70年代から活動をスタートし、音楽、アート、文学、ファッション界に多大な影響を与え続けてきた“パンクの女王”のパティ・スミスの単独公演が、2016年6月7日にビルボードライブ東京にて行われた。
オープニング・アクトを務めたのは、パティの愛娘ジェシー・パリス・スミスとチベット人アーティストのテンジン・チョーギャル。奔放ながらも国民に愛された“美しい詩人”ダライ・ラマ6世による言葉が、ジェシーの繊細ながらも芯の通った朗読とテンジンが奏でるフルートやチベット伝統楽器ダムニェンの神聖な音色、そしてその圧巻の歌声によって会場を優しく包み込んだ。
今回のパティのステージは、デビュー当時から彼女を支えてきたレニー・ケイがギター、そしてジェシーがピアノを担当。リリースから40周年を迎えたパティのデビュー作『ホーセズ』収録の「Redondo Beach」の冒頭では、「今年は、1stアルバム『Horses』の40周年記念で、レニーと私は、今作に収録されている楽曲の多くを一緒に手掛けました。私たちは、45年以上活動を共にしています。今年の12月にレニーは70歳を迎えます、そしてその3日後に私も70歳になります。ありがとう、レニー。」と感謝の意を述べ、長年の歴史によって培われたレニーとの息の合ったパフォーマンスとともに、2人の固い絆を再確認することができた。
ライブ当日は、故プリンスの誕生日ということもあり、パープルのライトがステージを照らすと「When Doves Cry」のイントロが。ポエトリーを織り交ぜるアレンジが加えられ、彼女らしい表現で音楽界のレジェンドへ敬意を示した。さらには、モハメド・アリへトリビュートとして「Beneath The Southern Cross」、ウィリアム・ブレイクを想いを綴った「My Blakean Year」、エイミー・ワインハウスのために書いた「This Is The Girl」に加え、地震や余震の被害者たちに捧げた「Wings」なども披露。また先日、アレン・ギンズバーグの生誕90周年を祝い、フィリップ・グラスと開催した【THE POET SPEAKS】公演でのハイライトにもなった「Footnote to Howl」の朗読も行われた。
途中、曲のコードを間違えてしまうと、観客に“催眠術”をかけたり、本編ラストとなった「Because The Night」では、1994年に惜しくも他界した夫で、元MC5のフレッド・ソニック・スミスとの思い出をはにかみながら語り、はたまた「Banga」ではワサビ畑、鎌倉、蕎麦、黒澤などの日本語を織り交ぜ、チャーミングな一面と日本愛も垣間見せた。
そして「この世は、苦しみや腐敗に溢れていて、戦わねばならないことが多々有ります。時には無力に感じる時もあるでしょう。でも、私たち全員の中に特別なエネルギーの塊があり、人類一人一人が意味のある存在です。平和、澄んだ空気や水など、世の中の改革を求めるのであれば、私たちは一つにならならなければなりません。」と語ると、ラストの「People Have The Power」に突入。シンプルながらストレートなメッセージは、観客の心にまっすぐ届き、会場は総立ちとなり、パティへ拍手喝采を浴びせた。
「私は言語があまり得意ではないけれど、幸運なことに私たちには音楽という共通の言語がある。」と語っていたパティだが、その言葉通りに音楽に宿るパワーに心揺さぶられるステージとなった。
パティ・スミスの単独公演は、ビルボードライブ大阪にて6月9日に開催される。
Photo: Yoshie Tominaga
◎公演情報
パティ・スミス
アコースティック・コンサート with ジェシー・パリス・スミス and レニー・ケイ
Opening Act:ジェシー・スミス&テンジン・チョーギャル
ビルボードライブ東京:2016年6月7日(火)
1st Stage 開場 13:00 / 開演 14:00 2nd Stage 開場 19:00 / 開演 20:30
ビルボードライブ大阪:2016年6月9日(木)
1st Stage 開場 13:00 / 開演 14:00 2nd Stage 開場 19:00 / 開演 20:30