2015/04/20
イタリアの映画音楽といえば、昔からマニアには絶大な人気を誇っている。エンニオ・モリコーネやニーノ・ロータを筆頭に、アルマンド・トロヴァヨーリ、ピエロ・ピッチオーニ、ブルーノ・ニコライ、ピエロ・ウミリアーニといった作曲家による歴史的な名画からB級お色気コメディにいたるまで、数多くサントラが発掘されてきた。しかし、まだまだ知られざる作曲家や作品があるのも事実だ。
エンリコ・シモネッティも、そんな知られざる作曲家のひとりだろう。彼が手がけた有名作といえば1975年の『青い経験』くらいだし、それ以外にも映画やテレビに多数楽曲提供しているがほとんど知られていない。しかも、彼はピアノの名手としてインスト・アルバムを数枚発表しているが、これらもかなりのレア盤でなかなか聴く機会がなかった。実は彼の息子クラウディオ・シモネッティは、『サスペリア』などのホラー映画で知られるプログレッシヴ・ロック・バンド、ゴブリンの中核メンバー。そんな小ネタも、よほどのマニア以外には認識されていない。
しかし、今回リリースされた『ピアノの色彩』は、エンリコのロマンティシズムがたっぷり詰まったプレイを聴くことができる、待望の入門編的な作品集である。1974年に密かに録音していた楽曲群は、オリジナルから他の映画音楽のカヴァーまでまさに色とりどりのラインナップ。バーブラ・ストライザンドが歌っていた「追憶」や、バリー・ホワイトの名曲「愛のテーマ」といった時代を感じさせる選曲とアレンジが多いが、いずれも瑞々しいタッチのピアノで華麗に表現されている。いわゆるイージー・リスニングとして楽しめると同時に、ファンキーなリズムを起用した楽曲はレアグルーヴとしても使えるし、オーケストレーションやコーラスのイタリアらしい品の良さも特筆モノ。たっぷり20曲収められた本盤を聴けば、エンリコ・シモネッティが希有な実力者であることを思い知らされるだろう。とにかく、エレガントかつメランコリックな気分に浸りたいなら、一度は聴いてもらいたい。
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