2017/10/27
桜の咲く頃、東京・上野の美術館・博物館やコンサートホールで行われる【東京・春・音楽祭】。もはや風物詩ともなってきたこの多彩な音楽祭のプログラム発表が10月26日に発表された。
東京・春・音楽祭実行委員長の鈴木幸一氏からは「東京春祭ワーグナーシリーズ」として『ローエングリン』の開催に世界のワーグナー・テノールであるフォークトを迎えること、没後150年を迎えるロッシーニの楽曲をフューチャーすることなどが見所として紹介された。またウィーンで絶賛されたエリザベート・レオンスカヤの6日間に渡るシューベルト・ソナタの演奏会が実現。恒例の「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」「東京春祭チェンバー・オーケストラ」など室内楽の充実についても発表された。
また2019年からは、旧知のリッカルド・ムーティと3年をかけてイタリアオペラ・アカデミーを実現することも発表。「多くの人に来てもらって、新たな発見があったり慰めがあるような音楽祭にしたい。初期はオペラやブラスバンドという内容のみだったが、ようやく音楽祭を始めたときにやりたいと思っていた音楽祭の形に近づいてきた。上野の音楽祭で初めて音楽に触れる、というような方々にも来て頂けるようなイベントにしたい」と、衰えるところのない音楽祭への情熱を語り、2018年、来たるべき音楽祭15周年を見据えての冒頭挨拶となった。
東京・春・音楽祭事務局長の芦田尚子氏からは、2018年の聴き所として豪華歌手陣が揃うことが挙げられた。大規模演奏会としてはワーグナー「ローエングリン」、ロッシーニ「スタバト・マーテル」が。他、ローエングリン出演のフォークトが2回の別プログラムでのリサイタル、ワーグナー歌手として著名なペトラ・ラングの日本初リサイタルそして欧州の歌劇場で活躍する日本人歌手の中村恵理や藤木大地の共演など、注目の公演が挙げられた。また室内楽と歌の組み合わせでは、トマス・コニエチュニーとシンフォニエッタ・クラコヴィアが奏でるペンデレツキ・プログラム、シリーズ「ベンジャミン・ブリテンの世界」について、演奏機会の少なさと共に、注目公演として名前が挙がっていた。
他、東京国立博物館をはじめとした美術館・博物館など、コンサートホール外の文化施設でのコンサートをこれまで多数実施してきた東京・春・音楽祭が、今年初めて利用する場所として、元グランドキャバレーの「東京キネマ倶楽部」を利用したコンサートを予定していることを発表。ソプラノ中嶋彰子やダンサーを迎え、キャバレーソングやシャンソンの世界を再現する、まったく新しいコンセプトだ。夜の21:30に開演するこのナイト・イベント、1部は終電前に終わるが、オールナイトで行われる2部は当日のお楽しみとのこと。ミュージアムコンサートを聴いてからのハシゴもできる時間設定となっている。
午前から夜までかけて実施する恒例の「マラソン・コンサート」は没後150年を迎えるロッシーニ特集。ウィーン楽友協会の協力を得て、ロッシーニの人生に迫るプログラミングだ。ヨーロッパ文化史研究家、小宮正安氏が企画構成、お話を担当。当日は全公演をライブネット配信する。
【東京・春・音楽祭】は2018年3月16日から4月15日に行われる。東京文化会館をはじめとしたコンサートホールのほか、東京国立博物館、東京都美術館などの各美術館・博物館、上野駅、カフェ、レストランなど多様な空間を会場として行われるコンサートは、合計約150公演にのぼり、うち無料の公演は100公演ほど。共に登壇した上野観光連盟会長二木氏、上野「文化の杜」新構想実行委員会事務局長 村上氏、公益社団法人日本オーケストラ連盟 常務理事・事務局長 桑原氏も、これまでの音楽祭の上野の街への、さらには多くの人々への影響力を振り返り、期待や抱負を語った。
情報サイトではローエングリンにまつわる鑑賞講座の連載もスタートするなど、次の春を迎える為の準備は着々と進んでいる。充実のプログラムを、今から楽しみにチェックしておきたい。Text:yokano
◎公演概要【東京・春・音楽祭】
2018年3月16日~2018年4月15日
東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂、上野学園石橋メモリアルホール、東京国立博物館、国立西洋美術館、東京都美術館、国立科学博物館、上野の森美術館、東京キネマ倶楽部
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