2015/11/25 22:19
人生を蒼い炎で燃やした歌で聴き手の心を震わせ続けている、唯一無二の女性シンガーソングライター 熊木杏里。11月22日 日本橋三井ホールにて【熊木杏里 LIVE in autumn 「歌が姿を見せる日」】と題したワンマンライブを開催した。
<1対1での対峙……熊木杏里を極限まで近くに感じるコンサートの形>
歌が姿を見せる日。何やら意味深なタイトルが名付けられた同公演のステージには、ピアノとスクリーンのみが設置されており、熊木杏里以外のミュージシャンは誰も登場しないという、実に潔いスタイルで行われた。
厳かなムードの会場。自らの歌を求める人たちの前に現れた彼女は、まずピアノの前に腰掛け「オルゴール」を弾き語る。スクリーンにもオルゴール。それ越しに色を変える景色が映し出され、今回のライブタイトルに込められた意味を察すると同時に世界は変わった。「やさしい悲しみがあなたを包んで オレンジに染まってく街に 私とけだしていく ねぇ 人は懐かしい知らない愛を 心のどこかにしまっているの オルゴールみたいに」その言葉と歌は、映像と身を寄せることで姿となり、この歌と共に在る彼女と我々の人生をより鮮明に浮き彫りにする。
続く「戦いの矛盾」では、この曲が示唆する文字通り戦いの矛盾によって生まれた世界を上映し、その世界の前にひとり佇む日本人が「お金がないこわさを知るには 私は満たされずぎている 食べるために働く気になるには 私は満たされずぎている」と、恵まれた国で生きる者のありのままを歌い綴る。その背景にある世界はそうでない国で生きる者のありのままを映し出し、その重なりは我々のイマジネーションに答えを委ねてくる。
これまで熊木杏里の曲とそのMV、熊木杏里の曲と映画、ドラマ、CMといった形ではいくつも「歌が姿を見せる日」を体感してきたが、歌と映像が溶け合いひとつになるという意味で言えば、ここまで純度の高いそれと対峙するのは初めてとも言えた。熊木杏里の音楽に対するひとつの答えを映像で描くのではなく、共に問いかけてくる。あなたにとってこの音楽は何なのか。
たしかにここにバンドや他の演奏者は必要ない。熊木杏里が今日まで見てきた世界から生まれた音楽と、それに自らの世界を重ねてきた聴き手がコンサートでありながら1対1で対峙する。何ともスリリングでディープな、熊木杏里を極限まで近くに感じる形式だ。
<熊木杏里の目指す音楽の在り方そのもののライブ>
その形式で聴く「水に恋をする」「窓絵」「朝日の誓い」「君の名前」「ひみつ」等々、ただでさえ聴き手の全身全霊と重なっていく楽曲の数々の威力たるや。涙せずにはいられなかったタイミングは何度もあった。少し前のインタビュー(http://bit.ly/1PYFwBS)で本人が語っていた「私が「このあいだこんなことがあってね……」って話したら、相手が人生観みたいなものを打ち明けてくれる。そういう役割がいいなぁ。それって必ずハッピーで終わる訳じゃなくて、もしかしたら泣いて終わるかもしれない。でも泣いてじんわりするのもいいじゃん。それがもしかしたらハッピーってことかもしれないし」という熊木杏里の目指す音楽の在り方そのもののライブ。
<ここに来てまた各方面に劇的な進化を遂げている、静かなる怪物>
なお、彼女は「来年の春ぐらいにアルバムを出したいと思ってます。ツアーもやります! 皆さんが来てくれなくても各地へ行きますから(笑)」と発表。歓びの拍手が飛び交ったが、この日のアンコールでも新しい熊木杏里の音楽をお届け。アニメ『Charlotte』最終話挿入歌として話題となった「君の文字」を生披露し、しかも同アニメの印象的なシーンを上映しながらの歌唱であったこともあり、今までの自身のイメージを飛び越えたスケール感を持つその音楽は、彼女の声に凄まじい可能性を見出させた。シンガーソングライターの枠組みを超えての活動は、今まで以上に多くのクリエーターたちを振り向かせる。それを確信させる1曲、1シーンであった。
そしてもうひとつは新曲「忘れ路の旅人」。おそらくは熊木杏里の今後の音楽人生の象徴になるであろう、ノスタルジーでありながらも力強い、ファンのみならず日本人の琴線に触れるに違いないメロディーと言葉が紡がれた歌。大袈裟に言えば、熊木杏里の歌が日本人の歌に成り得る可能性を感じさせてくれたナンバーだ。ここに来てまた表現者として各方面に劇的な進化を遂げている、静かなる怪物。その動向にぜひ注目してほしい。
取材(テキスト&撮影):平賀哲雄
◎ライブ【熊木杏里 LIVE in autumn 「歌が姿を見せる日」】
11月22日(日)日本橋三井ホール セットリスト:
01.オルゴール
02.戦いの矛盾
03.0号
04.あなたに逢いたい
05.おうちを忘れたカナリア
06.水に恋をする
07.窓絵
08.わちがひ
09.朝日の誓い
10.君の名前
11.お祝い
12.クジラの歌
13.Hello Goodbye & Hello
14.逆光
15.Flag
16.冬空エスコート
17.ひみつ
En1.君の文字(アニメ『Charlotte』挿入歌)
En2.私が見えますか?
En3.忘れ路の旅人(新曲)
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
1
<ライブレポート>Revo、“サンホラの沼”へ誘う圧巻のパフォーマンスを見せた【Revo's Halloween Party 2024】1日目
2
師走恒例【サントリー1万人の第九】に絢香/田中圭らが登場 大阪・関西万博【1万人の第九】開催発表に会場歓喜
3
BE:FIRST、グッチのオープニングイベントに登場 「ジャケットの形やラインの残し方がお気に入り」
4
King & Prince、ポップアップストアを開催 「充実した気持ちで初日を迎えられてすごくうれしい」
5
永瀬廉&八木莉可子が選ぶ「#ぼくらの冬曲キャンペーン」プレイリストが公開 King & Prince/宇多田ヒカル/back numberなど
インタビュー・タイムマシン
注目の画像