2017/02/16
重いファンクのリズムに導かれて、ステージの上に大勢のメンバーが揃う。そのリズムを突き破るかのように明るいギターのカッティングによってショウが始まった。
3人のヴォーカルが躍動的なハモリで洗練された歌を繰り出してくる。キレキレのホーン・セクション、跳ねるリズム隊。ハイ・テンションでどこまでも生命力に溢れたサウンド。彼らはまるで「永遠の生命」を授けられた使者のように見えてくる――。
昨年、星になったモーリス・ホワイトが描いた高い精神性を備えた歌詞を乗せ、スケール感豊かなダンス・ミュージックをポップに展開して、70年代半ばから肌の色を超えて人気になったアース・ウインド&ファイア(EW&F)。彼らの名前を耳にしただけで数々のヒット曲が頭をよぎる。
フロントに立つモーリスやフィリップ・ベイリーといった歌い手たちを演奏面で支えた、まさに“屋台骨”のメンバー、その筆頭がサウスポーのギタリストのアル・マッケイだ。小気味よいギター・カッティングに導かれる「セプテンバー」など、コンポーザーとしても名を馳せているアル。13名で編成された彼の“オールスターズ”バンドが奏でるサウンドは、まさにEW&Fの音楽が今もまったく色褪せていないばかりか、新たな輝きを放っていることの表れと言ってもいいだろう。日本に強い親近感を抱いている彼を中心としたメンバーによるステージ。当然ながらファンキーでハッピーな感覚に溢れた音作りは、理屈抜きで聴き手の気分を高揚させてくれる。職人的なクオリティとエンターテインメントの娯楽性が高い次元で融合したライブ・ステージ。まさに“観るに値する”パフォーマンスの連続だ。
2曲目でいきなり、ビートルズの「ガット・ゲット・イントゥ・マイ・ライフ」が始まる。オリジナルとはまったく異なる魅力を宿したアレンジが心地好い。続いてチル・アウト感覚のナンバーを挟んでアルが紹介されると、メロウなピアノ・ソロから「アフター・ラヴ・イズ・ゴーン」へ。ダイナミズムとロマンティシズムが交錯する成熟したショウに夢中になりながら、回るミラーボールの光の中で、観客はドリーミーな気分に浸っている。
どこまでもポジティヴで、生命力と躍動感に満ちたメロディとリズム。市井の人々の「人生」の光と影をサウンド化したような演奏は、心に深く食い込んできて、爽やかな感動を呼び起こすと同時に、圧倒的なパワーで身体を激しく揺さぶってくる。これぞ音楽のエクスタシー。観客はEW&F時代のヒット曲に打ちのめされ、新しいナンバーに心を沸き立たせる。これほどまでに身体も心も鷲掴みにされるファンキー・ミュージックが、他のどこにあるのだろう? 僕はステージに釘付けになりながら、甘い敗北感のような感覚を味わっていた。
黒人音楽の素晴らしさが濃縮されたような、プレシャスなサウンドとヴォイス。「リーズンズ」では、ファルセット・ヴォイスが狂おしいほどのエモーションを伴って発せられ、会場を艶っぽい空気に染め上げていく。コール&レスポンスで作り上げられていくハーモニー。その一体感がオーディエンスを最高潮に盛り上げ、割れんばかりの喝采が沸き起こる。みんな堪らずに立ち上がり、ダンスのリズムに飲まれた身を委ねている。
後半は「宇宙のファンタジー」や「ジュピター」を筆頭に、ヒット曲が畳み掛けられていく。その完璧なパフォーマンスには、モーリスの精神性が生き続けていることを肌で感じさせてくれた。
正統なるEW&Fの継承者。
そして最後はアルにとって名刺代わりの1曲でもある「セプテンバー」、アンコールには「ブギー・ワンダーランド」や「レッツ・グルーヴ」、そして新曲も――。
ほとんどMCもなく、果てしなくグルーヴが続いた80分。
ハッピーでファンキーな彼らのステージは東京で今日(16日)と週末の18日、19日、そして大阪で21日、22日に目撃できるチャンスがある。寒さに凍えがちな心と身体を温め、気分を高めてくれるアル・マッケイ・オールスターズ。絶対にチェック・イット・アウト!
◎公演情報
【アル・マッケイ・オールスターズ plays music of アース・ウィンド&ファイアー】
2017年2月15日(水)~16日(木)& 18日(土)~19日(日)
ビルボードライブ東京
公演詳細:https://goo.gl/1Ra0Rt
2017年2月21日(火)~22日(水)
ビルボードライブ大阪
公演詳細:https://goo.gl/MhYg0w
Photo:Yuma Totsuka
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。時折、春の気配が感じられるものの、まだまだ底冷えする日々の2月。でも、ワインは新しいヴィンテージがすでに市場に。最近のヒットは南イタリアのプーリア州で造られたネグロアマーロ種100%の赤ワイン。黒いベリーを中心とした果実味と穏やかな酸、その絶妙なバランスのストラクチャーを持ちながら、お値段も手ごろ。家族経営の「ロッカ・ディ・モリ」がリリースしたシリーズは、ワインラヴァーなら、ぜひとも試してみて。
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