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2017/09/12 19:00

ボンベイ・バイシクル・クラブのジャックによる新プロジェクト=ミスター・ジュークス来日インタビュー「今作が様々な音楽をディグするきっかけになったら」

 本国UKで着実にキャリアを積み上げ、4thアルバム『ソー・ロング、シー・ユー・トゥモロー』で悲願の全英1位を獲得したことを機に、アメリカでの大ブレイクも目前というところで、活動休止を発表したボンベイ・バイシクル・クラブ。そんなバンドのフロントマンで、ソングライターのジャック・ステッドマンが、新たなるプロジェクト、ミスター・ジュークスを始動。ジャズ、ソウル、ワールド・ミュージックなど様々なジャンルの音楽に造詣が深い彼が、それらの音楽をモダンな解釈で再構築した意欲溢れるデビュー・アルバム『ゴッド・ファースト』を完成させた。参加ゲストも個性豊かで、デ・ラ・ソウル、レイラ・ハサウェイ、チャールズ・ブラッドリー、BJ・ザ・シカゴ・キッドなど、玄人好みのアーティストたちが参加している。今回、【SUMMER SONIC】に出演するために来日したジャックをキャッチ、ミスター・ジュークスとして史上2度目となるライブを行う前に話を訊いた。
 
 
◎ミスター・ジュークスとしてライブを行うのは今回が2度目だと思うのですが、現在の心境は?ナーヴァス?それとも楽しみ?
ノー、全然ナーヴァスじゃないよ。もし、こんなにいいバンドと一緒でなければ、ナーヴァスになっていたと思うけど(笑)。
 
◎地元ロンドンでお披露目ライブを行った際は、9人編成だったと思うのですが、今回はどうでしょう?
その時と同じメンバーから2名をマイナスした7人編成だよ。
 
◎なかなか大所帯ですね。
あぁ、こんなにビッグなバンドで日本に来れて嬉しいね。サックス、トランペット、シンガー2人、ドラム、キーボードがいて、僕はベースを弾くよ。
 
◎アルバムを作っている際に、ライブは思い描いてましたか?
いいや、観てもらったら分かると思うけど、ミスター・ジュークスのアルバムとライブはかなり違う。ライブは、参加しているメンバーたちとリハーサル・スペースで一緒に演奏しながら“コネクト”し、何が起きるかワクワクしながら形にしていった。
 
◎ということは、インプロヴィゼーションの要素もある?
うん、多少あるよ。参加してくれているのは、ジャズ・ミュージシャンばかりで、即興は彼らにとって自然なことだから。僕にとってもすごくエキサイティングなんだ。これまでのバンドで即興をすることなんて、全くなかった。僕にとって、紛れもなく新たな試みだね。
 
◎加えて、ジャックが歌う曲も少ないのも新鮮ですね。
そう、だからパーティー三昧できる(笑)。
 
◎(笑)。ヴォーカルを全面に持ってこない、というのは意図的なのもの?
イエス(笑)。こういうタイプの音楽に合った、僕よりうまく歌える人にヴォーカルをとってもらった方がいいからね。
 
◎ジャックの歌声は、かなり特徴的ですしね。
その通り。どちらかというとフォークとかバンド・サウンドの方が合っているような声だから、普段と異なるトーンをアルバムに加えることができる方がエキサイティングだと思ったんだ。
 
◎では、ミスター・ジュークスの誕生について簡単に教えてください。
正直な話、ボンベイ・バイシクル・クラブ(BBC)を結成する前からすでにこういう音楽の作り方はしていた。ジャズやファンクをベッドルームでサンプリングしていて…僕は元々ベース奏者だし。このプロジェクトは、それらに自分のすべての労力とエネルギーをつぎ込み、フル・タイムでやる絶好の機会なんだ。BBCのようなバンドにいるとそれが可能じゃないから。そして、そこからどんな道が開けていくか、楽しみに待っているんだ。
 
◎近年ジャンルのクロスオーヴァーや勢いのある若手が出てきたことによるジャズの新潮流が顕著ですが、それに影響された部分はありますか?
う~ん、その新潮流がなくても、このプロジェクトはやっていたと思う。単純に今やることが僕の人生において、好期だったということ。とはいえ、すごくいいタイミングだったんじゃないかな。最近ロンドンもジャズ・シーンが活性化してきていて、若い有能なプレーヤーが多くいる。
 
◎中でもおススメはいますか?
たくさんいるよ。たとえば、Ezra Collective(エズラ・コレクティヴ)はグレイトだし…名前がパッと浮かばないんだけど、一つのグループに所属するというよりは、流動的に様々なグループで演奏している人が多いね。すごく健康的なコミュニティで、LAやNYのようにちゃんとしたシーンになるつつある。
 
◎デビュー作『ゴッド・ファースト』の制作が、BBCのアルバム制作と決定的に違ったのは?
慣れ親しんだ場所を飛び出し、自分を挑戦したことかな。簡単ではないけれど、時にはそうすることに意義がある。BBCのメンバーは僕の長年の親友で、ずっと音楽を一緒に作ってきた。困った時には手助けしてくれ、何も問題はないと諭してくれる。でも今回は全くもって一人で、方向が定かではない中、ほとんど会ったことのない人々と曲を作った。曲作り自体、とてもデリケートでエモーショナルな行為だから、それを行うだけでも困難なのに。だから多くを学んだね。
 
◎たとえば、新作に参加したデ・ラ・ソウルなどは、生い立ちやバックグランドなど共通点が全くないですもんね。
そう、音楽以外はね。そんな彼らと音楽が作れたことは、すごく美しいことだと思うんだ。
 
◎他にもバラエティ豊かなゲストが多数参加していますが、彼らの選出はそのように行ったのですか?
曲を書きあげた後に聴いてみて、誰の声がハマるかを考えていったんだ。自分でもいまだに信じられないんだけど、思い描いていた人が全員参加してくれることになった。
 
◎個人的にチャールズ・ブラッドリーのファンなので、彼との「Grant Green」のレコーディングについて教えてもらえますか?かつてジェームス・ブラウンやオーティス・レディングがそうだったように、彼ほど生の“ソウル”を体現しているシンガーは、今希少ですよね。
うんうん。これまでチャールズのような人とは仕事をしたことがなかった。レコーディングは、彼が滞在していたNYで行ったんだけれど、実際に一緒にいたのは1時間あまりで、すごく短いセッションだった。チャールズは高齢な上、歌う時に使うパワーが半端ないから、すぐに疲れてしまうんだよね。彼のテイクを録音する時、何を歌うか指示するために一緒にレコーディング・ブースに入り、すぐ隣に立っていた。彼が僕の指示を聞いて、そのままマイクに向かって歌うという感じだったんだけれど、そんな近距離で彼が歌うのを聴くのはこれまでの人生で経験したことのないことだった。過去にライブで観たことがあるし、もちろんレコードも聴いたことがあったけれど、それとは全く違っていて、強烈だったね。
 
◎彼ほどの声量とエネルギーがあると、それをどのようにレコーディングで捉えるのかも腕の見せ所ですよね。
そうなんだ!たった一つの音符を歌っただけでも、とても豊潤で厚みがあって、まるでクワイアが歌っているようだよね。
 
◎教会のクワイアで歌っていた過去を持つBJ・ザ・シカゴ・キッドが参加した「Angels」やアルバム・タイトルなど宗教のレファレンスがいくつか登場します。これはジャック自身の宗教観と関係しているのですか?
僕個人というよりは、アルバムが影響を受けた音楽や作品自体のスピリチュアリティだね。すごく興味深いのが、BJ・ザ・シカゴ・キッドをはじめ、サム・クック、ダニー・ハサウェイなど、僕が頻繁に聴いていた様々な世代のソウル・アーティストたち全員、音楽に触れ、音楽について学ぶきっかけが教会だったんだよね。みんな日曜日に教会で歌って、地元の牧師から音楽について学んだ。そこが自分にとってすごく興味深かった。世代や生まれ育った環境は全然違うのに、教会という場所で繋がっているというのが。アルバムで宗教をレファレンスしたのは、これが理由なんだ。
 
◎なるほど。今作はサンプルやゲストなど数多くの要素から曲が組み立てられていますが、そんな中で心がけたことがあれば教えてください。
時間がかかる、複雑なプロセスではあるんだけど、曲はシンプルでなければいけないと思っている。どんな風にデコレーションしようと構わないけれど、それ以前に誰かと瞬時にコネクトできる、シンプルな曲でないと。僕はそれを常に心がけている。個人的には、やや難解な音楽を聴くのが好きなんだけど、曲を作ったり、パフォーマンスするときは、シンプルなものに保ちたい。
 
◎確かにこのアルバムは、BBCのファンがソウルやジャズへ入門するのに適した内容にもなっています。
そうそう、今作が様々な音楽をディグするきっかけになったら嬉しいね。
 
◎このアルバムを聴いて、そういった音楽を聴いてみたいと思ったリスナーにレコメンドする作品やアーティストは?
やはり、まずはサックス奏者のジョン・コルトレーンかな。彼はキャリアを通して、とても美しく、かつ手に取りやすい作品を作ってきたと思うんだ。たとえば、50年代に作られた『ジャイアント・ステップス』。その後、ものすごく奥深く、ハードで、スピリチュアルで、レイヤーのある作品になっていく。だから初期の作品からスタートして、そのまま彼のキャリアを追っていくのが一番いいんじゃないかな。
 
◎日本人のアーティストで、おススメ、またはお気に入りはいますか?
佐藤博は素晴らしいよ。80年代ぐらいに最も活躍していたんだけれど、彼のことは大好き。それからジャズ・ミュージシャンの渡辺貞夫。トロンボーン奏者の鈴木博も素晴らしいね。
 
◎ちなみに、今回レコード散策する時間はありましたか?
いや、まだ行く暇がなくて、来週行くのを楽しみにしてるんだ。特に渋谷のディスク・ユニオンが気に入ってて、日本に来るたびに、口座の中がからっぽになるほど、物凄い量のレコードを買ってしまうんだ(苦笑)。
 
◎今作は、ミスター・ジュークスの実質的デビュー・アルバムとなりますが、ジャックが考える最強のデビュー作は?
え~、ちょっと考える時間がほしいな。
 
◎自分の作品はなしでお願いします(笑)。
ハハハ。やっぱりジョニ・ミッチェルかな。さっき、ジョン・コルトレーンがキャリアを通じて進化していったという話をしたけれど、ジョニの作品はデビュー作から奥深さが感じられ、レイヤーと厚みがあって、あんな作品が誰かの1stアルバムだなんて信じられない。まさにパーフェクトだよね…実は10作目なんじゃないか、と思えるほどに。とても美しい作品だと思う。
 
◎では最後にジャックにとって最強の夏の1曲を教えてください。
カーティス・メイフィールドの「Move On Up」。最初の3秒からテンションが上がって、一日を迎える準備ができた気分になるから。
 
 
 
Live Photo: (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
 
◎リリース情報
『ゴッド・ファースト』
ミスター・ジュークス
2017/7/14 RELEASE
デジタル配信
 
◎プレゼント情報
抽選で1名様に取材時に撮影したミスター・ジュークスのサイン入りポラロイド写真をプレゼント
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2017年9月12日(火)~9月19日(火)12:00