2015/08/18 12:38
8月16日、椎名林檎初の台湾(台北南港展覧館)公演【椎名林檎 (生)林檎博’15 -垂涎三尺-】が行われた。この自身初の海外公演の最速レポートが到着した。
結論から言ってしまえば大成功だった。本日8月16日、台北南港展覧館で行われた椎名林檎【(生)林檎博 ’15~垂涎三尺~】は、台湾はもとより彼女にとって初の海外公演だった。チケットは早々にソールドアウト。現地メディアの関心も高く、既報の通り、椎名が台北松山空港に到着した際には、多くの現地ファンの熱烈な歓迎を受け、一時場が騒然としたほどだった。
そんな注目のなか幕を開けた本編の1曲目は「茎~大名遊ビ編~」。祭壇を祀り崇める巫女のような出で立ちで神秘的に演舞するダンサーのSAYAとYUKAを左右に従え、朱赤の長襦袢を着た椎名が床に膝を付いた姿勢からゆっくりと立ち上がり姿を現わすと、観客の興奮は早々にピークへと達した。筆者はこれまでに彼女のステージを数多観てきたが、この登場の瞬間の神々しさには電流みたいな鳥肌が全身を走りまくった。
すると一転、幻惑に包まれた客席の空気を切り裂かんと、椎名は2曲目に「NIPPON」の電光石火をお見舞いする。中国語で「ニーハオマ?」(※「お元気ですか?」)と呼びかけ、矢継ぎ早に「自由へ道連れ」「ありあまる富」を演奏した。つまり彼女は冒頭の4曲で台湾のファンへ最上級の礼を尽くし、大和撫子の心意気を見せつけ、しかもその孤高の存在感と音楽家としてのイデアを提示したのだ。まったくとんでもない芸当ではないか。
こうなれば椎名の独壇場だ。彼女はこの公演のためのスペシャルバンド“MANGARAMA”の面々と共に次々と楽曲を披露していく。アルバム『日出処』からの「走れゎナンバー」や、リリースされたばかりの新曲「神様、仏様」、さらにはこの公演に先駆けて現地限定でリリースされた台湾公演記念盤『垂涎三尺』収録の「罪と罰」、「本能」、「歌舞伎町の女王」といったキャリア最初期の名曲を堂々と歌い上げ、終盤は「密偵物語」、「殺し屋危機一髪」、「カリソメ乙女」といったコケティッシュな高速ジャズで畳み掛けるように本編を終えた。
そしてアンコール。一糸乱れぬ満場のハンドクラップで迎えられた椎名は、通訳を介し、日本語に中国語を交えながらの可愛らしくコミカルなMCに興じる。「台湾が気に入ってしまったので、呼んでいただけたらまたすぐに来てもよろしいでしょうか?」という椎名の語りかけに、10,000人の観客が手旗と拍手喝采で応える。この一言がそれまで比較的整然と観戦していた台湾の観客の心の火に油を注いだのか、浮雲とのデュエットによる新曲「長く短い祭」では、花道を歩いてきた二人に目掛けて多くの観客が押し寄せる一幕もあった。
最後の一曲は「旬」。互いの命の繋がりを、意思の敬いを、国境を越えた絶唱によって観客と確かめ合い、彼女はステージを後にした。全23曲。彼女と観客の長く、短い、一夜限りの祭は大団円を迎えた。「垂涎三尺」(=涎が垂れるほどの)を掲げた渾身のステージは、台湾のファンに「非常好吃」(=美味しかった)たる充実感をもたらしたはずだ。
今宵、音楽家として新たな歴史を刻んだ椎名林檎。この誉れを携えて、彼女はこの秋、凱旋よろしく列島縦断の百鬼夜行へと赴く。(2015.08.16 内田正樹)
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