2016/05/12
GS(グループ・サウンズ)の黎明期にしてビートルズが初来日を果たした1966年から音楽活動をスタートさせ、75年に発表したジャパニーズR&Bの原点的名作『ほうろう』でその評価を不動のものとしてきた小坂忠。日本のリズム&ブルース、ポップス、ゴスペルの礎を築いてきたレジェンドのキャリア50周年を記念して行われたライブは、ギターに鈴木茂、ベースに小原礼、キーボードにDr.kyOn、ドラムに屋敷豪太、サックスに小林香織という鉄壁のメンバーがバックを務め、ゲストとしてさかいゆう、後半には重厚なゴスペル・クワイアも加わっての豪華絢爛なもの。初日となった10日(火)のビルボードライブ大阪公演は、半世紀に渡って培われてきた豊潤にして洒脱なミドル・グルーヴのマジックの連続で、世代やジャンルを超えて胸を打つエヴァ―グリーンな音楽の力に包まれた。
そっと始まりを告げるようにフロアの照明が落ちると、ロック、ソウル、ニューオリンズ・サウンド、ジャズに精通した錚々たる面々がステージ上に会し、イントロ的に心地よい音が鳴らされる中を登場した小坂がギターを手に取ると、ライブは『ほうろう』収録の名曲「ボン・ボヤージ波止場」からゆったりとスタート。録音当時よりもソウルフルな熱量を増した歌声、小林香織のアーバンなサックスなども交えて名曲に新たな魅力を吹き込むと、メンバー紹介を経て、屋敷豪太のシャープなドラミング、鈴木茂のロッキンなギターが映えるナンバーを立て続けに。70年代のアーシーな空気感とレイドバックし過ぎない切れ味を絶妙に兼ね備えたアンサンブルは、やはりこのスペシャルなメンバー構成でしか醸し出すことのできない必然的で貴重なものだろう。
続いては、ソウルフルな歌声と鍵盤プレイで小坂が切り開いてきた和製R&Bの系譜を今に継承するさかいゆうが呼び込まれ「なんか一万人フェスよりも緊張するんですけど」とのMCも挟みながら、世代を超えたツイン・リードでファンキーな名曲「風来坊」を。そして逆に、さかいの代表曲もカバーで取り上げられて音楽的な親子のようなコラボを実現させると、中盤は再びリリースから40年以上を経た今も古びれることのない、同時期の洋楽ロックやソウルを巧みに消化しつつも、その模倣だけに終わらない独自性とメッセージを含んだ名曲を、改めてその楽曲が生まれる背景となったエピソードを再認識させるMCも挟みながら立て続けに披露していった。
そして後半は、コーラス隊としてSoul Bird Choirの精鋭6名がバックに加わり、小坂がレイ・チャールズと並んで大きな影響を受けたソウル界の偉人のカバー、25年ぶりのポップス・シーンへの復帰作となった2001年発表の『People』からのナンバーもニュー・ソウル色を強めたグルーヴィーなアレンジで披露。本編ラストには再びさかいゆうも合流し、大所帯でのライブならではの高揚感と重厚なコーラスを伴った代表曲「ほうろう」の再演から、ゴスペル色を強めた感動的なフィナーレへ。ジャパニーズ・ポップスの黎明期を担った伝説的な存在にして、後年にはゴスペルの指導者としても活躍してきた稀有な才人の50年目の到達点は、どこかザ・バンドの『ラスト・ワルツ』を彷彿させるような多彩な音楽エッセンスとグルーヴ、温故知新なポピュラー音楽の粋に満ちていた。
Text:Hidesumi Yoshimoto
Photo:Kenju Uyama
◎公演情報
【小坂忠 Debut 50th Anniversary Premium Live featuring 鈴木茂, 小原礼, Dr.kyOn, 屋敷豪太 & 小林香織 Special Guest さかいゆう】
2016年5月10日(火)ビルボードライブ大阪
>>公演詳細はこちら
2016年5月18日(水)ビルボードライブ東京
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