2016/12/16
2016年12月14日に発売されたザ・ニューヨーカー誌にパティ・スミスが寄稿し、【ノーベル賞】授賞式でボブ・ディランの「はげしい雨が降る/A Hard Rain’s A-Gonna Fall」を披露した際に歌詞が飛んでしまったのは、場の重大さから緊張に圧倒されてしまったからであって、歌詞を忘れたからではなかったと説明した。
2016年12月10日にストックホルムのコンサート・ホールのステージに立ったスミスは、曲の途中で急に歌を中断した。「ごめんなさい。お詫びします。とても緊張していて」と観客に言い、オーケストラは演奏を再開した。
率直で詩的なエッセイの中で彼女は、10代の頃から愛してきたこの曲を受賞式までの何か月もの間絶えず練習を重ねたので、歌詞は「もう自分の一部になっていました」と綴り、「自分の一部になっていた言葉を忘れた訳ではありません。単にそれを引き出すことができなくなってしまったのです」と打ち明けた。
パティ・スミスは9月の段階で既に【ノーベル文学賞】授賞式の記念ステージを依頼されていた。受賞者がまだ決定していなかった当初は自分の曲を披露しようと考えていたが、ディランの受賞が発表された時、彼の曲の中から昔からの一番のお気に入りを選んだのだ。
授賞式の朝、「16歳になったばかりの私に初めてディランのアルバムを買ってくれた母親のことを思いました」と彼女は書いている。そして、「その時、私はアルチュール・ランボーの時代には生きていなかったけれど、ボブ・ディランの時代には存在しているのだと思い当たりました。そして夫のことを思い、この曲を一緒に演奏したことを思い出しました。彼の手がコードを押さえる姿が目に浮かびました」と回想している。
エッセイの中で彼女は、授賞式の出席者たちは自分を温かく受け止め、「私たち自身の苦闘のメタファーのようでした」と言ってくれたと綴っている。そしてあの経験を通し、「自分の義務の本質を受け入れることができました」と言う。
「私たちはどうして仕事に全力を注ぐのでしょうか?どうしてパフォーマンスするのでしょうか?それは何より人々を楽しませ、変化させる為です。全ては彼らの為。歌は何も要求しませんでした。歌のクリエイターも何も要求しませんでした。だったら私が何かを要求するわけがないでしょう」と書いている。
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