2017/04/17
新里英之(HY)と杉本雄治(WEAVER)の共演による弾き語りライブ【STAND ALONE Vol.4】が、2017年4月16日に東京・クラブeXにて開催された。
大きな拍手に迎えられてまず登場したのは杉本。円形ステージをぐるりと囲んだ観客を見渡して、「どうも、WEAVERです……あ、WEAVERの杉本雄治です」と、初々しい挨拶をすると、軽やかに手を鍵盤に滑らせる。最初の曲は、WEAVERのデビュー曲「白朝夢」。メロウなサウンドと甘いボーカルが響きわたると瞬時にして、会場が華やかとなった。「デビューして初めてひとりで立つステージ。頑張って、今弾きながら喋ってるけど、必死です」と笑顔を見せると、「みなさんも普段のライブと空気が違って緊張するかもしれないけど、リラックスして自由に楽しんでいってください」と語ってスタートしたのは、以前ミュージカル作品のために書き下ろしたという「ソングライターズ」。普段、WEAVERでは演奏することがないソロならではの選曲で、洒脱でイマジネイティブな曲だ。
「ずっと、ひとりでライブをする実感がわかなくて。気楽にやれていいんちゃう?と思ってたんですけど、さっきリハーサルした途端に急に実感して、心細くなった」と杉本。今日はメンバーも観に来てくれているということで、WEAVERの看板も背負ってやりたいと語りつつ、スタイリッシュなWEAVERとはちがった普段の感じも知ってもらえればと、お茶目なMCでも観客を沸かせる。回転式のステージで、全方位に人懐こい笑顔を見せたりと、とても和やかなムードだ。
しかしひとたび鍵盤を叩き、歌いはじめると、その美しくリリカルなピアノの旋律とエモーショナルな歌で、観客をうっとりとさせる。「レイス」「こっちを向いてよ」、また自分を奮い立たせる歌だという「負けんな」。繊細かつ饒舌なピアノのプレイと、ポップなメロディメイカーぶり、そして美声の持ち主だというミュージシャンとしての高い力量を改めて見せつけるステージだ。また、せっかくのソロということで新たな挑戦として、WEAVERでは披露することがない、ギターでの弾き語りでも聴かせた。ループマシン(録音、再生のできるエフェクター)を駆使し、実験性たっぷりにギターの音を重ねてドラマティックにプレイした「Hard to say I love you~言い出せなくて~」には、今後の活動を期待させる心地よい余韻が満ちていた。「最高の初ソロライブになった」と晴れやかな笑顔を見せると、最後は再びピアノの弾き語りで「Shine」で締めくくった。明るくあたたかなムードで、続く新里へとバトンとつないでいった。
笑顔で、大きく両手を振って登場した新里は、ギターを手にとって挨拶をすると、心地よくて音楽的な沖縄のイントネーションで騙りはじめる。「僕の曲はいつも、なにかを乗り越えた時に生まれるものがほとんど。あなたが見つめる空には何が映りますか。喜び、悲しみ……。僕の空にはいつも、悲しみが映ります。でもその空は、あなただったら大丈夫、乗り越えられるよといつも言ってくれます」。1曲目に選んだ「僕空」に込めた思いを言葉にすると、静かにギターをつまびきながら、歌いはじめた。途中、マイクを離れて、大きく体を動かしながら地声での歌を会場に響かせると、フロアの手拍子も大きくなる。
事前のインタビューで、ソロのステージでは曲に込めた思い、曲の背景をより丁寧に伝えることができると語っていた、新里。このステージでも、1曲、1曲、その景色や心の機微が鮮やかに浮かび上がるエピソードを話し、曲のメッセージやパーソナルな思いを手渡しで届けるものとなった。沖縄で生まれ、実家の前は海だったことから、小さい頃からカニなどをとっては友だちに振舞っていたとか、パンツをはかない自然児だったこと、自然に囲まれて育ったからこそ、沖縄や生き物たちからパワーをもらって描かれた曲が多いこと。ユニークな語り口で伝えられることで、馴染みある曲の新たな一面を知る感覚だ。日常の一コマを豊かなイマジネーションで切り取って歌にした「かなぶんの羽」も、より一層力強い曲となって会場を熱くした。
また「少年」では、ここまで音楽を続けてこられたのは、ファンの応援とともに、今は亡き父の存在が大きかったことも語った。音楽をやることを反対していたという父。いちばん認めてほしい存在で、だからこそいつか父を見返したいとがむしゃらにやってこれたのだと新里。今思えば、厳しい父の言葉は、自分を強くする愛の言葉だとわかるが、当時は反抗心の塊だったという。そのアグレッシヴな衝動感を詰め込んだ「少年」は、弾き語りバージョンでより冴える。続く「僕がキミを」では一転して、「僕をあなたの心のなかに連れて行ってほしい。その心のなかで優しく歌えたら」と、ジェントルに語りかけるように歌い、感客をエモーショナルに包み込んだ。
ラストの「オーレ」では、会場全員でサビを大合唱。フロアにも照明が灯って、手拍子と歌声とが、徐々に大きく広がった。シミひとつない明るさと、自然と笑みが浮かぶ多幸感と一体感は、これぞ新里英之のソロという朗らかで、スケールの大きなものだった。アンコールでは、杉本におんぶされて登場した新里。ガッチリと対バンするのは初の両者だが、並んで語り合う様子は旧知の仲のよう(衣装もペアルックのようだった)。意外な組み合わせだが、杉本にとって(WEAVER3人にとって)HYは学生時代から聴いてきた尊敬するバンド。昨年はWEAVERの対バンツアーに誘っており、そこでは都合がつかなかったが、そのときにHY全員から熱い手紙をもらい感激した話など、今日に至ったいきさつも語られた。お互いの“いつか”が実を結んだ、いい関係性がふたりの佇まいからも感じられる。
アンコールは新里がアコースティックギター、杉本がピアノで、WEAVERの「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」、HYの「AM11:00」をプレイ。そして、ふたり共通のルーツでかつ意表をつく曲ということで、THE YELLOW MONKEY「バラ色の日々」のカバーを披露した。最後は、観客も立ち上がって一斉にジャンプ。スペシャルな一夜を元気に締めくくった。
文:吉羽さおり
写真:高田梓
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