2016/04/27
今宵のキーワードは“Happy Happy Happy!!!!!!!!!!!!!!!!!”
耳にすれば誰もが笑顔になれるし、ときには少しホロっとした気分にもなる――そんな、いつも身近に置いておきたい音楽、それがスクイーズのポップなロック・サウンドだ。
1974年のポスト・パンクの時期にデビューし、中心メンバーのクリス・ディフォードとグレン・ティルブルックが書くキャッチーなメロディと、ちょっとアイロニーの込められた歌詞はイギリスだけでなくアメリカなどでも多くの人の心を掴み、2人は“80年代のレノン=マッカートニー”と言われるほどの高い評価を得てきた。
メンバーの入れ替わりは何度もあったが、クリスとグレンのコンビは不動で、さまざまなアイデアが込められた楽曲をいくつも作ってきた。スマッシュ・ヒットしたナンバーも多いが、最も有名な曲は81年にリリースされた4枚目のアルバム『イースト・エンド・ストーリー』からカットされた「テンプテッド」だ。初めてUSチャートの8位に食い込んだこの曲で彼らはマジソン・スクエア・ガーデンを満杯にするほどの人気を獲得した。
その後、紆余曲折を経て99年に解散したが、昨年、17年ぶりの新作『Cradle To The Grave』(「揺り籠から墓場まで」の意)を発表して活動を再開させたスクイーズ。このアルバムはBBC放映の短編ドラマのサントラとして制作されたらしいが、そんな事情は抜きにしても、ポップで万華鏡を覗き込んでいるようにキラキラと表情を変えるアイデア満載の曲想は、21世紀になっても健在。今回の来日メンバーにクリスが入っていないのが少し気がかりだが、それでもグレンの人懐っこい甘い声と達者なギターを核とした新メンバーの演奏に不安はまったくない。
そんな“新生スクイーズ”の日本でのお披露目ライブ。どうやらステージごとに、かなり演奏曲目が変わるらしい。僕が観たのは26日のファースト・ステージ。ソロでは何度も来日しているグレンがバンド・メンバーと一緒にバンスキング風にアコースティック楽器を奏でながら客席の間を練り歩いてステージへ。演奏はそのまま「アワ・ハウス」に移り、観客から大きな拍手と歓声が上がる。「イズ・イット・ラヴ?」「アナザー・ネイル・イン・マイ・ハート」と畳みかけ、熱心なファンは早くもスタンディング・オベイション。「この道30年以上」のコアなファンが多いだけに、会場の盛り上がりは最高潮だ。そう言う僕も筋金入りのスクイーズ・ファンだから、94年の初来日のときにインタビューしたことなどを思い浮かべながら、思わず一緒に歌詞を口ずさんでしまう。もう、ファンにとっては、まさに“夢心地”な時間が過ぎていくのだ。
途中に最新作からの曲も織り交ぜながら「サム・ファンタステイック・プレイス」で涙腺が緩くなったり、「ブラック・コーヒー・イン・ベッド」で追憶に浸ったり。また「グッドバイ・ガール」ではタイトルを全員で大合唱したり――。どの曲もポップでキャッチーだから、初めて聴く人でもすぐに覚えてしまう。そんな“魔法”が散りばめられたナンバーを次から次に繰り出してくる。英国では酒場に集まる酔いどれ客の気紛れな要望にも応えて鍛えられてきた“パブ・ロック”と呼ばれることもある彼らの庶民的な曲の数々は、まさに日常生活に潤いを与えてくれる“揺り籠から墓場までのサウンドトラック”のように響く。気が付けば会場にはハッピーな空気が充満していた。
「音」を「楽しむ」から「音楽」――そんな当たり前のことを再認識させてくれるスクイーズのステージは、派手な仕掛けなど一切ないけど、充分に見応えがあり、聴き手の気分を軽くしてくれる。人生を楽しむのになくてはならない、とても親密な音楽だ。
終始、ゴキゲンなムードを振りまきながら“名曲”を出し惜しみなく演奏してくれた1時間20分。アンコールには「テイク・ミー・アイム・ユアーズ」を客席に降りてきて演奏し、最後もバンスキング風に去っていった。
25日の初日も素晴らしいステージだったようだが、今日(27日)は大阪で演奏する彼ら。新幹線に飛び乗って観に行きたい衝動に駆られるほど楽しい音楽を展開するスクイーズ。また、すぐにでも再来日して欲しいと思わずにはいられない、ハッピー・オーラ満載のライブだった。
◎公演情報
【スクイーズ】
ビルボードライブ東京:2016年4月25日(月)~26日(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2016年4月27日(水)
>>公演詳細はこちら
Photo:Masanori Naruse
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。天気のいい日は初夏の雰囲気も感じられる今の時季、ちょっと夏を先取りしたような気分でフランス・ローヌ地方の白ワイン、ヴィオニエなどいかが? 豊かなアロマが広がり、ちょっとゴージャスなニュアンスも感じる独特の個性は、とてもノーブルな香気が漂う。フランスのワインがボルドーやブルゴーニュだけでないことを再認識させてくれるヴィオニエは、これから注目のブドウ品種。ぜひともお試しあれ!
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