2017/03/29
日本音楽界を代表する弦楽器製作家のひとり、平光泰典氏の還暦を記念したライブ【Great Guitarists meets Great Guitar アコースティックギター・スペシャルライブ】が3月23日に東京 下北沢の風知空知にて開催された。
同イベントの出演陣は計5名。全員が平光氏の“ひらみつギター”を愛用するギタリストだ。1998年の独立以来、クラシックギター製作により培った製作技術を生かしたアコースティックギターの音色にこだわり、弾きやすい、弾きたくなるギター作りを、平光氏は追求してきた。一本一本丁寧に作り上げていった銘品から奏でられる、極上の調べをたん能できる1日とあって、会場には耳の肥えた音楽ファンが数多く訪れ、中には海外からの来場者も見受けられた。
ステージは、若手陣のアクトより始まった。杏里やJUJUのサポートも経験した過去を持つKai Petiteと、ニュージーランド生まれネパール育ちのバイリンガルにしてスパニッシュやフラメンコと呼ばれるプレイスタイルで話題の若き才能 Tama Tsuboiだ。ふたりは共に、アコースティック・ベースのバンド SHAMANZのメンバーということもあり、序盤から息の合ったプレイで観衆を魅了していく。Kai Petiteが操る5~6弦にベース弦を張った通称“変態ギター”の幅広い音色と、Tama Tsuboiによる情熱的なカッティング・プレイやハスキーな歌声。後に登場する大先輩に引けを取らないアクトを見せた。
続く丸山ももたろうは、ひとり残ったKai Petiteとのコラボからスタート。80年代から現在にいたるまで松山千春のサポートとして活躍している丸山が牧歌的な優しい音色を奏で始めると、会場は穏やかな空気に包まれていく。が、次のゲストとして石井完治をステージに招き入れてからは、ふたりのマシンガントークが炸裂。両者はギターデュオ“ももかん”でも共にしている仲だが、当意即妙な掛け合いは何度も会場の爆笑を呼び、それまでの雰囲気を一変させる賑やかな一時に。しかし、ひとたび演奏が始まれば、鮮やかなコントラストで魅了するさすがの腕前で観衆のため息を誘った。
そうして丸山のバトンを受けた石井完治は、3日前に届いたという新たなひらみつギター “RICH”を手に、平光氏への感謝を込めて同名タイトルを付けた新曲から披露する。ゆったりとした音色に観衆が舌鼓を打っていると、続いてステージにTama Tsuboiを招へい。“カンジとタマで、キャン(カン)タマ”というナイスなユニット名でしっかり笑いを取ったのもつかの間、石井のブラックミュージックをルーツにしたファンキーなカッティングと、Tama Tsuboiの情熱的なプレイが絡み合う絶品の共演で場内を圧倒し、大喝采の中、ステージを後にした。
イベントの大トリに登場したのが、日本におけるフィンガー・スタイル・ギターの草分け 中川イサト。“この方がいなかったら、我々ギター制作も無かった”とは平光氏の談だが、その音色は当然ながら格別だ。平光氏への祝いの言葉に始まり、丸山と石井に対して“しゃべりすぎや”と釘を差して笑いを誘うと、沈黙の中、チューニングを整え、ゆっくりと弦を爪弾いていく。日本の故郷を思わせる懐かしい響きから伝わる、一抹の哀愁とあたたかい優しさ。脳裏に浮かぶ情景は、壮大な自然であり、都会の喧騒からほんの離れた裏路地でもある。派手に魅せるのではなく、各々に沁み渡る極上の調べで、唸らされるほどの存在感を示していた。
その後は丸山を呼び込んでのコラボで会場を華やかに盛り上げると、最後は出演者5人が集結。ザ・ビートルズ「カム・トゥゲザー」をカバー。そしてサプライズとして演者観衆全員で「ハッピーバースデートゥーユー」を大合唱し、改めて平光氏の還暦を祝す大団円を迎えたのだった。
撮影:杉岡祐樹
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