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2017/03/10

インドネシア産、極上ポップ・ミュージック / 『旅する風』モンド・ガスカロ(Album Review)

 インドネシアは近年通好みのポップ・アーティストが急増していることで知られている。ベッドルーム・ミュージックと称される宅録ポップ職人のアディティア・ソフィアン、山下達郎やtofubeatsをカヴァーしたikkubaruなどが日本でもマニア受けしているが、その中でも本命といえるのがモンド・ガスカロだ。インドネシア人日本人のハーフらしく、サウンド・クリエイターとしてもシンガー・ソングライターとしても非常にクオリティが高い。

 特に見事なのが、なんといってもメロディのセンスだろう。テンション・コードを駆使した楽曲群は、ソウル、AOR、ソフトロック、などといったキーワードで語りたくなる通好みの雰囲気をまとっている。今の日本のシティポップ・ブームにも通じるものを感じる人もいるだろう。加えて、アレンジも見事で、バンド・サウンドとストリングス、コーラスなどが絶妙に融合し、過去の様々なポップ・チューンの影響が見てとれる。

 トロピカルな雰囲気と分厚いコーラスが見事にマッチした「ネイキッド」、うっかりシュガー・ベイブかと思ってしまったロックンソウル・ナンバー「ディーコンズ・サマー」、気だるいスウィート・ソウルを展開する「良心」、ハモンドやファズ・ギターが少しサイケな雰囲気を醸し出す「忘却」などなど、どこを切り取ってもマニア度が非常に高い。おそらく相当研究したであろうきめ細かなアレンジは、とにかくよくできている。七変化するコーラスワークが美しい「木洩れ陽」なんていう楽曲も収められており、どれもこれも夢心地にさせてくれるのだ。

 極上のポップ・ソングを聴きたくなったら、インドネシアのシーンをチェックする。そんなことが常識になる日が近いかもしれないことを、モンド・ガスカロは教えてくれる。


Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『旅する風』
モンド・ガスカロ
2017/02/22 RELEASE
2,376円(plus tax)

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