2016/01/28
シカゴ交響楽団が7年ぶりに来日し、リッカルド・ムーティが音楽監督に就任後 初となる来日公演を行った。現在、日本人の団員は2名在籍しており、9歳からスイスに渡りティボール・ヴァルガのもと研鑚を積んだ後、2008年から在籍しているヴァイオリニスト野田愛子もそのうちの1人だ。野田がシカゴ響に入団してから感じているのは、それぞれの奏者に任せられた自由な環境。互いを尊敬しあう気持ちがあるからこそ、それぞれの個性を尊重し自由に演奏できる環境に感謝していると笑顔を見せた。
1891年に創設され、今年で125周年を迎えるシカゴ交響楽団。フリッツ・ライナー、ゲオルク・ショルティ、ダニエル・バレンボイムらを経て、ムーティが音楽監督に就任したのは2010年のこと。ムーティの就任は野田が、まだエキストラとしてシカゴ響で演奏していた頃のことであったが、リハーサルがスタートして、ものの数分で「すごく合っているな」と感じたという。「プロコフィエフの交響曲だったと思いますが、リハーサルが始まってすぐに、ぴったり合っているのが分かりました。そして、同じことをムーティさんも感じてくれていたようです。ムーティさんが、ちょっとした部分を直すだけで曲全体の音色がガラッと変わることがある。良い音楽家であり、良い指揮者であり、経験豊富なムーティさんだからこそできることだと思いますし、そんなムーティさんのもとで演奏できるのは幸せです」
ジョークが好きなムーティとのリハーサルでは、団員から笑いが起こることもしばしばで、シカゴでの公演では、本番中に客席を向いてトークをすることもあるのだという。「ムーティさんは、喋るのがとても上手。楽しいプログラムの時だと、楽章と楽章の間に客席を向いて喋っちゃうこともあります。そういう日は、コンサートというより まるで一つの劇をしているよう」
そんなムーティから、日々伝わってくるのは「人生と音楽とは別々のものでなく、音楽が人生の一つである」ということ。「音楽は人生の一部であり、音楽を通して人と人とを繋げていきたいという気持ちが、ムーティさんの指揮から伝わってきます。(9歳から日本を離れて生活する中で)感じるのは、話す言葉や文化が違っても人間はみな同じだということ。そして、文化の違いを超えてコミュニケーションできるのは音楽だけだということ。今、世界には戦争など様々な問題が溢れていますが、みんな同じ人間だということをツアーを通じて実感しますし、これからも多くの人に伝えていきたいです。」 文:高嶋直子 写真:Todd Rosenberg
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