2014/12/15
ディアンジェロが、14年ぶりとなるニュー・アルバム『ブラック・メサイア』を本日12月15日に緊急リリースした。先週から海外メディアを通じて急激に広まっていた噂が、現実のものとなった。
注目の新作のタイトルは『ブラック・メサイア』。本作は2000年に発売され、日本を含む全世界で高い評価と人気を得た名作、『ヴ―ドゥー』以来実に14年ぶりのアルバムとなる。デジタルリリース後、輸入盤は12月23日より、国内盤は来春発売予定とのこと。
今回、ディアンジェロはこのプロジェクト名を“ディアンジェロ・アンド・ザ・ヴァンガード”としている。また、作品のリリースに際し、本人は以下の声明文を発表している。
<ディアンジェロ声明文>
“ブラック・メサイア”は、アルバムに付けるものとしては、とんでもないタイトルだ。容易に誤解を招くであろうし、多くの人は宗教的な事を想像するだろう。人によっては俺が自分自身を“ブラック・メサイア=黒い救世主”と呼んでいるものと決めつけるかもしれない。だが、俺にとってこのタイトルは俺達みんなについての事を意味しているんだ。それはこの世界全体についての事でもあるし、俺達みんなが目指すことのできる考え方を示すものでもあるんだ。俺達は皆、“ブラック・メサイア”になれるように志すべきなんだ。それは、“ファーガソン”(=ミズーリ州セントルイスにあるこの地で今年8月丸腰の黒人少年を群の警察官が射殺したことをきっかけに起った抗議デモ、暴動について言及している)や、“エジプト”(=’11年に起ったエジプト革命に言及している)や、“ウォール街を占拠せよ”(=’11年にウォール街で起こったアメリカ経済界、政界に対する一連の抗議運動を主催する団体名、またはその合言葉について言及している)その他、これ以上我慢がしがたい状況に対して変化を求めるべく決起している全ての場所の全ての人々についての事なんだ。それは一人のカリスマ性のあるリーダーを称賛するということではなくて、大勢のそういった人々を讃えるということなんだ。このアルバムの全曲が政治的メッセージ色の強いものではないけれど(多くの曲がそうではあるけれども)、このアルバムを“ブラック・メサイア”と呼ぶことがこれらの曲が一番しっくりくる風景を作りだしている。“ブラック・メサイア”は一人の人を示すものではない。それはまとめると、俺達みんながそのリーダーなんだという感覚を示すものなんだ。
また、ニューヨークでは昨夜、このニュー・アルバムのリスニングイベントが大々的に行われた。会場では歌詞を記載した用紙が配布された模様で、その情報によると12曲が収録されている本アルバムにはQティップ(ア・トライブ・コールド・クエストのフロントマン)、ケンドラ・フォスター(ファンカデリックのヴォーカリスト)が歌詞を手掛ける曲が収録されており、その他にもクエストラヴ(The Rootsのドラマ―、DJとして知られ、エルヴィス・コステロ、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ジェイ.Z、アル・グリーン他著名作品にてプロデューサーとしても活躍)、ピノ・パラディーノ(ザ・フーの再結成の際、ジョン・エントウィッスル没後最初にバンドに招かれたべーシストとして知られ、ジョン・メイヤー・トリオのべーシストも務める。) ジェームス・ガッドソン(ビル・ウィザ―ス、クインシ―・ジョーンズ、ハービー・ハンコック他数々の著名アーティストの作品に参加する伝説的ドラマ―)等超豪華ミュージシャンが参加しているとのこと。なお、ディアンジェロはこれら参加するアーティストに敬意を表し、総称して“The Vanguards/ザ・ヴァンガ―ズ”と呼ぶこととし、今回のプロジェクト名に加えたという。また、今回のアルバムはそのレコーディングからミキシングに至るまで、ヴィンテージ機材を駆使し、全て完全なるアナログ手法で制作されたという肝の入れようだ。ファンにとっては14年間待った甲斐のある作品であることは間違いなさそうだ。
また、アルバムのリスニングセッションも行われており、そのレポートも到着。
<リスニングセッションレポート:池城美菜子/Minako Ikeshiro>
「このアルバムは、いまのブラックミュージックにとって啓示になる。その美しさと醜さ、真実と嘘を含んでいる」
12月14日、日曜日午後5時過ぎ。ニューヨークのミートパッキング・ディスクトリクトにあるドリーム・ホテルの最上階。DJブースから降りて来た、ザ・ルーツのクエスト・ラヴが、ディアンジェロの待望の3作目『ブラック・メサイア』を初公開する直前に語った台詞だ。待望の、では言葉が足りない。何しろ、95年『ブラウン・シュガー』と2000年『ヴードゥー』で、激震を走らせたディアンジェロが14年11か月(つまり、15年だ)の沈黙を破って、いきなりドロップするのだから。尖った音楽を積極的にサポートするレッドブル・ミュージック・アカデミーが主催したパーティーは、彼が移籍したRCA(ソニー)ら関係者と招待された音楽ジャーナリストのみ。本人の姿は、なかった。司会は、夏に公開質疑応答をした音楽評論家/シナリオ・ライターのネルソン・ジョージ。映画監督のスパイク・リーと、ジェームズ・ブラウン、プリンスらの伝説的なツアーのマネージャーを務め、ディアンジェロ復活劇にも加わっているアラン・リーズが顔を揃えていた。
『ブラック・メサイア』は、「ディアンジェロ&ザ・ヴァンガード」と、バンド名義になっている。2012年にライヴ活動を再開させ、【アフロ・パンク・フェスティバル】などに出演するなど、ロック寄りの音作りになるとの予測が立っていたが、本作はそれほど単純な作品ではいない。ソウル、ファンク、メタル、ゴスペル、ヒップホップ、プリンス、マーヴィン・ゲイ……様々な要素を含みつつ、『ヴードゥー』で変貌を遂げたディアンジェロの音世界を進化させた内容だ。シングルは、インターネットで流れた「シュガ・ダディ」ではなく、「リアリ—・ラヴ」。スパニッシュ・ギターから始まる、流麗でセンシュアルな曲だ。15年前にすでに規則正しいドラム・パターンから完全に逸脱して、かつグルーヴを作ることに成功したディアンジェロは、本作でさらに型にハマるのを頑なに拒否。それでいて、ウッドベースなど楽器の音色を多用しているためか、気持ちよく聴ける。ギターは、本人がほとんど弾いているそう。特筆すべきは、衰えるどころか艶を増したディアンジェロのファルセット・ヴォイスだ。幾重にも重ねた「ティル・イッツ・ダン」などは圧巻。セッションが終わったところで、アルバムにも参加しているクエスト・ラヴが、「これはすべてアナログ録音、コンピュータに一切頼っていない」とのびっくり発言をした。とてもそうは聴こえない重厚なサウンドである。続いて、ネルソン・ジョージが「この作品は今晩の真夜中にデジタル・リリースされます」との爆弾発言。会場中が、どよめいた。
15年近く待たせて、いきなりリリースするのは、単なる話題作りではない。『ブラック・メサイア』は、社会的な空気を敏感に取り込んだ作品でもあるからだ。プロモーションに使われているリリックは、「話す機会が欲しかっただけなのに、代わりに死体位置確認のチョークの線を喰らっちまった(All we wanted was a chance to talk, ‘stead we only got outlined in chalk))(「ザ・シャレード」より)。フロリダのトレイボン・マーティン君、ファーガソンのマイク・ブラウン君、スタッテン・アイランドのエリック・ガーナー氏と、昨年から黒人男性が自警団や警官に殺されたのに不起訴になり、全米中が怒っている最中だ。今日だって、クリスマス・ショッピングで賑わうはずの街中で、判決に抗議するデモの人々による「撃つな! 手なら挙げている」というシュプレヒコールが響き渡っていた。
ディアンジェロ『ブラック・メサイア』は、音楽的、社会的に2015年を象徴する作品になる。長年待っていたファンも、新しく彼の音楽に触れるファンも、心して向き合おう。
◎リリース情報
『ブラック・メサイア』
iTunes:http://bit.ly/1IS8kbD
<トラックリスト>
[SIDE A]
01.Ain’t That Easy
Lyrics by D’Angelo, Q-Tip and Kendra Foster
Music by D’Angelo
02.1000 Deaths
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo
03.The Charade
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo and Questlove
04.Sugah Daddy
Lyrics by D’Angelo, Q-Tip and Kendra Foster
Music by D’Angelo, Pino Palladino and James Gadson
05.Really Love
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo
[SIDE B]
06 Back To The Future (Part I)
Lyrics and Music by D’Angelo
07.Till It’s Done (Tutu)
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo
08.Prayer
Lyrics and Music by D’Angelo
09.Betray My Heart
Lyrics and Music by D’Angelo
10.The Door
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo
11.Back To The Future (Part II)
Lyrics and Music by D’Angelo
12.Another Life
Lyrics by D’Angelo and Kendra Foster
Music by D’Angelo and Questlove
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