アリシア・キーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・レジェンド、ファレル・ウィリアムス、スティング、トーリ・エイモスの音楽界を代表する6人のシンガー/ソングライターによる豪華対談が、ハリウッド・リポーター誌によって行われた。
ファン、アーティストとしての自由からお気に入りの映画サウンドトラックまで多岐に及んだこの対談の一部を前編と後編にわけてビルボード・ジャパンがお届けする。なお、この対談の全編は、現地時間2016年11月26日に米サンダンスTVにて放映される。
◎つい最近アリシアは、ノーメイクを貫いたことで、大きな話題となりましたよね。
アリシア :女性として成長する上で、私が探求し、表現していたパーソナルなことよ。最も重要なのは、女性に対してばかばかしいほど高い、非現実的な美の理想があるということ。とてもへヴィー…重くのしかかってくるもので、ハードよ。女性でも混乱してしまうほど洗脳されてしまっている。内なる美とは、外見的な美とは、というのが何なのか。その2つのバランスというのは?でも、一番大切なのは、自尊と自分にとって何が大切なのかを理解すること。それは、メイクとは全く関係ない―しようが、しまいが。女性、人間として、自分が良い気分になれることをすればいい。自分を表現して、お互いを批判しすぎないこと。その人が何を選んだとしても、それは美しいから。
ジャスティン :これって、僕が映画『トロールズ』に参加しようと思った理由でもある。僕にはもうすぐ2歳になる息子がいる。親友には娘が2人いるから、“ゴッドドーター”も2人いることになる。多分映画にコミットするのを恐れていたのは、「話の内容よりも、くだらない部分の方が多いんじゃないか」って思ってたから。でも、ストーリーを読んでみて「ちょっと待って、女性のメイン・キャラクターは、おなかが出てて、クレイジーな髪形をしてる…」って思って―その2人の“ゴッドドーター”、そして女性が幼いころから自分の体形や外見に引け目を感じるのってどんな気持ちなんだろう、って考えた。「そう、このキャラクターはトロールなんだよね!」って。それを若い女の子たちが見ることができるのであれば、「それって、全然くだらなくない。むしろ大切なことだ。」と思った。映画館に足を運ぶクールな理由だよね―「私はバービーじゃなくて、プリンセス・ポピーになりたい。」って。
◎ファンからの言葉で一番嬉しかったのは?
ファレル :さっきスティングが言っていたようなことを言われた時かな。曲のおかげで、高校生活を乗り越えられたとか。
ジョン :結婚生活を救ってくれた。「Ordinary People」についてよく言われるんだ。あの曲によって結婚生活が救われたって。曲を聴いて、恋愛関係で苦しむということの意味、いいこともあれば悪いこともあるけど、一緒に取り組み、乗り越えること。そんなことが可能なのか、って驚いたよ。曲がそんなにも意味を成すものとは。でも、人によってはそれだけの重みがある。それがソングライターの持つパワーなんだ。素晴らしき才能だと思うよ。
トーリ :ライブに来る人々とコラボレーションもするわよね。時には、彼らが気づいていないこともあるけど。曲について話してくれることで、その人の“ストーリー”を語ってくれている。そこへ“ミューズ”が舞い降りてきて、新しい曲のきっかけとなる。でも、彼らは一緒にそのプロセスを行っていることをわかっていない。そこがコラボで、彼らとの“情事”と言ったところね。
◎クロスオーヴァー・アーティストであることの意味は?スターになるために必須だと感じますか?
ジョン :その表現嫌いだよ(笑)。
ファレル :だよね、だって何へクロスオーヴァーしてるの?、って感じじゃん。
ジャスティン :僕らはそんな風に捉えていないだ。
ジョン :人は人種や人種差別を意識しないようにするべきだ、なんてことを僕は信じるような人間ではない。だって、人種差別は現実であって、人々が毎日目の当りにしていることだから。人種間でも扱いに差があって、アメリカという国や他の国をどのように体験しているかにも違いがある。そういった差を最小化したいとは思わない。アートや音楽の力というのは、そういった隔てを超越できることにある。世界中、色々な国でプレイしてきた―中国、ヨーロッパ、南アフリカ。僕にとってポップ・ラジオで頻繁に流れた初めて曲が「All of Me」だった。それが、クロスオーヴァーの音楽的な意味だと思う。僕のファンは、これまでずっと多様で、音楽自体もユニヴァーサルなんだ。
ファレル :100%そうだね。(こういうリストのタイトルをつける人は)極端に具体的なカテゴリーに押し込めたがるけど、“ブルーアイド・チャート”や“アフロ・チャート”がないだけいいよね。それとか“背の高いチャート”や“ゲイ・チャート”。そんなのなくて当然だ。音楽は音楽であって、繊細な説明方法があるけど、僕はブラックで、それを誇りに思っていて、自分の文化を愛している。でも、僕やその文化を箱に入れることはしないでほしい。僕らには色々なことが可能だって証明してきたはずだから。
◎商業的な成功を収めたことで、アーティストとしてより自由があると感じますか?それともその反対でしょうか?
ジョン :両方向だと思う。ある程度成功すると、周りの期待が変化してきて、中には次がヒットしないとがっかりする人も出てくる。でも、スタジオではいつも自由だと感じる。部屋に足を踏み入れて「どうやったら自分が作ることが可能な最大限の美しいものが作れるんだろう?自分が何かを感じることができて、誇りを持って歌える曲を作るには?」って考えるもの。レコード会社が期待しているものはわかっているけど、それにマインドを害されてはダメなんだ。自分が納得できることをしないと。そうすれば、曲を売る方法も見えてくる。そうやって考え抜くんだ。その曲が愛せるもので、スタジオに入った時に自由が感じられれば、ちゃんとした作品ができると思う。
ジャスティン :まずは、自分がその曲を“買わないと”、でしょ?なんだっけ、「お金で幸せは変えないけど、それを追求する代償となってくれる?(笑)」素晴らしく、コミカルな見解だよね。でも、最終的には自由は買えるものではない。そこまで自分で辿りつかないと。
◎一番好きな映画サウンドトラックは?
ジョン :いいかどうかは別として、『ラブ・ジョーンズ』のサントラ。特定の年齢だったから、その時はすごく意味があるものだった。大学に行ってた頃か、もうすぐ卒業する頃。自分の音楽のアイデンティティーについて考えていた時期で、あのサントラが語りかけてきた。こんなヴァイヴで今生きたいと感じさせてくれて、そのヴァイブは僕にピッタリなものだった。
ファレル :もちろん『パープル・レイン』。
ジャスティン :ジョン・ウィリアムスの『E.T.』のスコア。サウンドトラックではないかもしれないけど、観たときすごく幼かった。
トーリ :80年代にLAで道を見失っていた時に、『アマデウス』を11回観に行った。止められなかった、わかるわよね?その時に、11歳の頃音楽院から追い出されたことは自分にとって幸運なことだったと悟った。でも、父親にとっては大ショックだった。コンサート・ピアニストになれなかったから、彼にしてみると夢が終わってしまったと感じたのね。自分に死が圧し掛かってきたようだった。何かが死にゆくようだったけど、“ミューズ”たちは「元気を出しなさい、オチビさん」と語りかけてきた。オープンであり、耳を澄まし続けることね。
スティング :僕は『ハード・デイズ・ナイト』。まず、彼らはイギリス人で、それにビートルズだし(笑)。僕のように北部の工業都市出身で、デビューしたばかりのバンドによる心底からの興奮に完全に心奪われた。そして「彼らにできるんだったら、僕にもできるんじゃないか。」って思ったんだ。
アリシア :『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』。驚くべき人生を素晴らしく捉えている。それもいつまでも記憶に残るような手法で。もちろん音楽もその一部。その頃、ああい言う音楽をちょうど聴き始めた頃で、少し昔の映画だけど、私のモータウンへの愛も深めてくれた。
◎音楽業界で長く活動を続けていく秘訣は?
ジャスティン :好奇心。
ファレル :同感。
スティング :僕もだ。
ジョン :愛。
アリシア :恐れ知らずでいること。
トーリ :ユーモア。
ジャスティン :イエス、その通り!
アリシア :いいわね、いい答え。
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