2017/07/14
今月末に開催されるフジロックフェスティバルが待望の初来日となるアメリカのシンガーソングタイタージョシュ・ティルマンのプロジェクト。元フリート・フォクシーズのドラマーとしても知られる彼のたぐいまれなリリックセンスに、ライブパフォーマンスはハイパワーエナジーで見るもの誰もが彼の虜になってしまう。3枚目のアルバム「Pure Comedy」をひっさげ初の来日公演となるフジロックフェスティバルを前に、ロサンゼルスの自宅にいる彼にインタビューを敢行した。
<ファーザー・ジョン・ミスティ インタビュー(後編)>
――フォークミュージックというジャンルでは誰から一番影響を受けていますか?
インスピレーションを受けたシンガーソングライターは?
ジョシュ・ティルマン (以下 ジョシュ):僕の最大のインスピレーションはキリストの整然と没後みたいに二つの時期に分かれるんだ。20代の時はボニー・プリンス・ビリー、ダミアン・ジュラード、リチャード・バックナー、マグノリア・エレクトリック・カンパニーとか、ビル・キャラハンなんかのドラッグ・シティ(イリノイ州シカゴのレコードレーベル)とか、その辺りに影響を受けてた。自分もそういう音を作ろうとしてた。でもその後「自分は自分。彼らとは違う。自分がああいう音楽を作れることは絶対にない。僕はああいうことはできないんだ。」って悟ったことが一番のインスピレーションかな。それからはそういう音楽を作るのはやめて、自分が出来ることをやることにしたんだ。だから一番のインスピレーションは自分のヒーロー達を拒絶したってことだね・
――その代わりに自分自身の方向性を見つけたんですね。
ジョシュ:そういうことになるね。僕の曲の「アイム・ライティング・ア・ノベル」に ”海辺で溺れてるニール・ヤング~”って一節があるけど、まさにああいう感じ。音楽を作るときにはっとさせられたりインスピレーションを掻き立てられるのって、音楽とは直接関係ないことだったりするんだよね。他人の曲を聴いて「おぉ!僕もこういうのを作らなきゃ!」っていうのはほぼ無いからね。
――それではミュージシャンになろうと思ったきっかけは何ですか?
ジョシュ:いつミュージシャンになろうと思ったかは本当に思い出せないんだけど、詩を書いたりしていたからこうなったのは避けがたい運命だったと思う。昔からトラブルに巻き込まれずに言いたいことを言えるのは詩を書いてる時だけだったからね。それ以外はいつも口が災いして厄介事に巻き込まれたりしてたからさ。
――あなたはとても厳格な家庭で宗教音楽以外の音楽はほぼ皆無だった環境で育ったと聞きましたが?
ジョシュ:すごく制圧的な家庭環境だったよ。でもね、うちでは誰かがノートに何かを書いたらそのノートはその人の物になる、みたいな暗黙のルールがあったんだ。その所有権は完全に守られていて、誰も奪えなかった。僕が詩を書くようになったのはそれがきっかけだと思う。このノートに歌詞を書けば、これは僕の物。誰も僕から取り上げることは出来ないし、この詩は永遠に僕の物だ、って。
――あなたは他のアーティストに比べて、結構言いたいことを言う人に思います。それって正直だし良いことだと思うし、それが歌詞にも表れていますよね。ただの売れるレコードを作るってわけじゃなくて、伝えたいことがあるから作品を作っているような気がします。
ジョシュ:「何か言いたいこと」って言うのは結構同じことの繰り返しなんだよね。
まあそれは個人にもよるけど。このレコードはちょっと変わってるんだけど、時事的なことが大部分を占めてるね。
――そしてあなたのフォーカスも大規模になったり小さく集中したりと色々と変化していますよね。
ジョシュ:そうなんだよ。でもね、そういう過程で失われるものって客観的なものではないんだよ。だからこそ「リーヴィング・LA」みたいな曲が出来るんだと思う。曲の合間に良い感じのダブを入れたりとか、この世界観はこうやって作られてるんだって言ったりね。
例えば、ブログって実際に経験したことが書かれてるだろ?だから量産店とかのスイカ味のキャンディなんかの話題はすごく(キャパの)小さい人間の視点だよね。孤独とかそういうことをずっと長い間恐れてる人がそれを書いてるの。でも僕の曲はそうじゃないんだ。僕は科学者じゃないし、気象予報士でもなければ政治評論家でもない。僕は権威のある人間だから僕の言うことを信じろよ!って歌ってるわけでもないし、むしろそれとは真逆なところにいるんだ。
――もちろんこのアルバムは政治的なものじゃないことはわかっていますが、現在の政治や社会問題なんかがアルバムに影響したってことはありますか?感情的にという意味でも。
ジョシュ:幸か不幸かアルバムを100年位前の時代に送り込んでテストするってことは出来ないけど、今回はちょっと聖職者を意識して作ったんだ。アルバムが主に意図してるのは普遍性みたいな事。
もしこのアルバムが1000年前にリリースされていたとしても、きっと受け入れられてたと思うんだ。人間は人生で必ず何かしら酷い目に遭ったり、愛する人がいることが全てだったりとかね。
1000年前の人はテイラー・スウィフトが誰かとかニュースフィードが何かって言うのは知らないだろうけど、例えばシェークスピアを読んでいても何を参照されているか分からない時ってあるだろう?でも言いたい事や話のテーマは理解出来る。シェークスピアの本で書かれてるようなことが、今の時代でも起こったりするし。彼って近代に置ける反理想主義の第一人者じゃない?
――演劇といえば、ミュージカルをやるって言ってたのはどうなりました?もうすぐ完成予定って本当ですか?
ジョシュ:あー!それはない!その件は残念ながらぼつになったから。
――小説を書くのとでは少し訳が違いますか?
ジョシュ:実はもうほぼほぼ完成していて、あとは作品として世に出すだけってところまで来てたんだよ。プロダクションミーティングをしたり、セットを作ったり、衣装をデザインしたりとかさ。
長い行程だったんだけど、自分の中でアルバムがすごくダイレクトなものだっていうのがあってさ、、、なんていうんだろ?あとはもう好きなように精神的なものを拡散させるだけだったというか。例えるなら仕上げに百合の花に金箔を塗るだけで、もうすぐ完成!みたいなところではあったよね。
――もしアルバムと別のプロジェクトをする予定ならそれは面白そうですね
ジョシュ:うん、それも絶対に面白いと思うんだけど、何せ800,000ドル(約1億円)くらいかかるって言われたからさ。。。レッドブル社とかに「えーと、一億円くらい借りたいけど?」って話を持ちかけたこともあるんだよ。
――話をアルバムに戻しますが、今回のツアーはサポートメンバーも多いですよね?どうやってあれだけの人数のミュージシャンを集めたんですか?彼らはレコーディングしたメンバーと同じですか?
ジョシュ:ああ同じメンバーだよ。このアルバムにはリードギターみたいなのが存在してないからね。ほとんどは僕(のボーカル)とリズムセクションだけなんだ。あとはプロデューサー(ジョナサン・ウィルソン)がほぼ一人で演奏したんだ。
ツアーに同行してるのは同じメンバーで、あとは音楽監督がいて、ツアー先の土地でローカルの弦楽器のミュージシャンを雇ってるんだ。楽譜があるからそれを使ってサウンドチェックして、その後に本番ってわけ。
――それって結構すごいですね。バンドの中心メンバーは「フィアー・ファン」から一緒にやってる人たちですか?
ジョシュ:ううん、違う。その辺は常に進化して行ってるというか。僕が(ソロを)スタートさせてからずっと一緒にミュージシャンは2人いるけどね(ギターのクリス・ダーリーとキーボードのカイル・フリン)
――最後の質問です。「家っていうのは、素晴らしいことが何も出来ないような空間を作ることだ」と以前インタビューでおっしゃってましたが、あなたはひきこもりタイプですか?
ジョシュ:僕は結構な爆発型なんだよね。でも感情に波があるから、ものすごいひきこもりかと思えば、気が触れてるかと思うくらいに毎晩飲み歩いてたりすることもある。最近はそうだなぁ、ローレルキャニオン(ロサンゼルスのハリウッドヒルズ近郊のエリアで、ジョニ・ミッチェルの自宅などがあったり70年代のミュージシャンが多く住んでいた場所)に引っ越したばかりだから、スタジオに行く以外は一週間どこも行ってないね。
Interview : Alan Rice
Transcription : Lisa Y Sato
Live Photo : ERINA UEMURA
◎リリース情報
ファーザー・ジョン・ミスティ『ピュア・コメディ』
2017/04/26 RELEASE
OTCD-6098 2,300円+(tax out)
◎イベント情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '17】
日程: 2017年7月28日(金)・29日(土)・30日(日)
会場: 新潟県湯沢町苗場スキー場
※ファーザー・ジョン・ミスティは7月28日に出演
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