2014/12/28
シングル曲「Chandelier」は、恐ろしく前衛的で躍動感溢れる室内ダンスを繰り広げた少女ダンサーのMVが世界中で反響を呼び、YouTubeでの再生回数は現在4億回を越えた。そのアーティストは、オーストラリア出身のシーア。「Chandelier」も収録した最新アルバム『1000 Forms of Fear』の日本盤が、12月24日にリリースされている。彼女にとって、通算6作目となるフル・アルバムだ。本国オーストラリア、米国やカナダではアルバム・チャートの1位に輝いている。
シーアは、アルバム『Colour the Small One』(2004)収録の楽曲「The Bully」をベックと共作したことでも知られるシンガー・ソングライターだった。2010年代に入ると、デヴィッド・ゲッタの「Titanium」にフィーチャーされるなど広く注目される機会が増え、クリスティーナ・アギレラやリアーナ、ビヨンセ、カイリー・ミノーグといったトップ・スターたちの作品にソングライター/ヴォーカリストとして携わりながら、三十代後半に差し掛かって華やかな、そしてボーダーレスな活躍を見せている。
そんな彼女の最新アルバム『1000 Forms of Fear』は、タイトルが示すように、ラヴ・ソングの中に多彩な恐怖の形を描く、ダークなコンセプトに貫かれた作品だ。冒頭で触れたシングル「Chandelier」は、傷心のヒロインが享楽的で破滅的な日々に身をやつし、ワン、ツー、スリーの掛け声で浴びるように酒を飲み、「あのシャンデリアからぶら下がってやろう。明日など存在しないつもりで生きよう」と歌われる悲痛なナンバーだ。重厚なトラックとシーアの激しく抑揚する歌声が、楽曲の切迫感を増幅させている。
「彼はただ遊びたいだけなのよ。友達でいたいだけなの」と現実を突きつけながらも、姉御肌で優しく諭すように歌われる“Burn the Page”。ザ・ストロークスのニック・ヴァレンシによる軽快なギターがフィーチャーされ、恋のときめきに捕われて逃れられないさまをユーモラスなロックンロールで描き出す“Hostage”。そして、危うい狂気スレスレのロマンスをじっくりと歌い上げてしまう“Straight for the Knife”。ドラマティックな作曲術と個性的な歌声をフル稼働させ、恐怖のコンセプトを徹底するシーアの意気込みは並々ならぬものがある。
フォーキーで生々しいサウンドと、エレクトロニックで先鋭的なサウンドを融合させる作風は以前からのシーアのスタイルだが、恋の情念というテーマが『1000 Forms of Fear』の鬼気迫るようなエネルギーを担っているのは確かだろう。ディプロやザ・ウィーケンドといった極めて個性的なアーティストの客演でさえ、シーアの渦巻くような表現世界の中に取り込まれている。そしてアルバム本編を締め括る「Dressed in Black」の、救いのない悲劇的な結末。何とも言えないカタルシスに包まれる、衝撃的なアルバムだ。なお、日本盤は、「Chandelier」のピアノ・ヴァージョンと、フォー・テットによるリミックスも収録している。
Text:小池宏和
◎Sia - Chandelier (Official Video)
http://youtu.be/2vjPBrBU-TM
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