2017/03/23
5月に初来日公演を開催するシンガー・ソングライター、ジェイムス・アーサーが、全英ツアーをスタートし、現地時間3月21日に開催されたロンドン公演のライブ・レポートが到着した。
アルバム『バック・フロム・ジ・エッジ』を引っ提げて、3月6日からスタートしたジェイムス・アーサーのワールド・ツアー。その中盤にあたる3月20日、21日に2年振りにロンドンで2夜連続公演を行った。
動員数2千人のシェファーズ・ブッシュ・エンパイアでのショーは両日共にソールド・アウト。満員の会場内で、“崖っぷちから戻ってきた男”がステージへ現れるのを今か今かと待つ。
ジェイムス・アーサーは2作品共にアルバム一曲目に力強い曲をチョイスしているが、この夜の記念すべき一曲目も、新作の冒頭を飾るアルバム・タイトル・ナンバー「バック・フロム・ジ・エッジ」だった。ステージ裏から素晴らしい歌声でイントロを披露した後、突如としてジェイムスがステージに登場すると、3階建ての会場は割れんばかりの歓声が起こった。
「ロンドンの人達はクールすぎるって聞くけど、今夜の君達は違うね!」とスタート早々チャーミングな笑顔を見せると、そのまま「プリズナー」を熱唱。ファースト・アルバムからの曲も挟みながら、ヒップホップMCのショッティ・ホローとコラボした「サーモン」では、ラップ・パートもジェイムス本人が完璧に再現するなど、彼の歌唱力と表現力に圧倒される。そして、彼のデビュー・シングルとなった『Xファクター』優勝曲「インポッシブル」が演奏されると、会場は大合唱の渦に包まれた。「インポッシブル」は2016年現在、英『Xファクター』歴代優勝者の中で最も売れたシングルでもあるが、それはデビュー後に再び挫折を経験し表舞台から一時姿を消したジェイムスを、実は沢山のファンが待って、そして支えていたことの証明でもあり、ジェイムスとファンがその絆を確認し合うことにもなったこの曲での大合唱は、ライブ前半のハイライトシーンだった。
ファースト・アルバムから、ジェイムスがお気に入りだという「ゲット・ダウン」、そして「リカバリー」が演奏された後、会場は一転して暗くなり、一筋のスポットライトがジェイムスへ向けられる。静まり返った会場で「次は、僕にとってかけがえないのない存在である、妹についての曲」と静かに歌い始めたのは、新作からのセカンド・シングル「セーフ・インサイド」。過去の過ちをバネに大きな成長を遂げて妹への愛情を歌うジェイムスを、まるで温かく迎え入れるかのように会場は大きな拍手と歓声に包まれた。
「まさかに二度もナンバーワンをとれるとは思いもしなかったよ。二度目にナンバーワンに輝いた半年前、あまりにも嬉しくて“永遠にナンバーワンでいてくれ”と願ってみたりもしたけれど、沢山の素晴らしい曲がどんどん発表されるから、もちろんそんな夢は叶わない。クリーン・バンデットのこの曲もその一つでさ、悔しいけどいい曲なんだよね。」とギターを持ちながら披露したのは、クリーン・バンドデッドの「ロッカバイ」。
その後、そのまま燃える尽きてしまうのではないかと思ってしまうほど力強く「フェニックス」を歌い上げたジェイムスが一旦ステージを離れると、すかさず会場は「モア!モア!」と割れんばかりのコールで溢れかえる。ほどなくしてバック・メンバー、そしてジェイムスが再びステージに姿を現わし、次のシングルと噂されている「キャン・アイ・ビー・ヒム」を演奏すると、最後はやはり待ちに待った「セイ・ユー・ウォント・レット・ゴー ~最愛の君へ」だ。アコースティック・ギターを抱えながら、サビの部分でジェイムスが「一緒に歌ってくれるかい?」とマイクを会場へ向けると、この夜一番の大合唱が起こった。パフォーマンス中、何度も「サンキュー」と感謝の言葉を伝えていたジェイムスだったが、「セイ・ユー・ウォント~」では会場のあまりの一体感ぶりに「この感激は鳥肌ものだよ。心から感謝しています!」と思わず感極まるようなシーンもあり、感動的な余韻を残してこの日のライブは終了したのだった。
ジェイムス・アーサーは、メディア出演時に愛想をふりまいたり、気のきいた事を言うわけではないし、ルックスも手伝って、もしかしたら一見とっつきにくい印象をもっている人もいるかもしれない。しかし、波乱に満ちた人生を経て辿り着いた現在の彼が見せるステージでの謙虚さや歌声と歌詞から伝わってくる優しさが、卓越したライヴパフォーマンスと相まって、イギリスはもちろん全世界の人々を魅了しているのだと、強く確信した一夜だった。
TEXT:Mizuho Sato
PHOTO:Chiaki Nozu
◎公演情報
【James Arthur Japan tour 2017】
2017年
5月22日(月) 東京・赤坂BLITZ
5月23日(火) 愛知・名古屋クラブクアトロ
5月24日(水) 大阪・BIGCAT
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