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2016/02/03 20:30

Album Review:ラスティー『EVENIFUDONTBELIEVE』 いよいよ奔放に鳴らされた作家の“頭の中”

 2014年に独自のダブステップ道を開拓したアルバム『Green Language』が好評を博した、グラスゴー出身のダブステップ・プロデューサーであるラスティー。それから約1年という短いスパンで、2015年11月にはニュー・アルバム『EVENIFUDONTBELIEVE』が急遽配信リリースされた。日本では、この新作が特別に500枚限定で2月3日にCD化リリースされる。

 独特の強い情緒と肉体性を帯びた旋律が、レイヴ感に拍車をかけるラスティーのサウンド。彼は2010年のEP『Sunburst』を契機に英ワープ・レコーズからの音源リリースを行い、脚光を浴びるようになった。筆者が初めて彼のライヴに触れたのは【Sonar Sound Tokyo 2012】でのことだったが、ボトムのアタック感はもとより、ヴィヴィッドに響き渡る上モノのパワーに驚かされた。

 デビュー・アルバム『Glass Swords』(2011)に収録された「After Light」がアディダスの CM前作曲に起用されたり、またセカンド作『Green Language』はキャッチーなバランス感覚に秀でた作品になったこともあって、ラスティーの名はグライム/ダブステップ・シーンのみならず、米ヒップホップ・シーンにまで飛び火した(米ラッパー=ダニー・ブラウンの楽曲をプロデュースすると、一方でダニーはラスティーの「Attak」に客演)。

 さて、新作『EVENIFUDONTBELIEVE』は、もともとEPとして構想されていた作品だが、イメージが膨らんでアルバム規模にまで成長したという経緯を持っている。その辺りの情報を踏まえながら新作に向き合ってみると、なるほど、と思わされる部分がいくつかある。まず、整合性のとれた前作と比較して、フレーズの蠢き、弾け方が、遥かに奔放なものになっているのである。冒頭で触れたように、上モノが織りなす強烈な情緒はラスティーの重要な個性なのだが、ここまで自由で開放的な作風は過去に例を見ない。

 一人トランス・バンドとでも呼びたくほどの生々しい躍動感を、ラスティーはダブステップの文脈の中で作り上げてしまっている。また、アルバム後半の「Death Bliss」に見られるチップチューン風のフレーズは、幼少時にビデオゲームの音楽に魅了されたという彼のバックグラウンドをもろに反映している。そんな作風と、「Emerald Tabletz」のように雄大さを感じさせるユニークな楽曲が自然に共存してしまう『EVENIFUDONTBELIEVE』は、ラスティーの頭の中に鳴っている音楽を、いよいよ遠慮なしに全開放したアルバムなのではないかと思えるのだ。

(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『EVEMIFYOUDONTBELIEVE』
2016/02/03 RELEASE
BRC495 1,944円(tax in.)

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