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2015/10/09

Album Review:ディスクロージャー『カラカル』 “変化”という安直な評価軸を突き崩す凄まじいストイックさの宿った新作

 デビュー・アルバム『セトル』(2013年)によって、新世代UKソウル/UKガラージの絶対基準を打ち立ててしまったディスクロージャー。兄ガイ・ローレンス(現在24歳)と弟ハワード・ローレンス(現在21歳)、恐るべき若さで世界的な成功を手中に収めてしまったこの英サリー州出身の兄弟ユニットは、この9月末に2作目となるアルバム『カラカル』を発表した(日本盤も9月25日にリリースされている)。UKチャートでは前作に引き続き1位。Billboard 200においても初登場9位と、極めて好意的なレスポンスを受けているところだ。

 少し時間を遡ると、「歌のアルバムになる」と事前に語られていた新作『カラカル』だが、5月初頭に発表されたシングル「Bang That」はどちらかといえばフロアライクなダンス・チューンであり、新作アルバムのイメージを伝えるものではなかった。追ってリリースされたシングル「Holding On」がグレゴリー・ポーターをフィーチャーしたソウルフルなナンバーとなっていて、リスナーにとってはここから本格的に『カラカル』の季節が始まったと言えるだろう。そのため、「Bang That」はボーナス・トラックとしての収録になっている。

 どこまでも滑らかで、抑制されたダンス・グルーヴを構築するトラック。そして、優れたシンガーたちを招いて吹き込まれる歌。結果的に『カラカル』は、ディスクロージャーとして浴びる期待に100パーセント応えるアルバムに仕上げられた。楽曲デザインの端正さと精度において、ローレンス兄弟はとても20台前半とは思えない職人の仕事をしている。正直に言えば、僕はアーティストたちに作品毎の変化を期待してしまうタイプで、ディスクロージャーの優等生的なスタンスはその点では不利なのではないかと考えていた。しかし、彼らの完璧を追い求めるストイックな姿勢には、そういった安直な評価軸を突き崩すような凄味が宿されている。

 むしろ、デビュー以来、ディスクロージャーを取り巻いていた賞賛の声は、彼らにUKソウル/UKガラージの新しい時代を引き受ける自信と覚悟をもたらしたのではないか。メアリー・J・ブライジやアクアラングといった、強烈な才能との共同作業も、大切な経験になったはずだ。本作では、サム・スミスとの新たなコラボ曲「Omen」をはじめ、世界各地のシンガーと共演していることもポイントである。ザ・ウィークエンドやロード、ミゲルといった新世代スターたちも、それぞれに確かな実力を見せている。

 そして興味深いのは、ガーナ生まれロンドン在住のクワブスを迎えた「Willing & Able」や、オーストラリアのジョーダン・ラケイが歌う本編ラスト曲「Masterpiece」といった、ディープなソウル・チューン群である。「必ず、どこかにあるはずの至高」。それを追い求めるディスクロージャーは、こんなふうに、今後も珠玉のナンバーを届けてくれるはずだ。

〈Text:小池宏和〉

◎リリース情報
『カラカル』
2015/9/25 RELEASE
UICI-1139 2,376円(tax in.)

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