2015/11/12 17:30
ミスターAORとして日本でも大きな人気を保ち続けているボビー・コールドウェルが、ジャック・スプラッシュ(アリシア・キーズやジェニファー・ハドソン、ジャズミン・サリヴァン、ケンドリック・ラマーらに楽曲を提供しヒットを生み出してきたプロデューサー)と新ユニット=クール・アンクルを結成し、セルフ・タイトルのアルバムをリリースした。クールなおじさんとは、彼らの佇まいをこれ以上ないほど明確に表したネーミングである。
アルバム『Cool Uncle』の序盤では、恋の余韻を引き摺るブルー・アイド・ソウルの「Game Over」がいかにもスタンダードなAORの響きをもたらすのだが、続く「Breaking Up」以降、強いブレイクビーツが編み込まれ、クール・アンクルがよりコンテンポラリーな土俵で勝負するためのユニットであることが伝わってくる。甘くとろけるような歌声とキーボード・サウンドを、鋭いビート(この曲ではクール・アンクル発祥の地となったフロリダの地元ラッパー、エリック・ビディンスも迎えられている)が支えるという、ポスト・ヒップホップ時代のAORが育まれているのである。
「Mercy」は、大らかで自信に満ち溢れたど真ん中のソウル・チューン。シーロー・グリーンの歌声がフィーチャーされている。「Game Over」で迎えられたメイヤー・ホーソーンと並んで、この辺りはコラボ経験のあるジャック・スプラッシュの人脈が生かされたといったところだろうか。ファンキーなグルーヴをぐいぐいと乗りこなす「Destiny」はスティーヴィー・ワンダー風であり、ここからアルバムの中でも随一の先鋭性を誇るエモーショナルな一曲「My Beloved」辺りまでのパワフルな中盤を担っている。
ボビー・コールドウェルの上質で滑らかなサウンド・アプローチに親しんできたファンは、クール・アンクルのエネルギッシュなトーンに驚くかもしれない。ただ、例えば00年代のセルジオ・メンデスがウィル・アイ・アムのラヴ・コールを受けて『Timeless』や『Encanto』といったコンテンポラリーなヒットを生み出したように、本作は若い音楽ファンにも即座に届く化学反応に根ざしている。何より、こんなふうにヴァイタリティ溢れる姿勢で新たなスタイルに挑むボビーには、頼もしさを感じずにはいられないのだ。ジェシー・ウェアとのデュエット曲「Break Away」も素晴らしく、「Miami Nights」に漂うサウダーヂは『House of Cards』(2012年)の頃のラテン・フレイヴァーも巧みに活かされている。
なお、ボビー・コールドウェルは、12月に今年2回目のビルボードライヴ来日出演が予定されている(東京:12月17~19日、大阪:12月21日、各日2ステージ)。64歳に至ってなお、新たなトライアルへと向かうボビーがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、期待してほしい。(Text:小池宏和)
◎リリース情報
『クール・アンクル』
2015/11/11 RELEASE
VICP-75153 2,916(tax in.)
◎公演情報
ビルボードライブ東京
2015年12月17日(木)~19日(土)
ビルボードライブ大阪
2015年12月21日(月)
More Info:http://billboard-live.com
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