2015/12/24
2015年の最後に、すごい新人がデビューを果たした。人気オーディション番組 『ザ・ヴォイス』のシーズン9で優勝した、ジョーダン・スミスだ。9月にスタートした同番組に、シーアの大ヒット曲「シャンデリア」で登場し、審査員を務めるファレル・ウィリアムスやグウェン・ステファニー、マルーン5のアダム・レヴィーン等を絶句させてしまったのだ。
『ザ・ヴォイス』の第一次審査では、参加者が歌い始めても、審査員は本人を見ることができず、その歌声だけで審査する。そして、自分がコーチしたいと思った場合に、手元のボタンを押して振り返ることができるオーディション形式だ。ジョーダン・スミスが「シャンデリア」のサビに入ると、審査員たちはボタンを押さずにはいられない。それほどの引力が、彼の歌には込められている。そして、振り返ってさらに驚かされるのだ。
まず、耳だけで彼の歌を聴くと、男性なのか女性なのかわからない。ハスキーな女性の声にも聞こえるし、男性シンガーの透き通った高音にも聴こえる。ジョーダン・スミスの魅力は、そのフェミニンな優しさに溢れる声質にある。それでいて、幅広い音域を柔軟に歌い熟す。さらに驚かされたのは、そのビジュアルにもあるだろう。スタイリッシュな黒人シンガーと思いきや、振り返ったら白人のぽっちゃりメガネ男子が熱唱しているからだ。
このサプライズに、審査員のグウェンは足を挙げ、ファレルはただ、首を横に振るしかない。映像がなければ、視聴者も度肝を抜かれただろう。これは、2009年に放送された、イギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場して会場を沸かせた、スーザン・ボイルのパターンとよく似ている。彼女もそうだが、その美しすぎる歌声とビジュアルとのギャップが、大きなインパクトを与え、更なる感激を生み出した。
その美声を活かして熱唱した、ビヨンセの「ヘイロー」、そしてアデルの「セット・ファイア・トゥ・ザ・レイン」といった、女性シンガーのカバーから、準決勝で披露した、クイーンの「愛にすべてを」まで、性別やジャンルをまたぎ、そのシンガーに敬意を払って丁寧に歌う様は、見事としか言いようがない。その「愛にすべてを」は、放送翌週の米ビルボード・シングル・チャートで、21位に初登場するという快挙を成し遂げた。
『ザ・ヴォイス』で披露された、これらの曲をすべて収録したアルバム『ザ・コンプリート・シーズン9・コレクション』が12月15日にリリースされ、今週のアルバム・チャートで11位に初登場した。来年は、オリジナル・アルバムのリリースも期待されていて、更なる飛躍をみせるであろう、ジョーダン・スミス。2016年のブレイクシンガーのひとりとして、今後の活動に注目したい。
Text: 本家 一成
◎“Chandelier" (The Voice 2015 Blind Audition)
https://youtu.be/vHR4oOIcVZo
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