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2015/02/22

Album Review:チャーリーXCX ジャンルを横断する充実のポップ作、その魅力の源に迫る

 英ハートフォードシャー出身の女性シンガーソングライター、チャーリーXCXによる、メジャー2作目となるフル・アルバム『Sucker』。その日本盤が、2月18日にリリースされた。以前から彼女自身が「パンクにインスパイアされたアルバム」と予告していたとおり、荒々しく、ときに鋭利なサウンドを振り回しつつ、アップリフティングなハウス・ナンバーからR&Bまでを横断してみせる充実のポップ作に仕上げられている。

 アイコナ・ポップの「I Love It」を手掛けてUK1位に送り込み、或いはイギー・アゼリアの「Fancy feat. Charli XCX」に参加してUS1位を勝ち取るなど、チャーリーの作曲術とパフォーマンスは、22歳という若さにして恐るべき懐の深さと越境性を備えている。アルバムに先行して届けられた、リタ・オラを迎えてのシングル「Doing It」は、まるでジャム&ルイスがマドンナをプロデュースしてしまったかのような、ダイナミックで普遍的な1曲となっている。

 疾走感に満ちたクラウト・ロック/ポスト・パンク・サウンドによって、世界を股にかけた活躍ぶりを伝える「London Queen」で作曲に参加しているのは、アリエル・ピンクにレミ・ニコルといったそれぞれ全く異なる表現分野のアーティストたちだ。また、野太いロックンロールで退屈な日常からの脱出を画策する「Hanging Around」を共作しているのは、ウィーザーのリヴァース・クオモ。音楽のあらゆるカテゴリーを突破してしまうチャーリーには、手を差し伸べる優れたアーティストたちも多い。余談だが、チャーリーは来るグウェン・ステファニーの新作曲にも参加しているようだ。

 <あんたってヒドいタトゥーしてるし、香水の匂いが安っぽいわよ>と歌われる「Breaking Up」や、退屈なセックスをボロクソにけなしまくる「Body of My Own」など、パンク/ロックの攻撃的なパワーを手中にしたチャーリーの歌は、男子もタジタジになってしまうほど痛快だ。一方で、失恋を乗り越え力強く羽ばたこうとする美曲「So Over You」にグッとされたりもする。傲岸不遜な振る舞いも、気丈な姿も、すべては楽曲の素晴らしさによって魅力が引き出されているのだ。

 日本盤ならではのトピックと言えば、やはり「Break the Rules」に「Boom Clap」といったヒット・シングル群の、それぞれ日本人アーティストが歌詞翻訳を手掛けた日本語ヴァージョンだろう。するすると耳に滑り込む、見事な歌詞と歌である。チャーリーにとっては、言語の壁さえも問題にはならないのだ。この4月には、大阪と東京で初めての単独来日公演も行われる。ぜひアルバムを聴き込んで、チャーリーを歓迎してあげて欲しい。

Text:小池宏和

◎リリース情報
『SUCKER』
2015/02/18 RELEASE
WPCR-16242 1,980円(tax out.)

◎公演情報
2015年4月15日(水)大阪。梅田AKASO
2015年4月16日(木)東京・LIQUIDROOM
info:http://www.creativeman.co.jp/artist/2015/04charli/

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