2017/03/31
2017年3月28日に東京・Shibuya WWWで開催された【HOT STUFF presents Ruby Tuesday 15】。注目の次世代アーティストを集め、その名の通り火曜日に行われるこのイベントだが、今回はSaucy Dog、polly、MOSHIMO、カネコアヤノの4組が出演。ギターロック&ポップ、シューゲイザー、歌謡といった様々なジャンルのひしめく一夜となった。
●【Saucy Dog】たった三文字にさえ説得力を持たせられる存在感
マルーン5「losing my mind」のSEで姿を現したのは、関西圏を中心に活動する3人組ロックバンドのSaucy Dog。ルーティンだろうか、演奏前にはせとゆいか(dr,cho)の周りに石原慎也(vo,g)と秋澤和貴(b)が集まり気合を入れ、まずは石原の優しくも力強いヴォーカルから始まる「マザーロード」を演奏。その左耳では時折ピアスがきらめいていたが、この小さな光は彼ら自身を象徴しているかのようだった。
叙情的なリリックの際立つメロディライン、その流れの軸となるバンド・サウンドが耳障りのよいSaucy Dog。現メンバーでは2016年から活動している彼ら、今年1月にはTHE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERRENらが出演したイベント【MASHROOM 2017】でオープニング・アクトも務めているが、この日は持ち時間が40分と少し長め。せとゆいかは「いつもよりちょっとだけ長くみんなと遊べます」と嬉しそうに語っていた。
そして石原の「僕が言われて今までで一番、悔しかったこと」という前置きから、大人になった男女の別れを歌う「煙」が続き、「絶対また会おうっていう願いを込めて」という言葉からは、その純粋な想いを汲み取ることができる「いつか」を披露。常に切なさの目立つバンドだが、地面にうずくまるよりは大地を駆け抜けたくなるその爽快感、開放的なコード展開と石原の声に起因するものだろう。楽曲の最後、一瞬だけ音が止んだところで伸びやかに叫ばれた「いつか」。このたった三文字に説得力を持たせられるだけの存在感は確かなものである。
◎セットリスト
01. マザーロード
02. ロケット
03. 煙
04. Wake
05. いつか
06. ナイトクロージング
07. グッバイ
◎ミュージックビデオ
「いつか」http://youtu.be/agQ23NdBROY
●【カネコアヤノ】聴衆を怯ませるほどの不思議な引力
音楽イベントでは少なからず暇を持て余すことになるステージ転換だが、この日はラウンジ・エリアでカネコアヤノが弾き語りライブを実施。演奏はスピーカーを通してメインフロアにも流された。活動を始めた2012年にはSCANDALのツアーで東京公演のオープニング・アクトを担当し、その後も都内を中心に精力的なライブ活動を行っている彼女、ストレートの黒髪に丈の長いチェックのワンピースという格好は素朴だが、一筋縄ではいかないクセがある。
好きなアーティストには、はっぴいえんど、たま、町田町蔵(町田康)率いるINUなど、70~80年代音楽を挙げているように、昭和歌謡を感じさせるノスタルジックでアヴァンギャルドな楽曲の数々。そのハスキーな声も芯が通っており、大きな目は力強い。どこともわからない空中に視線をやりながらアコースティックギターをかき鳴らす様は、観ている側が少し怯んでしまうほど。不思議な引力だと思う。
ステージ転換に合わせるため、カネコアヤノのアクトも今回は2部構成。些かたどたどしく「1回目はこれで最後でーす」と新曲を演奏したあとは一度撤退し、その後の2部はまず昨年末にリリースされた1stEPの収録曲「わかりやすい愛 丈夫なからだ」でスタート。それぞれ20分ずつの演奏という変わった形態となったが、その幕間を感じさせない一貫した世界観を展開し、集まった人々に強い印象を与えた。
◎セットリスト
<1st SET>
01. 恋しい日々
02. 週明け
03. さよーならあなた
04. 朝になって夢から
05. 新曲
<2nd SET>
01. わかりやすい愛 丈夫なからだ
02. カウボーイ
03. 新曲
04. 新曲
05. グレープフルーツ
◎ミュージックビデオ
「さよーならあなた」http://youtu.be/643oTvTh4XU
●【polly】放射状に広がるフィードバックとエモーションの融合
越雲龍馬(vo,g,syn) の「pollyです。よろしく」という挨拶から間髪入れず、「沈めてくれたら」の美しい轟音をかき鳴らしたこの4人組ロックバンド。2012年に宇都宮で結成、上京した2015年以降はミニアルバムを2枚リリースし、ART-SCHOOLとTHE NOVEMBERSによる共同企画イベントにも出演。最近はシューゲイザーの傾向が強くなり、この日も刀川翼(b)の前にはKORGのシンセサイザーが置かれていた。
ソニック・ユース『Washing Machine』の洗濯機Tシャツでもその趣味を伺わせる越雲は、フロアの急な段差について「親切ですね」と触れつつも、「目線を合わせたくないタイプだからちょっとヤだ。あんまり見ないでください」とはにかむ。自らが抱えてきた孤独感や無力感を紡ぐこの青年、その他のメンバーも口数は少なく、持ち時間のほとんどが演奏に充てられた。高岩栄紀(dr)のリズムに支えられ放射状に広がるフィードバック、不安定さも残る儚げなヴォーカルの浮遊感には酔いを覚える。
そんな中、最新ミニアルバムの収録曲「ふつうのせいかつ」や初期の楽曲「シシィ」などで冴え渡るのは、飯村悠介(g)のSGによるギターフレーズだ。サウンドそのもので個性を発揮するのが難しいシューゲイザーだが、持ち前のエモーションを合わせることで一線を画しているように思う。最後までオーディエンスを音の洪水で包んだ彼ら、去ったあとの静寂はむしろ耳に痛い。
◎セットリスト
01. 沈めてくれたら
02. Night Diving
03. 新曲
04. 哀余る
05. ふつうのせいかつ
06. 新曲
07. シシィ
08. 新曲
◎ミュージックビデオ
「沈めてくれたら」http://youtu.be/qTMm3VCNJcA
●【MOSHIMO】定石を踏みながらも少しひねくれている快活
ラストは2015年に福岡で結成された4人組ポップバンドのMOSHIMO。岩淵紗貴(vo,g)は「最後まで楽しんでいきましょう!」という一声で会場の雰囲気を明るく一転させ、そのあどけない声と跳ねるメロディラインがキャッチーな「音のない世界のうさぎ」を歌唱。この楽曲を発表したときはCHEESE CAKEとして活動していたが、2015年に現在のバンド名となり、翌年ミニアルバムとしてリリースした「命短し恋せよ乙女」のミュージックビデオはYouTubeで110万回再生を突破している。
この「命短し恋せよ乙女」も3曲目に披露し、間奏では最前列にいた女性客へ向けて「命短し恋せよミサキ!」のコール&レスポンス。こういった定石を踏むパフォーマンスはもちろん、ストラトキャスターとエレアコを持ち替えつつ、楽曲によってはハンドマイクを握り前方へ繰り出す岩淵、ジャズマスターを操る一瀬貴之(g,cho)をはじめ、宮原颯(b,cho)、本多響平(dr)の奏でるサウンドは非常に快活だ。
アンコール前には、「俺ら普通っぽいじゃん。今日出てるみんなすっげえカッコイイじゃん」と口を開いた一瀬。男性客から上がった「カッコイイよ!」に対しては「女の子に言われたかった」と冗談めかし、「でも僕らはここで勝負したいと思いますよ」と自分の胸に手を当てる。岩淵も「ハートで勝負バンドですから」と応答。楽曲もテーマとしては王道の恋愛が多いが、それでも「猫かぶる」のようなナンバーで少しひねくれた部分も見せつけ、笑顔のままステージ袖へ引き返していった。
◎セットリスト
01. 音のない世界のうさぎ
02. ジレンマ
03. 命短し恋せよ乙女
04. ポテトサラダ
05. 大嫌いなラブソング
06. 触らぬキミに祟りなし
EN. 猫かぶる
◎ミュージックビデオ
「命短し恋せよ乙女」http://youtu.be/4NLUHglR12o
なお、次回の【Ruby Tuesday】は4月25日に新宿LOFTで、その次は5月2日にShibuya WWWで開催される。
TEXT:佐藤悠香
PHOTO:佐藤早苗(ライトサム)
<Saucy Dog>
イベント出演【SAMURAI戦国時代vol.12】
2017年04月13日(木)東京・新宿SAMURAI pre.
w/ザ・モアイズユー、calmine、Rollo and Leaps、知る権利
<カネコアヤノ>
【カネコアヤノ ツアー2017“ひかれあい”】
2017年05月06日(祝・金)静岡・浜松FORCE ※バンドセット
2017年05月13日(土)香川・モモの広場 ※弾き語り
2017年05月14日(日)島根・松江BAR E.A.D ※弾き語り
2017年06月04日(日)岡山・奉還町4丁目ラウンジカド ※弾き語りワンマン
2017年06月10日(土)仙台・紅茶とお酒の店teato ※弾き語りワンマン
2017年06月11日(日)新潟・新潟EDITORS CAFE ※弾き語り
2017年06月17日(土)沖縄・那覇G-shelter ※バンドセット
2017年06月18日(日)沖縄・那覇 BABY BABY HAMBURGER & BOOKS ※弾き語り
2017年06月24日(土)北海道・苫小牧ELLCUBE ※弾き語り
2017年06月25日(日)北海道・札幌キノカフェ ※弾き語り
【東名阪ツアー カネコアヤノ ツアー2017“ひかれあい”】
2017年07月01日(土)愛知・名古屋K.Dハポン ※バンドセット
2017年07月07日(金)大阪・心斎橋Live House Pangea ※バンドセット
2017年07月09日(日)東京・代官山 晴れたら空に豆まいて ※バンドセット
<polly>
自主企画イベント【polly presents「愴」】
2017年04月14日(金)東京・TSUTAYA O-nest
w/ircle
2017年05月3日(水)東京・shindaita FEVER
w/ART-SCHOOL
<MOSHIMO>
【MOSHIMOワンマンツアー2017夏「今宵もキミにこころあり」】
2017年6月25日(日)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
2017年7月09日(日)東京・Shibuya WWW
2017年7月16日(日)福岡DRUM Be-1
2017年7月30日(日)愛知・名古屋ell.SIZE
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