2013年リリースの前作『ヘイル・トゥ・ザ・キング』で、2作連続となる米ビルボード・アルバム・チャート1位を獲得したラウド・ロック/メタル界の代表格バンド=アヴェンジド・セヴンフォールドが、現地時間2016年10月27日に、通算7作目となるスタジオ・アルバム『ザ・ステージ』をサプライズ・リリースした。
この日、LAのハリウッドに位置するキャピトル・タワー屋上では、バンドによるパフォーマンスがライヴ・ストリーミングが行われるイベントが予定されており、3D、360度のライヴ・ストリーム・ヴァーチャル・リアリティー・パフォーマンスをVRLIVE最新テクノロジーを駆使した最新VR機器“VRTGO”を通じて、世界中のファンに配信された。さらに、バンドは駆け付けたファンと写真を撮るなど、極秘リリースの経緯などを話しながらアルバム・リリースを祝った。
米ビルボードは、バンドの結成メンバーの一人で、ヴォーカリストのM.シャドウズを直撃。新たなフェーズに突入したバンドやサプライズ・リリースの経緯、ニール・ドグラース・タイソンとコラボした収録曲「Exist」になどについて話を訊いた。
◎なぜニュー・アルバムをサプライズ・リリースしようと思ったのですか?
M.シャドウズ:インターネットが普及した今現在の世の中で、自分たちがどのようにアルバムを聴きたいか、というのを純粋に行動に移したんだ。バンドにとってアルバム・リリースに至るまでに、先行シングルを4曲も公開したり、“パンくず”が多すぎで、時間がかかりすぎる。だからアルバムがリリースされる頃には、全然エキサイティングじゃなくなってるんだ。長年、このやり方に面白味を感じていなかった。
そこで「新作をリリースするんだったら、自分たちの好きなようにやりたい。」って決めた。そうすることによって、曲に対する見解をメディアが邪魔することなく、リスナーが曲と接することができる。「今作が俺たちの最高傑作だ。」とか書いてあるインタビューを読んでからではなく、先入観なく音楽を楽しみ、自分で好きか、嫌いか、判断できる。俺たちは、それが最も純粋に音楽と触れる方法だと思ってるから、今回それを促すことができてエキサイトしている。特に、他のメタルやロック・バンドのよっても、行れたことがない試みだから―レディオヘッドをロック・バンドと定義するのであれば話が別だが。俺は、彼らを自分たちと同じジャンルだとは思っていない。だから、エキサイティングだ。
◎この試みは、音楽自体もフレッシュで、エキサイティングにしましたか?
M.シャドウズ:新作が完成したのは7月だ。これまで感じてきたフィーリングと違うものだとは、言える。通常、俺たちがアルバムをリリースする時、リリースの1週間前にはレビューがあちこちに掲載されて、リスナーも曲を聴いてるから、ある程度ヴァイブはつかめてる―周りの人間から評判は耳に入ってるし、もう何か月間かシングルを聴いている。ラジオで流れてるから。
今回、この試みを行ってみて…今作は俺たちにとって7作目なんだが、こんな風に感じたのは初めてだ。まだ誰もアルバムを聴いていないから、誰の批評も耳にしていない。ラジオでかかり出してからも1週間ぐらいで、すごくエキサイティングだ。とても爽快な気分で、まさにこの感覚を必要としていたんだ。
◎<キャピトル・レコード>は長年の歴史を持つレーベルですが、移籍したことで新たな一章という感じはしますか?
M.シャドウズ:“新しさ”は、キャピトルと契約した以前から、既にスタートしていた。変化を起こそうと思って、(元バッド・レリジョンのドラマー)ブルックス・ワッカーマンに新たなドラマーとして加入してもらった。彼と、新作の制作を2年ほど行ってきた。ジャムったり、色々水面下で進めていた。これがバンドにとって新たなスタートになるというのはわかっていた。グッズ販売、ツアーから曲作りまで、すべてを変えたかった。ブルックスは、その変化において重要なんだ。
そして、アルバムのリリース方法も変えた。自分たちで資金を調達し、レーベル無しでレコーディングした。もし最良なパートナーが見つからなかったら、自主リリースする予定だった。その時、<キャピトル・レコード>が表れ、彼らがその最良なパートナーとなってくれた。<キャピトル>では、ストリングスやホーン・セクションをレコーディングした。あそこは、本当に歴史そのものだ。俺たちがストリングスをレコーディングしている時に、“保管庫”の中からでてきたフランク・シナトラによる新曲がミックスされているのを見ることもできた。信じられないね。
◎ニュー・アルバム収録曲で、ライブで演奏するのを楽しみにしているものはありますか?
M.シャドウズ:ライブ感のあるレコードだから、ファンは特にいい反応をしてくれると思ってる。それに、すごくエネルギッシュでもある。今、ショーの構想を練っているところなんだ―さっき話したように、すべて一新するつもりなんだ。パイロを使った、ありきたりなロック・ショーにはならない。これまで俺たちはとてつもなく“ビッグ”なロック・ショーをプレイしてきたが、今回はみんなが使わないようなトリックで、さらにワンランク上のショーを見せたい、と思ってる。
新曲に関しては、4~5曲は速攻セットリストにいれようと思ってる。「Simulation」という曲はとても視覚的で、「God Damn」や「Stage」もいい感じになるんじゃないかな。新作を中心にショーを組み立てていて、過去のアルバムからあまり有名じゃない曲も演奏する予定だ。
◎アーティストととして、そしてクリエイティヴ面において進化し続けているという面で、尊敬する人はいますか?
M.シャドウズ:メタリカは、いい仕事をしてると思うね。いつだって、そこまで有名じゃない曲もプレイしてるし、新境地を開こうと努力している。カニエ・ウェストも才能に長けてると思う。どのツアーもライブ、グッズ、ヴァイブをすべて一新しているし、アルバムもいい。音楽面に関して大好きなのは、ツール、フェイス・ノー・モア、システム・オブ・ア・ダウンとか、他とは違っていて、自分たちのルールに基づいた行動をするアーティストたち。それがたとえ人に理解されようと、されまいと、まったく気にしていない。
それって、年とともに生まれるもので、まさにアヴェンジド・セヴンフォールドにとって今がその時だと思う。30代半ばの5人組で、自分たちが作りたい音楽を作ってる。自分たちがやりたいように作品をリリースし、その作品を人々が気に入ってくれればクールだし、もし気に入ってくれなければ、それも理解できる。
◎ニール・ドグラース・タイソンとのコラボは、どのように形になったのですか?
M.シャドウズ:ここ数年間、バンドとしてAI(人工知能)について何度も話し合ってきた―科学の最先端において自分たちの立ち位置はどこなのか、このトピックに関して映像、ポッドキャストや本を通じて様々なことを学んできた。そうする内に、とことんハマってしまって、科学のみならず、これからどうなっていくのか、という部分に焦点をおいたアルバムを作ることに決めた。
ツアー中のある晩、“ビッグバン宇宙論”についての曲を書こうというアイディアが浮かんだ。そのへヴィメタル・バージョンをね。そこから生まれたコラボなんだ。曲の最後を何かでトッピングしなければ、と思って、ニール・ドグラース・タイソンのスタッフに連絡を取ったら、直接連絡をしてきてくれた。これまで彼は、教養を高めるためだったら、何でもやると言っていたので、これはファンの教養を高めるためで、興味を持ってくれれば、さらに知りたいと思うかもしれない、という感じでアイディアを投げてみた。そしたら、実際にOKが出て、彼が参加してくれることになった。
あのエッセイは、俺たちのために彼が書いてくれて、とても興味深い内容だ。へヴィメタル・アルバムに天体物理学者が参加してくれるなんて稀なことだ。稀というか、きっと今までになかったことだな。
Interview by Steve Baltin / 2016年10月28日 Billboard.com 掲載
◎「Live From Hollywood」ライブ映像
◎リリース情報
『ザ・ステージ』
アヴェンジド・セヴンフォールド
2016/10/28 RELEASE
2,500円(plus tax)