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2017/10/30

ソウルフルなナンバー目白押し! アトランティック移籍後初の新作 / 『ミーニング・オブ・ライフ』ケリー・クラークソン(Album Review)

 「アメリカン・アイドル初代グランプリ」…というカタガキも、もはや不要のトップシンガー、ケリー・クラークソン。これまでにリリースしたスタジオ・アルバムは7枚。内、2003年にリリースしたデビュー作『サンクフル』と、2009年の4thアルバム『オール・アイ・エヴァー・ウォンテッド』、そして7thアルバム『ピース・バイ・ピース』(2015年)が全米アルバム・チャートでNo.1に輝き、7枚全てのアルバムがTOP3入りを果たしている。

 新作『ミーニング・オブ・ライフ』は、前作『ピース・バイ・ピース』から2年半振り、通算8作目のアトランティック移籍後、初のスタジオ・アルバム。本作からは、「ラヴ・ソー・ソフト」と「ムーヴ・ユー」の2曲が先行シングルとしてリリースされている。

 「ラヴ・ソー・ソフト」は、メーガン・トレイナーの大ヒット曲「オール・アバウト・ザット・ベース」のような、60年代のモータウンを彷彿させるレトロなソウル・ミュージック。途中、一定の音程でラップするように歌うフレーズも飛び出す、これまでの作品では聴けなかったタイプの意欲作だ。国内盤には、キャッシュ・キャッシュとライアン・リバックのリミックスも収録される。一方、「ムーヴ・ユー」は自身のヒット曲「オールレディ・ゴーン」のような、熱を帯びたバラード曲。ゴスペル隊をバックに従えた、ケリーのパワーボイスに圧倒させられる。

 制作陣には、リアーナやシーアなどの歌姫をプロデュースしたジェシー・シャトキンや、ケリー最大のヒット曲「ストロンガー」を手掛けたグレッグ・カースティン、マドンナが絶賛する女性シンガー・ソングライター=MoZella、フィフス・ハーモニーの「ワース・イットfeat.キッド・インク」を大ヒットに導いたプリシラ・レネアなど、人気・実力を兼ね備えたプロデューサーたちが参加。ブラック・ミュージックに精通したメンバーを揃えたのは、R&B界の女王=アレサ・フランクリンなどを輩出した“アトランティック・レーベル”を意識してのことだろう。ソウルフルな先行シングル2曲が、それを物語っている。

 その他にも、ホーンの音が飛び交う70年代風ファンク「ホール・ロッタ・ウーマン」や、情熱的に熱唱する6/8拍子のブルース「ミーニング・オブ・ライフ」 、リアーナの「ラヴ・オン・ザ・ブレイン」を焼き直したような「ドント・ユー・プリテンド」、アレサを意識したゴスペル調のピアノ・バラード「アイ・ドント・シンク・アバウト・ユー」など、ソウルフルなナンバーが目白押し。「ラヴ・ソー・ソフト」の続編ともいえるキュートなポップ・ソウル「ディドゥント・アイ」もイイ。メーガンの亜流と言われても、こういったタイプの曲にもう少し挑戦して欲しかった。

 一方、代表曲「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」や「ウィズアウト・ユー」のような売れ線でははないが、「ヒート」や「メディスン」、「ウッド・ユー・コール・ザット・ラヴ」など、全盛期を彷彿させるポップ・ロック路線のナンバーもある。ラストの「ゴー・ハイ」も、ケリーらしい輪郭のハッキリしたメロディのミッド・チューンだ。こういった楽曲にも、以前と明確な違いが表れたのは、その歌い方だろう。パワフルさが増しただけでなく、パワーを抑えて優しく歌うバラード曲「クルーエル」や、ムーディーなタイトルまんまの「スロウ・ダンス」など、包み込むような優しさが感じられる。おそらく、2児の母になったことが、表現力に繋がったのだろう。アルバムの発売前、デビュー当時に無理なダイエットを強いられていたことを告白したケリー。2002年のデビュー当時と比べると、体重の増加は一目瞭然だが、そのボリューム・アップも良い具合に歌に反映している。

 転機となった本作『ミーニング・オブ・ライフ』が素晴らしかっただけに、今後はさらにR&B色を強めた作品や、ゴスペル・アルバムのリリースにも期待したい。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ミーニング・オブ・ライフ』
ケリー・クラークソン
2017/10/27 RELEASE

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