのなら! 死んでもかまわない! あなたの! あなたのために!」と世界で最も愛おしいあなたへの想いの全てを、溢れさせても溢れさせても止め処なく溢れ出てくる想いの全てを、それでもあなたの心には届かなかった想いの全てを1万人独り独りが歌い叫んでいく光景は、日本にどれだけの数のバンドやアーティストやアイドルが存在するのか知らないけれども、間違いなく銀杏BOYZでしか体感できないもの。この日初めて日の丸の下で、日本武道館の長い歴史上初めて生み出された世界だった。

<42.195キロを「一瞬で俺のモノにしてやる!」と思って走ってきたバンド>

 「1997年に、ちょうど20年前に、僕はギターを持って、曲を作って、バンドを始めて、生まれて初めてライブやったのも、1997年の11月です。GOING STEADYっていう名前のバンドでした。高円寺のギアっていうライブハウスで、もう200人も入ればいっぱいいっぱいのところに、大学の友達だったり、メンバーの友達いっぱい集まってくれて、80人ぐらい集まった中で「バカヤロー! 峯田、ヘタクソー!」ってヤジ飛ばされながら、何とか初ライブをやりました。それが20年前の11月でした。あれから、気付いたらもう結構時間が経って、あのときの友達ともお別れすることになって、いろんなことがあって、銀杏BOYZというバンドを始めて、そこから今日という日を迎えて、ちょうど自分がバンドをやって20年で、こういう大きいところで……今日はなんかすぐ売り切れたらしいです。大したもんだよ、銀杏BOYZ。1回もメジャーにも行かず、自分のワガママでCDを出したいときに出して、ワガママ放題やってきて、それでも何とか好きなことだけやり続けて、妥協もしながら、悔し涙も流したかもしんねぇな! でも、そういうのもあったけど、今日という日の為に、こんな日本武道館のライブの為に、すべて、悔しいことがあったんじゃねぇかなと思ってます! よかったなぁ~!」

 「今まで「武道館だ!」っつって、「さぁやっか!」っつって、最初の4曲でもうこんなに体力のないバンドは今までいないんじゃねぇかなって。もうちょっとコリゴリですわ(笑)。でも、俺は初めっからそうやりたかったの! バンドやったときから、例えば、42.195キロ走る。そういう長距離を走る長い目で、長い人生で音楽をやるって人がまわりにいっぱいいました。そういう人たちはそういう走り方で走ってる。42.195キロ完走させる走り方で走ってる。でも俺はそれは出来なかった。俺は「よーい、スタート」で全力でやりたかったの。最初にパーン! ってトップギアで走って「バカじゃねぇか、あいつ! あいつ、100メートル走の感じで走ってるぞ!」って。でも俺はそういう走り方をしたかったんです! その結果、途中でぶっ倒れ! まわりから抜かされ! ちゃんと、ちゃんとみんなが42.195キロを走る走り方でゴールしていく中! 倒れっぱなしで! 空を見上げながら! 「また走ってやんぞ!」ってまた100メートル走る走り方で走って! またぶっ倒れ! まだ俺はゴールまで着いていません。でもこの走り方で42.195キロ走れると思ってます。「距離なんて関係ねぇ」っつって、遠くまである42.195キロを「一瞬で俺のモノにしてやる!」と思って走ってきたバンドです、銀杏BOYZは! どうかその負けっぷりを……負けてねぇわ、まだ! ただ空を見てるだけ! また走ろうとしてっから! それを何回も繰り返して! 俺は走っているあいだだけは! 100メートル走る走り方で走って! その走り様を見ててほしいです、僕は!」

 「今言ったのは、昨日の夜「こういうこと言おう」と思ってました(笑)。あとはもう、あとはもう流れに任せていつもみたいに喋ろうかなと思ってる。「生まれてきてよかったなぁ」と思った日は全くないです、今まで。「生まれてきてよかったなぁ」って日はねぇけど、「生きててよかったなぁ」と思った日はあります。今日みたいな日です!」そう語って峯田がギター一本で歌い出した曲は「べろちゅー」。ほっぺたも、おっぱいも、小さいな寝息も、あなたのすべては僕の宝物。そんなあなたへの、格好付けや駆け引きや世間体やそんなものを一切排除した「キスをしよう キスをしよう ふいていいよ 潮 べろちゅー」=純愛を、次第に優しく包み込むバンドサウンドと共に愛おしさを溢れさせながら歌い届けていく。ちなみに「生まれてこなければよかったと 思ったときもあったけど でも生きててよかったよ」このフレーズがこの夜だけはまた違う意味を持って響いていたのも気持ちよかった。

<ひとりぼっちだけの空間で「夢で逢えたぜ!」>

 「愛しちゃいたい。愛しちゃいたい。愛しちゃいたい。オーベイベー! きもいね。しゃあないね。骨までしゃぶらせてぇぇぇえ!」その後も銀杏BOYZの音と峯田の歌はどこまでも純粋に響き渡っていく。激しくも優しく染み渡っていく。本気の笑顔と涙をたくさん生んでいく。そんな過剰なまでにロマンティックな夜を体感させてくれるこの日の日本武道館は、峯田の部屋だった。

 「ここは僕の部屋なんです。同時にあなたの部屋でもあるんです。長い間、俺はライブが出来ない時期がありました。何年間か。いろんな事情があって、まぁグダグダグダグダ毎日……ちょうど俺の部屋は壁一面がカーテンになってて、昼間っから動けねぇときは、寝っ転がって「俺は果たして人前で、お客さんの前でライブする日が来んのか?」って。ずっとこうやって頭を抱えて、そのカーテンばっかりを眺めてました。窓が開いていると、たまにそっから風が入って、カーテンがふわりふわりって揺れるその隙間から、真っ青な、綺麗な青空が見えたりして、でも俺の部屋は電気もつけず暗い、物で埋め尽くされ、ここから一歩も飛び出せないでいる自分の部屋。隙間から見える青空。あんときの夢が、あんときの夢がずっと、あの部屋のまま鳴り響いてます。日本武道館、日本武道館、どうもありがとう。ここは僕たちだけの部屋です。そして、この会場に来れなかった、来たくても来れなかったアイツらの、寝っ転がって、夢想した側の、僕たちの映像の光景です。僕の部屋は僕を守るけど、僕をひとりぼっちにもする。僕はこんな空間が欲しかったんです。ひとりぼっちだけが集まったこの空間が欲しかったんです。ひとりぼっちだけが集まったこの空間で、世界がひとつにもなれず、大合唱が起きる訳でもなく、ひとつにまとまった変なコンサート風景ではなく、思い思いの、独り独りが歌ったり黙ったり踊ったり手拍子したり、そんなひとりぼっちだけの空間が、僕は見たかったんです。今日は本当にどうもありがとうございました。あの日見た夢は、僕が独りで昼間見ていた夢は、きっと、きっとあなたたち独り独りも見たに違いない!」

 そう語って「夢で逢えたら」を歌い始めると、1万人独り独りも「夢で逢えたらいいな 君の笑顔にときめいて~ 夢で逢えたらいいな! 夜の波をこえてゆくよ~♪」と歌い出すのだが、その光景に向けて峯田は一言。「夢で逢えたぜ!」

 この後の熱狂ぶりは記すまでもないだろう。

<この曲を歌うときは、アイツらが俺の背中の後ろに立っててくれて>

 そしてライブは怒涛の終盤戦へ。ノンストップで畳み掛けられる「ナイトライダー」「トラッシュ」「I DON'T WANNA DIE FOREVER」「恋は永遠」といったキラーチューンたちに身も心も投じている間に時間は一瞬で過ぎ去っていき、いよいよ、これまでも幾度となく生涯忘れないであろう光景を生み出してきたアノ曲の出番がやってくる。「おそらく自分のバンド人生で、これから歌う歌は一番いっぱい数多く歌ってきた曲です。今日ももちろんこの曲を歌います。BABY BABY BABY BABY 君を抱きしめていたい~♪ ……村井くん(村井守/dr)、あびちゃん(安孫子真哉/b)、チンくん(チン中村/g)、アサイくん(アサイタケオ/g)、斎藤正樹(mg)……どうもありがとう。初めてこの曲を家で作って、下北の練習スタジオで俺が披露したとき、なんか村井くんはもう涙目になって(笑)、「すげぇ曲持ってきたねぇ!」ってみんなに言われて、あんときのメンバーの姿が今でも、今でも、今でも俺の頭の中に焼き付いてて。アイツらは、今は隣にはいねぇけど、この曲を歌うときは、俺がステージで歌うときは、アイツらが俺の背中の後ろに立っててくれて。そして、今、山本幹宗(g)が、加藤綾太(g)が、岡山健二(dr,classicus)が、藤原寛(b,AL)が、峯田和伸(vo,g)が、何年経っても、何回も何回も何回も……まるで初めてお客さんの前で披露する、そんな気分でこの曲を今日も歌いたいと思います。幸せです!」

 銀杏BOYZは青春を体現しているような存在でもあるから、バンドと女の子がすべてのような音楽でもあったから、それが永遠のように続くものだとどこか信じていたから、9年ぶりのオリジナルアルバム完成と共にメンバーがみんな脱退してしまったときは、それでもって新作やそのMVで女の子を殺し出してしまったときは、「それでも銀杏BOYZを続けていく峯田の意思と、狂おしいほど魅せられてしまったあの4人の銀杏BOYZが最後に解き放ったロックンロールは、どうしようもなく重くて眩い」とか「身近な人の生き死にぐらい悶々とさせてくれるロックを俺は聴きたい」とか言ったり書いたり思ったりしてはいたけれど、本当はもうとにかく寂しくて悲しくて切なくて何もかも終わってしまったような感覚にすらなって、きっとそんな感覚になっていた人は少なくなかったと思うんだけれども、なんかもう俺の青春は本当に終わったんだな。やっぱりちゃんと大人になんなきゃいけねぇんだな。もう銀杏BOYZは思い出にするべきなんだな。そんな風に思っていたんだけれども、この日の「BABY BABY」を聴いたらそれすらもバカバカしいことだったと感じるぐらい、銀杏BOYZは何も変わらずそこにいて、それは峯田和伸だけがそうってことじゃなくて、山本幹宗も、加藤綾太も、岡山健二も、藤原寛も、村井守や、安孫子真哉や、チン中村に負けじと完全なる銀杏BOYZになっていて、そうすると不思議なもんで女の子もそこに蘇ってきて、気付けばステージを見ても客席を見ても誰もが必死に「抱き締めてくれぇぇぇぇ! かけがえのない愛しい人よ~!」と歌い叫んでいて、今まで体感してきたどの「BABY BABY」よりもあいくるしい「BABY BABY」が鳴り響いていて、峯田和伸は「終わらせたんじゃなく続けたんだ」と、ようやくそう心の底から確信することができた。それこそこの「BABY BABY」を「永遠に生きられるだろうか 永遠に君のために」と思いながら歌い続けていくこと、この日みたいにひとりぼっちたちといつまでも歌い叫んでいくことが峯田の、銀杏BOYZの使命みたいなもんだとするのなら、峯田は「あと何回歌えるんだろうなぁ」と曲中に囁いていたけれど、何回でも聴いていたい。何回でも歌っていたい。何回でもその瞬間に立ち会いたいと思った。それぐらいこの日の「抱き締めてくれ かけがえのない愛しい人よ!」という叫びは、心を貫いた。

<峯田和伸 3つのターニングポイント「……もう1個は、今日です」>

 「自分にとってターニングポイントだったなというのが大きく3回あるんですけど、1回目は高校3年のときに、まだ全然バンドなんてやろうと思っていないときです。クラスメイトの森くんという人から「高校卒業する前によ、ライブやるんだけど、ボーカルいねぇから、かんちゃん歌ってみねぇ? って言われて。そのとき即答したんですよ。「あ、じゃあ、やる」って。なんでかわかんないけど。それまで全然ないんですよ! 歌ってみたいと思ったことが。でもそんとき、なんかやりたいと思ったんですよね。あんときね、あんとき変わったんですよ、なんか俺の中で。二つ目は、高校卒業間近にグリーン・デイっていうアメリカのバンドが日本に来るって言われて、授業休んで行ったんですよ、斎藤正樹くんと。で、東京の西葛西に親戚がいるんですけど、深沢さんっていう。深沢さん家泊まって(笑)行ったんです、グリーン・デイ。帰り、俺と斎藤正樹くんは何も言わねぇで夜の街歩いて、公園があったんですね。その公園のブランコ座って「今日凄かったね」っつって、そのとき俺、正樹に言ったんです。「俺、将来、バンドやるわ」って言ったんです。いきなり出たんです、その言葉が。そしたら斎藤正樹は「じゃあ、俺、マネージャーやるからよ」って言ったんです。そいつ、本当にGOING STEADYのマネージャーになりました。ま、銀杏になってしばらくしてから辞めましたけど。……もう1個は、今日です。1曲目が鳴った瞬間に、あなたたちから「来てくれてありがとう」と言われた気がしました! 勝手な妄想です。「歌え」って言われた気がしました。この3つです。自分にとっておっきな日になりました! 多分、忘れないと思います。多分、多分だけど(笑)。どうもありがとう!」

 静けさの中に峯田が弾き語る「新訳 銀河鉄道の夜」。そして「あなたは僕のはじまりで あなたは僕の終わり」というフレーズのあと、ほんの少しの沈黙が流れ、この日最もロマンティックで美しいバンドの調べが武道館を埋め尽くしていく。「ハロー、今、君にすばらしい世界がみえますか」「信じますか よどみ続ける愛を」すべての言葉が自分への問いかけのように突き刺さっていく。武道館がまさしく僕らの部屋=宇宙へと姿を変えていく。

<国立競技場で「BABY BABY!」ってなんかワァーってなりてぇな、いつか>

 「あの、味を占めてしまったみたいなので、また来年、武道館やります。(でも)こればっかりは俺たちだけで決めることじゃない。抽選らしいですよね? 抽選。(凄まじい歓声に対して)……酷いねぇ。こんなに武道館のステージに立って虐められると思いませんでしたよ。凄いですよ。聞こえてないかもしんないけど「もうやんな」とか「くたばれ」とか「もう死ね」とか(笑)。でも本当に嬉しいっすね、そういうのは。「ありがとう」と言われるより全然嬉しいですわ。なんか「ちくしょー」ってなりますわ! ……また、またやりたいッスね。また会いたいッスね。今、あんのかな? 上に、国旗って。日の丸って凄いッスね。サッカー日本代表とか「日本を背負って戦います」とか言ってますけど、今日は、なんか俺「日本人に生まれてよかったな」と思って(笑)。あの、こんな汚ねぇバンド、なかなか海外にはいないと思います。やってみてぇなー、ウェンブリースタジアムとか。一番やってみたいのは武道館だべ? あと、今、改築している国立競技場。国立競技場で「BABY BABY!」ってなんかワァーってなりてぇな、いつか。こんな……ま、あんまり自分をね、汚いとか言うの辞めます、これから。下からなんか上のほう見て「ヘッ!」て言うのも、そんなだせぇのはやりたくないですね、もう。堂々としてたいですね。ロックバンドとして……ロックバンドって言っていいのかな? あんまりミュージシャンとかアーティストとかね、あんま……ただ、銀杏BOYZってロックバンドは! これからもいっぱい曲を作って、また来年あたり曲を作って、CD出して、ツアーとかやって、またあなた達の前でライブできたらいいなと思ってます。今日はどうもありが……何言ってんだ? もういいや。聴けや!」

 笑いと喝采に包まれ、その直後「本当にこういう風に思って作ったんです。誰にも、誰宛でもない、手紙みたいなものです」と峯田が歌い出したのは「光」(アルバム『光のなかに立っていてね』バージョン)。時折声を詰まらせながら、それでも搾り出しながら「ひかりぃぃぃ! ひかりぃぃぃ! 君をつつめよ……」「いけるかな……光の射す場所へ~~っ!!!!!!!!!!!」と感情を爆発させると、そこへドゥーン! と鈍くて重くて激しい爆音が鳴り響き、かの【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2004】のステージをも彷彿とさせる衝撃。誰もが我を無くしたように暴れ回りながらバンドを鳴らす、銀杏BOYZの真骨頂とも言える生々し過ぎる音楽が雄叫びを上げていく。そして間髪入れずの「NO FUTURE NO CRY」。日本を代表するパンクロックにくそったれの世界は狂乱の一途をひた走っていく。

 そんな変わらぬ原風景を見せつけて「また会いましょう。どうせくだらねぇ、しょうもねぇ毎日が続くとしても、たまに今日みたいな日があるから、今日の日をもう1回、もう1回、味わえますように、援助交際なんてなんぼでもやっていいから、シャブなんてなんぼやってもいいから、生き延びて生き延びて、その先にどっかでまたこうやってバカみてぇな顔して会いましょう。臭い匂い出して会いましょう。銀杏BOYZでした。今日は本当にどうもありがとうございました!」と挨拶し、そこに聴こえてきたイントロダクションは「僕たちは世界を変えることができない」。世界を変えることができないことを知っても、それでも泣きながら生きていくひとりぼっちたちを優しく切なく包み込む言葉とメロディー、そして「ベイベー! ベイベー!」峯田の叫びでもって【日本の銀杏好きの集まり】の本編は締め括られた。

<もしも君が泣くならば僕も泣く>

 「やるなら今しかねぇべ! やるなら今しかねぇべ! やるなら今しかねぇべ! やるなら今しかねぇべ! やるなら今しかねぇべ!……」銀杏好きの集まりによる叫びに誘われるように峯田和伸、再び登場。そして弾き語り出す。「君が泣いてる夢を見たよ 君が泣いてる夢を見たよ 僕はなんにもしてあげられず 僕はなんにもしてあげられず まわる まわる ぐるぐるまわる 吐くまで踊る 悪魔と踊る まわる まわる ぐるぐるまわる 吐くまで踊る 悪魔と踊る」銀杏好きなら誰も全身全霊を鷲掴みにされたであろうアノ曲「人間」を最初から最後まで独りで、「悪魔と……悪魔と……悪魔と……悪魔と……悪魔と……悪魔とぉ! 悪魔とぉ! 悪魔とぉぉぉぉぉぉ! あなたとぉぉぉぉぉぉ……踊るぅ!」と同曲の意味合いを深化させて独り独りへ向けて届けてみせた。

 そして「今日朝起きたら雨が降ってて、でも会場に入ったの12時過ぎだったんですけど、タバコ吸いに外に出たらちょうど雨が止んでて、雨がちょうど止んだときにすげぇ懐かしい匂いがして。しょっぱい、青臭い、大好きで! ちょうどこの曲やりたかったんですよね! 夕立が過ぎて いぇーい 街の匂いはしょっぱくなった SMELLS LIKE A VIRGIN いぇーい 電車も武道館もキラキラしてんだ♪」と愛すべきベイベーたちと楽しげに「ぽあだむ」を歌い踊り、そのままライブはオーラス「もしも君が泣くならば」へ!

 もしも君が泣くならば僕も泣く
 もしも君が死ぬならば僕も死ぬ
 もしも君が無くなれば僕も無く
 もしも君が叫ぶなら僕も叫ぶ

 もう峯田もバンドメンバーも誰も彼も泣きながら笑いながら悶えながらぐちゃぐちゃになって歌い叫んだ君への歌。42.195キロを100メートル走の走り方で駆け抜けんばかりに吐き出した君への想い。もう完全に完全燃焼しきった銀杏BOYZと銀杏好きの汚くて綺麗な表情。そんな世界をRCサクセションの「スローバラード」が優しく包み込んで、よどみ続ける愛を独り独りが歌い叫んだ夜は幕を閉じた。あれから3週間経った今でも夢だったんじゃないかと思うような、けれども確実に「夢で逢えた」実感を残したままのこの夜に包まれて、僕は行く宛のないよどみ続ける愛を今も育て続けています。そんな独り独りが再び武道館で集結するときは、もしかしたら国立競技場に集結できちゃったときは、どんな想いと光景に出逢えるんだろうか。その日を夢見ながら何が何でも生き延びて生き延びて、またいつか「夢で逢えたぜ!」と言い合えたらいいな。

取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:高田梓

◎ライブ【日本の銀杏好きの集まり】
2017年10月13日(金)日本武道館 セットリスト:
01.エンジェルベイビー
02.まだ見ぬ明日に
03.若者たち
04.駆け抜けて性春
05.べろちゅー
06.骨
07.円光
08.二十九、三十
09.夢で逢えたら
10.ナイトライダー
11.トラッシュ
12.I DON'T WANNA DIE FOREVER
13.恋は永遠
14.BABY BABY
15.新訳 銀河鉄道の夜
16.光
17.NO FUTURE NO CRY
18.僕たちは世界を変えることができない
En1.人間
En2.ぽあだむ
En3.もしも君が泣くならば

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デイドリーム 祈り
銀杏BOYZ「デイドリーム 祈り」

2018/11/07

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デイドリーム 祈り
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ちえのわ feat.峯田和伸
東京スカパラダイスオーケストラ 峯田和伸「ちえのわ feat.峯田和伸」

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恋は永遠
銀杏BOYZ「恋は永遠」

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エンジェルベイビー
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生きたい
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愛地獄
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