2016/08/16 11:45
メロウで、エモーショナルで、そして都会的で――。
昨年はジェイク・ワンとの“ヴィンテージ・ディスコ・ユニット”=タキシードで、ダンスフロアの楽しさを目一杯体感させてくれたメイヤー・ホーソーン。先のユニットでの“お祭り”に一区切りつけ、今年は4作目となる『マン・アバウト・タウン』をリリースして、本来の活動サイクルに帰還してきたメイヤー。いつか、どこかで聴いたようなメロディがときどき顔を出す親近感も滲ませつつ、それでも洒脱な雰囲気を漂わせるファルセット・ヴォイスを駆使した涼しげなサウンドは、彼がまた時代としっかりシンクロしながら進化してきたことを饒舌に伝えてくる。
特に新作でのブルー・アイド・ソウルの系譜を正しく継承したような佇まいは、本人にしてみれば、タキシードで受けた予想外の歓迎ぶりに自信を深めた表れだろう。果たして彼のソロとしての久々のステージは、どんな展開で僕たちを楽しませてくれるのだろうか。期待に胸を膨らませながら、会場の『ビルボードライブ東京』に足を向けた。しかし、こんなに昂る気持ちを抱えながら会場に向かうライブは、いつ以来だろう――。
ヒートアイランドの六本木を闊歩するのも久々だが、頭の中ではすでに、新作からのヒット曲「ラヴ・ライク・ザット」がループしながら鳴り続けている。会場に着いたら、まずは冷たいロゼワインでも…。
デュオ・ヴォーカルを含む5人のバンドと一緒に登場したメイヤー・ホーソーン。思い切り気障なのにどこかコミカルでもある彼のしぐさが、オーディエンスの気分をアップさせていく。そこはかとなく漂う20世紀のヴィンテージ・ソウルの薫り。今宵は“大人の音楽”を堪能させてくれるに違いないと、ライブが始まった瞬間に感じた。その本能的な確信は、いささかもブレることなく、目の前で具体的に展開されていく。まさにブルー・アイド・ソウルのサラブレッドの如き深い輝き。何と幸せな時間が訪れたのだろう――そんな多幸感が満ちていく会場は、見渡してみればシックでオシャレなカップルが多いではないか!
セット・リストはお馴染みのヒット・ナンバーがズラリと並び、自然と踊り、口ずさんでいる観客が大半。と同時に、新作からのナンバーも、しっかり。「ブレックファスト・イン・ベッド」や「ランジェリー・アンド・キャンドルワックス」といったセクシーな曲も含め、大半を繋げてメドレーにしたステージングは当然、ノリもサイコー。間にはストンプ、ハンドクラッピング、コール&レスポンスをたっぷり絡めて、会場の一体感は最高潮に――。
途中にインストのナンバーを1曲挟み、鈍く輝く素材のタイトなジャケットに着替えてきたメイヤーが、モータウン・パロディのナンバーを畳みかけ、「みんな、オールドメンになった気分はどうだい?」とニヤつきながら聞くと、演奏は一気に佳境に。タキシードの「ドゥ・イット」でスタートしたグルーヴ感たっぷりの終盤は、ファンキーな「ウォーク・ディス・ウェイ」(エアロスミス)などのカヴァーを絡めながらも、ハイライトはやはり「ラヴ・ライク・ザット」。オリジナルはどの曲もルーツが透けて見えてくるほどの、黒人音楽をリスペクトするが故のパロディ感覚に溢れ、そこに人懐っこさも感じさせてくれるメイヤー。この夏、最新型のヴィンテージ・ソウルを聴かせてくれたブルー・アイド・ソウルの“リーサル・ウェポン(最終兵器)”は、ヒートアイランドで生き抜く我々、都市生活者に“潤いの一滴”を心地好くサーヴしてくれた。
東京は今宵(16日)と、18日に大阪で単独公演を行い、そして週末にはSUMMER SONICに出演するメイヤー・ホーソーン。今年の夏のトピックと言っても差し支えないほど、躍動感溢れる彼のステージを絶対に見逃さないで!
◎メイヤー・ホーソーン公演情報
ビルボードライブ東京
2016年8月15日(月)~16日(火)
詳細はコチラ>
ビルボードライブ大阪
2016年8月18日(木)
詳細はコチラ>
SUMMER SONIC 2016
メイヤー・ホーソーンは8月20日(土)に大阪会場、8月21日(日)に東京会場に出演
詳細はコチラ>
Photo: Masanori Naruse
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。猛暑の夏。熱帯夜のヒートアイランドを凌ぐために、今年はヨーロッパでも大流行の冷えたロゼワインが王道だろう。ビタミンがたっぷりの緑黄色野菜を煮込んだラタトゥイユや、スパイシーなラムチョップなどを頬張りながら、スタミナを補給して。身体をクールダウンさせるためにも、テロワールがピッタリの南仏・プロヴァンスのロゼがオススメ。
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