2017/02/21 12:00
2017年2月16日、iriがデビューアルバム『Groove it』のリリース・パーティを東京・渋谷WWWにて開催。この「Groove(グルーヴ)」は俗語で「楽しむ」という意味だが、彼女はゲストアクトのCreepy Nutsと共に、この夜集まった約400人を見事に“グルーヴ”させてみせた。
●【Creepy Nuts】アウェイな状況を物ともしない挑戦
先に登場したCreepy Nutsは、テレビ朝日系『フリースタイルダンジョン』でモンスターとして活躍するラッパー R-指定と、『DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2016』のシングル部門で2位を獲得した実力派DJ 松永による1MC1DCのHIPHOPユニット。この日はゲストアクトということで約45分ほどのステージとなったが、先日リリースしたばかりの最新作『助演男優賞』収録曲をはじめとする代表曲の数々から、先日出演したフジテレビ系『めざましテレビ』でも披露して話題をさらった“聖徳太子”スタイルによる即興ラップ、ターンテーブルを巧みに操り時にトリッキーなムーブで歓声を集めたDJプレイなどなど。自ら“挑戦”と語っていたアウェイな状況を物ともしない、圧巻のアクトで熱狂を生み出していた。
●【iri】内向的な人間が示す強かな決意
ステージ転換を挟み会場が暗転してすぐ、人のいないステージを染め上げたのはピンク色の光だった。この妖艶な演出は、夜の街で座り込み空を仰ぐiriの姿が印象的な『Groove it』のアートワークに準ずるもの。それから段階的にブルーとレッドの光が重ねられていき、最終的に真っ赤となったところでドラマー&DJを携えたiriが姿を現した。
2012年、iriは雑誌『NILON JAPAN』と「Sony Music」が開催したオーディション【JAM】でグランプリを獲得。HIPHOP、ジャズ、ボサノバなどの流れを汲んだ楽曲とウィット感がありつつもほどよく掠れるハスキーヴォイス、詩的ながらもメッセージ性の強いリリックが特徴で、STUTS、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、mabanuaなどが手がける現代的なトラックも魅力のひとつである。
1曲目、跳ねるようなビートに<今日は忘れて/まだ踊ろ>という歌詞が呼応する「ナイトグルーヴ」を歌い終えると、その語呂のよさもあってか「イリ!」「イリ!」と彼女の名を呼ぶ声があちこちから上がり、当の本人ははにかみながら応答する。昨年夏にはアメリカのシンガーソングライター、ドノヴァン・フランケンレイターのジャパンツアーでオープニングアクトに抜擢され、【SUMMER SONIC 2016】にも出演するなど話題を呼んだ彼女だが、約1時間に及ぶ長さのライブを行うのはこれが初めて。それでも「今日はたくさん来てくれてめっちゃ嬉しいです。ありがとうございます」という挨拶の通り、この日のチケットは完売した。ふと浮かぶ人懐こい笑顔やフランクな口調とは裏腹に、立ち振る舞いや話し方は確かにたどたどしい。そもそも人と話すことが苦手だというが、彼女の心優しい人間性と柔らかな翳りが表れているようなその仕草には、好感を覚えた人も少なくないだろう。
最も、この内向性がiriを歌わせているとも言える。昔は自身の体験から心理カウンセラーを目指していたものの、自身の殻を破りきることができなかったという彼女。そのくすぶる心をアリシア・キーズと七尾旅人に大きく揺さぶられたことで、ボイストレーニングに通い出し、自身の母が持っていたアコースティック・ギターを弾き始めることになった。音楽でなら自分の言葉を伝えることができ、それにより人の心を救うこともできるのではないか――そんな思案を確信へと変えるかのように、二本の脚でステージに立って体を揺らし、長いストレート・ヘアをなびかせながら言葉を紡いでいく。
ラップ調のパートとメロディアスなサビが心地よく絡み合う「半疑じゃない」で歌うのは、<私は私で意義がある/言葉にならない意義がある>というプライドであり、ゲストにSTUTSを招き披露した「Wandering」で投げかけるのは、<何だって今は投稿/してりゃ繋れてくpeople>という皮肉。あどけなさの残るヴィジュアルからは想像できない鋭いリリックこそがiriの真骨頂である。かと思えば、映画『テラスハウス クロージング・ドア』の劇中歌であり、彼女が作詞とヴォーカルで参加している関口シンゴの楽曲「繋いだ未来 feat. iri」などではガット・ギターで繊細なフレーズを爪弾いて演奏技術を見せつけ、色鮮やかなライティングの中で風のように踊りもする。そうして実際に“言葉にならない意義”を放っているようでもあった。
ライブも終盤の10曲目には、3月22日にリリースされる1stシングル曲であり、NikeWoman「わたしに驚け」キャンペーンソングに起用されている「Watashi」を披露。このタイトルだけでも志の高さは窺えるが、楽曲へ込めた想いについてiriは「誰も縛られる権利なんてないし、そんなの引きちぎって誰も見たことのない景色を見ようよ」とコメントしている。本編のラストを飾ったアルバムのリード曲「rhythm」にも<私は私のrhythmで>とあるように、おそらく彼女は彼女で、これから音楽シーンを駆け上がっていくのだろう。
テキスト:佐藤悠香&杉岡祐樹
写真:Atsuko Tanaka
【情報】
◎【iri 1st ALBUM“Groove it”Release Party】セットリスト
2017年2月16日(木)東京・渋谷WWW
01. ナイトグルーヴ
02. breaking dawn
03. 半疑じゃない
04. Wandering
05. 繋いだ未来 feat. iri
06. フェイバリット女子
07. Fancy City
08. 無理相反
09. 会いたいわ
10. Watashi
11. blue hour
12. rhythm
EN. brother
◎リリース情報
1stシングル『Watashi』
2017/03/22 RELEASE
<初回限定盤>VICL-37258 / 1200円(tax out.)
<通常盤>VICL-37259 / 1200円(tax out.)
01. Watashi 作詞:iri 作曲:iri・ケンモチヒデフミ 編曲:ケンモチヒデフミ
02. blue hour 作詞:iri 作曲:iri・ケンモチヒデフミ 編曲:ケンモチヒデフミ
03. Never end 作詞・作曲:iri 編曲:Pistachio Studio
04. your answer 作詞・作曲:iri 編曲:yahyel ※初回限定盤のみのボーナストラック
◎イベント情報
【NIKEWOMEN TOKYO】
2017年2月25日(土)東京・両国国技館
詳細:http://swoo.sh/2kaF0X9
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