2017/04/10
昨年、宇多田ヒカルが8年ぶりにリリースしたアルバム『Fantome』で抜擢されて話題を呼んだHIP HOPアーティスト KOHHが、3月より各地で開催してきた全国ツアー【LIVE ’17 Powered by BM Inc.】の東京 EXシアター六本木公演を4月2日に開催。同月15日の追加公演でツアーファイナルを迎える。
<“刺青だらけのラッパー”を支持するおしゃれな若者たち>
その衝撃は、近年の音楽シーンでも随一だったかもしれない。『Billboard JAPAN Hot Albums』年間総合1位をはじめ各賞を総なめにした2016年の最重要作品に、当時のトップシーンにはまだ知れ渡っていない新人が参加した。それも、自ら“刺青だらけのラッパー”と歌う通り、首筋や額まで全身にタトゥーが彫り込まれた強面の男。日本では明らかに異質かもしれないが、その存在の名はすでに世界にまで轟き始めていた時期だった。
初日の名古屋から始まり、大阪、東京、福岡と続いてきた今回のツアー【LIVE ’17 Powered by BM Inc.】は、各会場とも超満員の動員を記録。会場には若い男女が多く、おしゃれに着飾ったポップな印象の人たちも少なくない。KOHH自身、毎日ファッション大賞の“新人賞・資生堂奨励賞”受賞歴を持つ落合宏理氏のファッションブランド FACETASMにモデルとして参加した経歴があるように、ファッション・アイコンとしても支持を集めている存在なのだ。
<1MC&1DJによる圧巻サウンド、豪華客演も然ることながらの本格派な才気>
ただ、そうした前情報は、ライブがスタートした瞬間からほぼほぼ意味を為さないものになる。ステージ上には、DJブースが一台あるのみ。開演を告げる不穏なSEと共に、足元にスモークが漂い始めると、突如として壇上にテスラのスポーツカーが登場する。会場が驚嘆の歓声に包まれる中、豪奢なコートを羽織ったKOHHが車内から現れると、そのボルテージは一気に最高潮に達した。
また、登場を共に盛り上げたYTG、5lackといった人気アーティストから、LOOTAやYANO、海外よりSkype中継での参加となったDutch Montanaら盟友まで。豪華な客演陣もひとつの見どころだが、やはり基本は1MC&1DJ。ごくシンプルな構成から繰り出されるサウンドは圧巻の一言だ。
ショッキングな音色の応酬で圧倒する「Living Legend」のような曲から、深みへ誘うレイドバックしたグルーヴで包み込む「Mitsuoka」、終盤を盛り上げた人気曲のひとつでよりポップな音ざわりが心地よい「飛行機」などなど。YouTubeオフィシャルアカウントにアップされているこれらの楽曲のミュージックビデオには英語の絶賛コメントも散見できるが、それは国境を越えたリスナーを魅了する本格派のサウンドであることの証明だ。各曲の再生数を見れば、その人気をより理解いただけるだろう。
<ディープな音像から洒脱なユーモアまで網羅する「適当」な音楽スタイル>
さらに、聴き取れる日本語で歌われるリリックにも大きな特徴があり、人気曲のひとつである「貧乏なんて気にしない」というタイトルをはじめ、「Hello Kitty」「iPhone5」などニヤリとさせられる着眼点や、がっつり盛り上げた終盤の“最後の曲”にファンやヘイターへの素直な思いを綴った「Hate Me」をセレクトする心意気。そうしてKOHHがステージを降りた後、実弟 LIL KOHHがひとりで登場し「浮気」を熱唱する洒脱なユーモアまで。
建前や調和に固執することなく、かといって肩肘張った威勢も感じさせない。現在26歳のKOHHの人と為りが如実に象られた言葉の数々が、今の若者から篤い支持を集めるのはある種、必然とすら。オフィシャルサイトには“独特な歌詞表現、思ったことを そのまま 歌詞にしているかのような「適当」な音楽スタイル”と紹介されているが、たとえばこの日のライブ中、彼は客席にダイブし、前方に圧縮した観衆の上を泳ぐように行く一幕があった。かつてならロックに傾倒していた層をも巻き込む熱い人気を今現在に博しているのが、KOHHという存在なのだ。
前述の【LIVE ’17 Powered by BM Inc.】追加公演は4月15日、東京 渋谷WWW Xにて開催される。すでにチケットは残りわずかとアナウンスされているが、混迷を極める音楽シーンで今、最も旬としても過言ではないKOHHのステージは、掛け値なく必見と断言できるのでぜひ注目してもらいたい。
◎公演情報
【LIVE ’17 Powered by BM Inc. 東京追加公演】
4月15日(土) 東京 渋谷WWW X
撮影:杉岡祐樹
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