2017/10/23
2015年11月にリリースした5thアルバム『メイド・イン・ザ・A.M.』で、活動休止を発表したワン・ダイレクション。この時点で既に脱退していたゼインが、翌2016年1月に全米首位を獲得したシングル「ピロウトーク」で華々しいデビューを飾り、次にソロ活動を始動させたのが、ナイル・ホーランだった。
同年9月に発表したデビュー・シングル「ディス・タウン」が、イギリスやオーストラリアなどの主要国でTOP10入りし、世界各国でスマッシュ・ヒットを記録。この曲は、1Dの「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」(2013年)などを手掛けた、ジェイミー・スコットとナイルの共作。1D時代では聴くことができなかった、オーガニックなフォーク・バラードに挑戦している。ゼインのような、いわゆる売れ線ではなく、この曲をソロ第一弾シングルにもってくるあたり、アーティストとしての拘りを感じる。
今年5月にリリースした2nd「スロウ・ハンズ」は、カントリー調のファンク・ポップ。優しい雰囲気の「ディス・タウン」とはまた違う、色気漂うセクシーなボーカルが印象的な、男気溢れるナンバーだ。プロデュースは、1Dの「ベスト・ソング・エヴァ―」(2013年)や、「スティール・マイ・ガール」(2014年)などを手掛けた、ジュリアン・ブネッタが担当。アイルランド3位、オーストラリアでは2位をマークし、全米チャートでもTOP20内にランクインし続けている。
その「スロウ・ハンズ」を制作するにあたり、70年代後半から80年代の音楽を聴き、参考にしたと話していたナイル。2曲の先行シングルからも予想できたが、本作『フリッカー』は、フリートウッド・マックやイーグルスなど、自身がリスペクトするアーティストを彷彿させる、70年代~80年代あたりのロックやカントリーを焼き直した内容になった。
それが色濃く反映しているのが、「ユー・アンド・ミー」や「オン・マイ・オウン」などの重圧感あるロック・チューン。物悲しく歌うミッド・チューン「ペイパー・ハウゼズ」も、古いフォーク・ソングを聴いているような気分に浸れる。マルーン5を意識したようなディスコ・ポップ「シンス・ウィア・アローン」は、モロ80年代だ。今年2月に開催された【第59回グラミー賞】で、<最優秀新人賞>にノミネートされた女性カントリー・シンガー、マレン・モリスとのデュエット曲「シーイング・ブラインド」も、どこか懐かしいカントリー・ポップに仕上がっている。
ピットブルの「ファイヤーボール」(2014年)にフィーチャリング・ゲストとして参加した、ジョン・ライアン手掛けるポップ・ソング「オン・ザ・ルース」や、ここ最近のUKロックを意識した「ミラーズ」など、流行を取り入れたタイトルもあるが、アルバムを通して聴いても違和感がない。つまり、どの曲も今っぽい仕上がりではないということだ。バックサウンドが控え目な分、ナイルのボーカルが映える「フリッカー」や「ファイアー・アウェイ」、グレッグ・カースティンがプロデュースした3rdシングル「トゥー・マッチ・トゥ・アスク」など、本作はメロウも充実している。アップもスロウも素晴らしい、デビュー作にして傑作の『フリッカー』は、1Dファン以外のリスナーも唸らせるだろう。
日本盤ボーナス・トラックには、「フリッカー」と「オン・ザ・ルース」のアコースティック・バージョンが収録される。
Text: 本家 一成
◎リリース情報
『フリッカー』
ナイル・ホーラン
2017/10/20 RELEASE
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