2012/05/07
心に染み渡る唯一無二の歌声と言葉、音楽性を持つ熊木杏里。5月6日 渋谷公会堂にて【熊木杏里 LIVE 2012 10th anniversary Year Concert 光の通り道 ~one night road~】を開催した。
2002年『窓絵』でのメジャーデビューから10周年を記念して行われた同公演。歴史の証人とも言える人々が各地から集まった会場で、最新アルバム『光の通り道』同様、彼女は「戻りたい場所に 会いたい人に もう会えなくても 繋がっていたいから 私だけが行ける 光の通り道を探しているんだ」と、武部聡志の奏でるピアノと共に静かに歌い始める。そして、間髪入れずに色彩豊かなバンドサウンドが鳴り響き、再びここから自分らしく生きる為の『シグナル』を灯していく。
近年、喉の不調を明らかにしていた熊木杏里だが、この日はどこまでも美しく伸びていく声でもって、序盤からファンを魅了。プライベートルームをイメージした空間で自らストーリーテラーになるブロックでは、例えば「私は時折、窓から外を見ては、私の生きる場所、それがどこなのか。生きる意味、それが何なのかを問い掛けるようになった。便りがないのは元気な証拠、母の声が。やりたいことをやりなさい、父の言葉が聞こえていた」と自らの物語とも、ここに集まった誰かの物語とも受け取れる“語り”を入れてから『私をたどる物語』を歌う等、聴き手が1曲1曲の世界に深く入り込めるアプローチに挑んだ。
その物語は『心の友~WiLSON~』『一期一会』『春の風』『やっぱり』『君の名前』『今日になるから』まで続くのだが、心地良い緊張感の中で放たれる声と言葉は、早くも観客の涙を誘う。特に後半のヒリヒリとした深いエモーションは、誰もを彼女の心の機微に強く集中させた。こうして新たな試みも成功させてみせた彼女だが、ライブ後半ではピアノの弾き語りで『こと』『長い話』といった自身のヒストリーにおいて象徴的な楽曲を続けて披露し、優しい声でもって激しく聴き手の胸を鷲づかむという、真骨頂を遺憾なく発揮する。
その後は一流ミュージシャンたちが生み出すグルーヴの中で、力強いアッパーチューンを連発。熊木杏里も観客も一丸になって体を揺らし、この瞬間を楽しんでいく。そして「私の道もみんなの道もまだまだ終わらないから。私は歌をうたって、みんなも毎日生きていって、そうやって繋がっていけたらいいなって思っています。その為にはね、自分が心のままにいることが大事なんじゃないかなと思います。大切なことはいつも自分の中にあると思います」と、彼女が本編最後に届けたのは『心のまま』。心のまま生きていく、彼女の生き様によって生み出されたメッセージ、音楽だった。
鳴り止まない歓声と拍手。ステージに戻った彼女は「アンコールが来たときに何をやろうかと考えたんですが、この曲をやらなきゃいけないなと思いました。これを作ったときの自分を思い出しますね」と、この10年間のはじまりとなった『窓絵』をひとり弾き語る。「心の天気に晴れはない」と感じていた10年前の熊木杏里と、今を心のままに生きる熊木杏里の共演とも言えるこのシーンは、10周年ライブならではのハイライトと言えた。
そして、熊木杏里の音楽を世に広めたきっかけの曲『新しい私になって』で大団円という、これまた10周年らしい展開だったのだが、なんとライブはまさかのダブルアンコールへ。武部聡志と2人で現れた彼女は、最後の最後に「信じることや ありのままでいる 大事だと思う全て あなたに繋いでゆこう」と、すべてを包み込むように『お祝い』をこの日最も柔らかい声で届けた。
こうして10周年記念公演の幕を閉じた熊木杏里だが、彼女が音楽を届けたい相手はまだまだ数知れず。これからも心のまま、そして“今最も力を込められる曲”を届けてくれるであろう彼女に注目してほしい。
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像