2016/11/28 17:00
今年で15回目を迎えたテキサス州オースティンにて開催されている音楽フェスACL (オースティンシティリミッツフェスティバル)が、9月30日から10月2日、10月7日から9日の計6日間開催された。市内にある350エーカー規模の公園ジルカーパークが会場となっており、2013年から2週連続開催で出演するアーティストはジャンルを問わず、大小7つのステージと子供も楽しめるキッズエリアもあり、海外からも多くのオーディエンスを集めている。
今年は、ヘッドライナーにRadiohead, Kendrick Lamar, Mumford & Sonを迎え、計157組のアーティストが出演し、2週間で45万人を動員した巨大フェスの模様を数々の写真とともにレポートする。
- Weekend 2-DAY 2 October 8th (Sat) –
City and Colour / シティ・アンド・カラー
ポストハードコアバンドのAlexisonfireのメンバーとしても活動していたことでも知られているカナディアンシンガーソングライターのダラス・グリーンのソロ名義Ciry and Colour。
バンドにはThe Greenhorns(ザ・グリーンホーンズ)やThe Raconteurs (ザ・ラカンターズ)、The Dead Weather (ザ・デッド・ウェザー)のジャック・ローレンスがベーシストとして彼をサポートしているのも一つの見所である。彼のステージは心痛・熱望と欲情などの感情を露呈し、生と死についての物語を創り出す。若いアーティストには出せないアーティストとしても人としても円熟した大人のステージだった。
Anderson .Paak & The Free Nationals / アンダーソン・パーク& ザ・フリー・ナショナルズ
ヒップホップとR&Bのフュージョニストとは彼のことである。ドクター・ドレの『Compton』に参加したことで一躍有名に。セカンドアルバム『Malibu』は各音楽メディアでも高評価を得た彼が土曜のディナータイム枠を与えられ多くのパーティー好きの若者が彼のパーティーに参加するために集まった。
「俺はいつオースティンに戻れるか分からないから、これが最後だと思って盛り上がってくれ」と叫び、観客と共にジャンピング。Gファンクでグルーブ感あふれるベースにパーカッションのパウンディングで「Come Down」、ギターとピアノの科学的融合の「Carry Me」など。
驚くべき才能を持ったスーパースターがまたも出現したと確信した。
Catfish and the Bottlemen / キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン
ここ数年、新世代ブリティッシュロックバンドのアメリカでの躍進がすごい。一昔前はアメリカのマーケットに進出しようとUS tourを試みるも主要都市以外の会場は埋まらず、今ひとつ結果を出せなかったバンドが少なくなかった。しかしThe 1975, CHVRCHES, Years & Years,Templesなどはマーケティングが戦略を見直し映画やTVドラマの挿入歌にしたり、SNSなどで宣伝を精力的に行うなどして若い世代に火が付き、ライブに同伴する未成年の保護者をも魅了し多くの人がライブに足を運ぶようになってきて、どこの都市でも会場を埋め尽くすほどの人気となっている。
Catfish and the Bottlemenも同じで、2014年にACLの一番小さなステージに出演した彼らだったが、2年の時を経て大きなステージの出演を任され戻ってきた。そこには多くのファンが彼らの登場を待っていて、1曲目の「Homesick」から大合唱。フロントマンのヴァンは「Rango”の出だしでは観客に1フレーズを任せベースのベンジーと背中合わせでプレイする。その光景に若い女の子のファンが悲鳴に近い歓声をあげる。ステージに置かれたたくさんの大きいアンプからはインディバンドらしからぬ爆音で、後方の観客の興奮も煽る。そして記録的な新旧のヒット曲「Soundcheck」と「Kathleen」でのパフォーマンスはアメリカから賞賛されるバンドに値すると再確認した。
Jack Garratt / ジャック・ガラット
イギリスBBCが2016年活躍が期待される新人アーティストの1位に選ばれたジャック。
ベッドタイムソウルとクラブビートがミックスした曲を、たった一人でドラム&キーボードにギターをプレイする様子はマルチタスクのような魔法にも見えた。
JR JR / ジュニア・ジュニア
デトロイト出身のインディポップバンド
デール・アンハート・Jr Jrとして知られる彼がJR JRとして2011年以来ぶりにACLに戻ってきた。昼下がりの太陽の光の中で口笛のイントロで始まる「Gone」ダニエルとジョシュアが手拍子をし観客にも求める。シンセサイザーにバーストするドラムのリズムに合わせステージライトがくるくる回る。ダニエルもトレードヘアのポニーテールを振り回しシンセサイザーを弾く。彼らは何をしたら観客が楽しむかを十分に知っている。彼らは最も魅力的なパーティーを開くことができるバンドであることを確信した。
Cage the Elephant / ケイジ・エレファント
ACL史上最高のロックステージ。フロントマンであるマット・シュルツが兄のブラッドの「Cry Baby」のギターリフに合わせランニングジャンプして登場。誰もがこれから1時間息つく暇もないほど興奮するロックショウの幕開けだ。サンローランのブーツを履いたマットがステージを飛び降りカメラクルーへ駆け寄りレンズを掴んだかと思うと次の瞬間には観客へダイブ。ブラッドも負けじと観客側の柵まで行き観客のクラウドサーフを背にギターをかき鳴らす。アーティストと観客双方がアドレナリン全開になる。この光景がショウの間幾度となく繰り返されるのだ。フロア後方のお座りゾーンにいる彼らまでもが立ち上がって拳を突き上げ雄たけびを上げる。彼らと観客の関係はカウボーイ=観客と暴れ馬=バンドというロデオのようだ。一瞬でも目を閉じていたくない、全てを全部見届けたいと誰もが思う。彼らのショウを初めて観た人ならその鮮烈なインパクトを忘れることができず何度でも思い出しドラッグのように中毒になってしまうだろう。
Conor Oberst / コナー・オバースト
2週目だけに出演のConor Oberst。「Time Forgot」でスタート。バンドメンバーにはConor Oberst and The Mystic Vally Bandのベーシストでジェニー・ルイスのツアーにも参加していたマーシー・テイラーが。Bright Eyesからコナーのソロ名義でもいたネイト・ウォルコットの姿がなかったのが一つだけ残念だったが、バイオリニストの女性とコナーの「Four Winds」でのセッションは見応え高いものであった。
新曲を披露するためにピアノに座ったコナーが言った「ピアノは僕にとってラップトップのようなもの。でも(DJより)もっと連打しないといけないんだけどね」。それはここ数年エレクトリックミュージックムーブメントに対しての彼なりのウィットに富んだ皮肉にもとれた。
そしてBright Eyesの「Train Under Water」でのアコースティックギターはいつもより悲しげに聴こえたのだった。
Kygo / カイゴ
ここ数年、ACLの多くの若い観客が求めるものはロックではなくEDM(エレクトロダンスミュージック)であることがラインナップから分かる。以前はメインステージの裏のセカンドステージは観客がメインステージの半分しかいないという残念なことが多かったが、今年のACLはRadioheadの裏のMajor Lazer, Mumford & Sonsの裏のLCD Soundsystemがメインステージと同等に近い動員数だったのだ。そしてKendrick Lamarの裏のKygoも同様に。ACLのステージではパーソン・ジェームスにコンラッド・シューエルが登場しそれぞれのコラボ曲を披露。1曲目の「Stole the Show (feat. Parson James)」からステージ前方から花火が上がり、以後ジェットスモークにコンフェッティ(紙吹雪)と会場は一つのアトラクションと変化し、ラストの「Firestone」ではなんとステージ天井と前方から火柱が上がり観客を楽しませること2時間のステージだった。デビューしてまだ数年の若干25歳の彼がACLのセカンドステージのヘッドライナーを任され、それに見合うプレイ、ステージセットそして大入りの観客と見事にヘッドライナーとしての役目を果たしたのだった。
Text & Photo:ERINA UEMURA
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