2015/03/03
知的障害者×パンク音楽という異色映画『パンク・シンドローム』、衝撃のドラマ展開が待ち受ける『君が生きた証』、ニューヨークの街を舞台にそれぞれの新たな一歩を描く『はじまりのうた』、名門プロオケの突然の再結成から謎の指揮者による本番当日までを描く『マエストロ!』。音楽をキーワードに、音楽があるから、繋がる。音楽があるから、分かり合える。音楽があるから、歩み出せる。そんな映画4本を紹介したい。
抱腹絶倒のパンク映画『パンク・シンドローム』がフィンランドからやって来た。服の縫い目が気になるギターのベルッティ、足の爪は自分で切りたいヴォーカルのカリ、美人議員が大好きなベースのサミ、おうちを出たくないドラムのトニ。個性的な4人によるパンクバンドの練習からライブ、そして日常を追うドキュメンタリー。知的障害者としての普段の生活から真っ正直に吐き出されてくる赤裸々な歌詞が強烈だ。「精神科施設のメシはまるで豚のエサ」「少しばかりの敬意と平等が欲しい」「施術師のバカ野郎 俺の時間を奪うな!」不満と怒気と願いがビートにのった瞬間、あらゆる別を超え、人々は音楽にのせてその思いに共感し、熱狂する。音楽が人を繋ぎ、音楽があるから理解できる。そんな瞬間を見せつけてくれる、正真正銘のパンク映画だ。
突然の銃乱射事件で息子を亡くし、息子が遺した楽曲を歌い継ごうとする父親。そしてその歌に魅了されたミュージシャン志望の青年。音楽を通じて巡り合った、親子ほど歳の離れた男2人の再生と成長を描いた人間ドラマ『君が生きた証』。一人で歌い、ギターを爪弾くのみだった楽曲が、「バンド」として仲間を得るにつれて重層的な広がりを見せる過程には心躍るだろう。遺された音楽によって、今は亡き人の思いを知ることができ、生きている者は共感し、繋がることができる。しかし、それは決して許されないことでもあった…後半に明かされるショッキングな真実と、そのドラマ展開を、是非その目で確かめて欲しい。『RUDDERLESS(当てもなくさ迷う/舵を失った)』という原題の意味を噛みしめることになる、社会派映画とも言える衝撃作。
『ONCE ダブリンの街角で』で世界的に注目を集めたジョン・カーニーが贈る最新作『はじまりのうた』。原題は『BEGIN AGAIN』。音楽を通じて悩める人々がそれぞれの「新たな一歩」を踏み出す物語だ。音と音楽をキーワードに、ニューヨークという街に捧げられたオマージュのような作品。お気に入りのプレイリストを聴きながら街を歩き回るシーン、楽曲ごとに違う屋外での録音、手作り感満載の安アパートで絞り出すように作り上げられるメッセージソング、セレブなフラットで新曲が明かすショッキングな事実、雑居ビルの外で聞こえる街の雑踏、もみくちゃにされながら爆音で踊るクラブ、そして親密な空間でのライブハウスなどのシーンを見た後には、お気に入りの音楽を聴きながら街をスキップしたくなってしまうような魔法がかかる、キュートでハッピーに満ちた映画となっている。
さそうあきらの漫画を原作にした、オーケストラ映画『マエストロ!』が大ヒット公開中だ。クラシック音楽の中でも定番とも言える「運命」「未完成」をモチーフに、解散したプロ・オーケストラの突然の再結成、経歴も素性も不明の謎の指揮者、天才フルート女子の登場などの物語が入り交じり、一癖も二癖もある楽団員たちと本番を迎えるまでのドラマが描かれる。共に音を出す、というアンサンブルの力が、人と人との繋がりを思い出させ、強固にし、時には言葉以上のものを伝え合う。ここでも音楽は過去と未来を、人をつなぐキーとして描かれる。松坂桃李、西田敏行の初共演やフルート奏者miwaの出演、実力派俳優達の楽団員やプロ演奏家の混じるオーケストラの様子など、見所は満載だ。text:yokano
◎公開情報
『パンク・シンドローム』
2015年1月17 日(土)より全国ロードショー
http://punksyndrome.net/
『君が生きた証』
2015年2月21日(土)より全国ロードショー
http://rudderless-movie.com/
(c)2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.
『はじまりのうた』
2015年2月7日(土)より全国ロードショー
http://hajimarinouta.com/
(c)2013 KILLIFISH PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED
『マエストロ!』
2015年1月31日(土)より全国ロードショー
http://maestro-movie.com/
(c)2015『マエストロ!』製作委員会 (c)さそうあきら/双葉社
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