2017/07/05 17:00
ハルカトミユキの3rdアルバム『溜息の断面図』のリリースを記念して、6月28日より3日間連続で開催されたレコ発ツアーの最終日となる公演が、6月30日に渋谷Club QUATTROにて開催された。
tacica、peridots、きのこ帝国を迎えてそれぞれ2マン形式で行われたレコ発ツアー。最終日は旧知の仲であるきのこ帝国を迎えてライブが行われ、同世代の2組から発信される“悩み”や“怒り”への嘘偽りない言葉とエモーショナルな演奏は、誰しもが心のどこかで抱えている痛みを分かち合うようにすっと取り除くように優しく刺さったライブだった。
≪きのこ帝国≫
あーちゃん(Gt)、谷口滋昭(Ba/Vo)、西村コン(Dr)、そして佐藤千亜妃(Vo/Gt)がすっと位置につくと「FLOWER GIRL」でライブがスタート。MCをほぼ挟まずに「MOON WALK」、ベースラインが印象的な「LAST DANCE」と続く。この日初めて曲紹介をした「海と花束」では、それまでじっと演奏を見つめていた観客が体を揺らしながら音に身を預け、きのこ帝国が聴かせる“静”と“動”のメリハリに溺れていくような感覚がこの上ないほど心地よく響いた。熱量の高い感情的な演奏と、それを纏った佐藤の軸となる歌声がすべて耳を捉えるのだが、このバランスの良さも彼らが培ってきた信頼感やそれぞれの技量があってこそではないだろうか。
中盤には佐藤がMCでハルカトミユキのアルバム『溜息の断面図』について「すごい盤ですよね、ハルカちゃんの詞の世界が更新されているし、ミユキちゃんが書いている曲もツボだなって」と称え、「同世代としてもシンガーとしても尊敬しています」と語った。
後半は、佐藤のボーカルにも感情がこもった「夜が明けたら」や「愛のゆくえ」などを披露。エモーショナルな轟音が響き渡ると静謐ながらもボルテージはどんどん増していき、最後は「東京」でそれぞれの楽器をかき鳴らして観客の大歓声とともにライブの幕を閉じた。
≪ハルカトミユキ≫
そして、バンドメンバーとともにハルカトミユキが登場し、1曲目にもってきたのは『溜息の断面図』の1曲目でもある「わらべうた」だ。不穏な歌詞とは裏腹に、序盤から観客は拳を上げライブの熱気はぐんと上昇し、明るい雰囲気の「世界」では会場が一体となってコール&レスポンス。そしてイントロのドラムソロから切ないメロディーが展開される「Pain」へと続いていく。
「1曲だけ2人で演奏します」と言って披露されたのは「宝物」。ハルカが27歳という年齢で抱える生きづらい世の中への葛藤や“大人でも子どもでもない”気持ちの行き場をストレートに綴った歌詞が胸に刺さり、<夕暮れのため息>というフレーズがまさにアルバムとも繋がっていることに気づかされた。
MCではハルカが「人間関係を築くのが苦手で2人になった私たちですが、バンドにはやっぱり憧れもありますよね(笑)」とこれまでを振り返りつつ、「バンドではないけど言葉だけはパンクでいようと決めて。やっと今回“嘘のないアルバム”ができました!」とまっすぐ前を見つめながら語った。
そこからは、アルバム『溜息の断面図』より「終わりの始まり」「Stand Up,Baby」を披露し、ミユキの「皆さん一つになりましょう!」という合図で観客が拳を振り上げ会場が一体となった。さらに「振り出しに戻る」へと続き、ステージ上では感情を一気に爆発させるように髪を振り乱しながら演奏する2人につられ観客の熱気も最高潮に。アンコールでは、3日間続いたツアーの最終日をともにしたきのこ帝国について「同じ時代に、音楽シーンにいてくれて本当によかった」と戦友への言葉を贈り、「奇跡を祈ることはもうしない」でこの日のイベントを締めくくった。生きづらさや孤独を、そのまま体現するかのような彼女たちの歌は、私たちにそっと寄り添い、温かくもどこか寂しいこの世界で生きるためには、もう少し胸を張ってもいいんだと、そう思わせてくれた。
なお、ハルカトミユキは今後ROCK IN JAPAN FESTIVAL(8/12)への出演、そして9月には3年連続となる日比谷野外音楽堂でのワンマンライブも決定している。
photo:上山陽介
text:神人未稀
◎リリース情報
アルバム『溜息の断面図』
2017/06/28 RELEASE
<初回盤>(CD2枚組)
AICL-3354/3355 3,990円(tax in.)
<通常盤>
AICL-3356 2,800円(tax in.)
◎公演情報
【+5th Anniversary SPECIAL】
2017年9月2日(土)
日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:15 / START 18:00
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