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2017/04/06

米国南部の音楽にエキゾチックな創造力を注ぐ。ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ『ザ・ナヴィゲーター』(Album Review)

 プエルトリコ系アメリカ人シンガーのアリンダ・リー・セガーラ率いるバンド=ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフが、この3月にATOレコーズ(アラバマ・シェイクス、ベンジャミン・ブッカーらが所属)から3作目(通算6作目)となるアルバム『ザ・ナヴィゲーター』をリリースした。4月5日には、日本盤もリリースされている。エキゾチックなフォークの旋律やリズム、そしてブルースやカントリー・ロックの熱量が込められた、胸を揺さぶる一枚だ。

 ニューヨークのパンク少女だったアリンダは、17歳のときに家を離れ、バスキングをしながら米国各地を渡り歩いていたという。ニューオーリンズへと辿り着いてハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフを結成したのだが、南部のカントリー/ブルースを“発見した”世代のアーティストとしては、まさにアラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワードや、ベンジャミン・ブッカーらと共振する部分があるかも知れない。

 手作り感たっぷりなゴスペル・クワイア「Entrance」から始まる新作『ザ・ナヴィゲーター』は、アリンダが率直な歌詞でその孤独な生き様を歌い上げてゆく。カントリー・ロックの「Living in the City」は軽妙さの中にも都市生活の困難さが滲み、強がる心持ちをグルーヴに宿したかのような「Hungry Ghost」も、その裏側ある悲しみを伝えてしまう雄弁な曲調があればこそ、という内容だ。

 とりわけ白眉なのは、アルバムのタイトル・チューンとなっている「The Navigator」だろう。ピアソラのタンゴを咀嚼し消化してしまったかのようなストリングス入りのフォーク・ロックであり、途方に暮れる思いを巧みなソングライティングで描き出している。南部のカントリー/ブルースにエキゾチックな多様性を持ち込むアイデアは以前からハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフにあったものだが、新境地と呼ぶべき素晴らしい一曲だ。

 穏やかなカントリー曲として始まる「Nothing’s Gonna Change That Girl」はトロピカルなリズムとハーモニーが加わって驚くべき展開を見せるし、サザン・ソウルのバラード「Fourteen Floor」の終盤には、熱いアフロ・ビートが挿入されている。孤独と悲しみに塗り込められてはいるが、アリンダは自身の想像力に道案内を託すように、力強い音楽を紡いでいるのだ。アルバム終盤の「Pa’lante」で、彼女はそのタイトル・フレーズを高らかに歌い上げる。この言葉は、プエルトリコ系の人々が使う言葉で“前に進め”という意味なのだそうだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
アルバム『ザ・ナヴィゲーター』
2017/04/05 RELEASE
HSE-4037 2,100円(tax out.)
※初回仕様限定:ボーナストラック1曲ダウンロードコード付ステッカー封入(フォーマット:mp3)。
歌詞対訳(板谷純)、ライナーノーツ付

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