2015/07/14 13:40
比類ない歌声とキリスト教の強い信仰心のため“神のテノール”と呼ばれたカナダ生まれのオペラ歌手、ジョン・ヴィッカーズが亡くなった。88歳だった。
ロイヤル・オペラ・ハウスが遺族の声明を引用し、アルツハイマーと闘っていたヴィッカーズが7月10日、カナダのオンタリオ州で亡くなったことを明らかにした。
1926年カナダのサスカチュワン州プリンスアルバートで生まれたヴィッカーズは、子供時代教会の聖歌隊で歌い、トロント・ロイヤル音楽院の奨学金を得るまでは医学を学びたいと思っていた。1957年にロイヤル・オペラでデビュー、1年後にはドイツのバイロイト音楽祭に出演、『ワルキューレ』のジークムントなどが評価されてリヒャルト・ワーグナーの世界的な主演歌手に登りつめた。1960年からはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にたびたび出演し、ベンジャミン・ブリテンの『ピーター・グライムズ』などが持ち役となっていた。
力強い歌声を持つテノール歌手の中でも、ヴィッカーズはパフォーマンスの激しさが際立っており、“100の音色と抑揚を持つ”と評された。ヴィッカーズは「芸術は人生の意味との格闘だ」と言話したことがあり、彼の信仰は芸術的な選択をする際の特徴となっている。ワーグナーとはつながりの深いヴィッカーズだが、ワーグナーの反ユダヤ主義がナチスに好まれていたため、反キリスト教的だとして1977年には『タンホイザー』の上演から手を引いた。
30年間世界中で歌い、熱心なファンを集め、多くの名誉学位のほかカナダ勲章で最高のコンパニオンやグラミー賞を獲得。家族は、“たいていは自然と家族に囲まれて家の農場にいる、田舎の人”だったと述べている。妻ヘンリエッタとは1991年に死別。5人の子ども、11人の孫、2人のひ孫が残された。
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