2017/05/04
“ピアノの詩人”と謳われて、80年代に一大ブームを巻き起こしたジョージ・ウィンストン。ニュー・エイジ・ミュージックの名門レーベルであるウィンダム・ヒルを拠点にしたこともあり、ヒーリングや癒し系といった捉えられ方をすることが多いが、実は非常にオリジナリティ溢れるプレイを聴かせるピアニストである。
2012年の前作『ガルフ・コースト・ブルース・アンド・インプレッションズ2』は、音楽的影響を受けたニューオーリンズを題材にした作品だった。その後、彼は骨髄異形成症候群という病で入院生活を余儀なくされる。しかし、入院先のシティ・オブ・ホープに設置されたピアノを弾くことで、新たな楽曲が続々と生まれていった。そんな心のリハビリともいえる音楽を集めた作品集が『スプリング・カルーセル』という一枚にまとめられた。
ここには様々なスタイルの楽曲が集められている。ミニマル・ミュージックのような「カルーセル2」もあれば、プリペアド・ピアノを取り入れた「ミューテッド・ドリーム」、そして、オリエンタルな響きにハッとさせられる「ミズ・ミステリー1」など、いずれも彼のキャリアを総括するような内容といってもいいだろう。バラエティに富んでいるとはいえ、散漫にならないのが彼の強みだ。肩肘張った印象は一切ないのだが、いずれの楽曲も生命感に溢れており、生きることの尊さがにじみ出ているようにも感じられる。通算14枚のアルバムとなるが、間違いなく代表作となる一枚といえる。
なお、本作のアーティスト印税による収益は、全額シティ・オブ・ホープへの基金となるそうだ。そんなところも、ジョージ・ウィンストンが愛される理由のひとつなのだろう。ぜひまた、元気にピアノを弾く姿を日本でも見せてもらいたいと思う。
Text: 栗本 斉
◎リリース情報
『スプリング・カルーセル』
ジョージ・ウィンストン
2017/04/26 RELEASE
2,592円(tax incl.)
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