2014/11/27 19:00
25thアニバーサリーイヤーを記念してMR.BIGの来日公演が実現。今回のツアーでは東名阪に加えて札幌、広島、福岡、2011年に震災で断念した盛岡、仙台の公演も実現と、日本中を駆け巡り、11月10日には日本武道館公演が開催された。
<電動ドリルを手渡せば、お待ちかねの“ドリル奏法”>
待望の来日が決定し、期待が高まる夏の日に衝撃的なニュースが届いた。MR.BIGのドラマーであるパット・トーピーがパーキンソン病であるというニュース。つまり、本ライブでパットがドラムを叩けないという事実であった。そんな状況下で始まった来日ツアー。武道館公演は「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」から始まり、いきなり大合唱が巻き起こる。エリック・マーティン(vo)がポール・ギルバート(g)に電動ドリルを手渡せば、お待ちかねの“ドリル奏法”が繰り広げられ、一気に会場のボルテージは上がったところで新作から「Gotta Love The Ride」。さらには「American Beauty」「Undertow」などラウドなナンバーで攻めていく。
<パット ファンに向けて「俺、叩けるよ!」と言わんばかりの笑顔>
ポールとビリー・シーン(b)のインプロで文句なしのテクニックがたっぷりと披露された後、なんとステージにパット・トーピー(dr)が登場。パーキンソン病と診断されたパットが笑顔で現れ、オリジナルメンバー4人が揃う。人気曲「Alive And Kickin’」のイントロが流れ、この曲にパットはタンバリンやコーラスとして参加。彼の登場にテンションが上がったのか、ポールはソロで“歯ギター”を披露する。「Take Cover」ではエリックが出島に出てきてオーディエンスを煽り、さらにコール&レスポンスで一体感を作り出した。ポールも怒涛のソロタイムで会場を盛り上げる。
出島に用意された4つのマイクの前にメンバーが立てば、キャット・スティーヴンスのカバー「Wild World」、パットが作った「East/West」の2曲を。そしてメインステージに戻ると、サポートドラマーのマット・スターからチェンジし、とうとうパットがドラムセットに座った。「Just Take My Heart」のイントロが奏でられ、パットはドラムを叩く。続いて新作からの「Fragile」も引き続きパットがドラムを担当。正直、見ている限りでは右腕がかなり不自由な動きであり、辛そうである。明らかに右腕をカバーするような動きが見られる。しかし、「Just Take My Heart」を叩いた後、パットはファンに向けて「俺、叩けるよ!」と言わんばかりの最高の笑顔でバスドラムをダンダン! と踏んでくれた。これには涙を禁じ得なかった。
本編のラストは1stアルバムより「Addicted To That Rush」が。曲中に「Stop!!!!」と演奏を止め、オーディエンスとのコール&レスポンス。エリックの「ガールズ! ボーイズ! ミナサーン!!」という掛け声で会場全体を一つに結ぶ、堂々のフィナーレ。メンバー間の絆、そしてMR.BIGと日本との絆を感じずにはいられないライブであった。
<パットがロブ・ハルフォードに扮してボーカルマイクを握った>
オーディエンスの手拍子で5人が登場すると会場に笑いが起きた。サポートドラマーのマットの胸にはカタカナで“パット”とデカデカと書いてある。アンコールの1曲目は名曲「To Be With You」。当時のミュージックビデオが映され、曲中で現在のメンバーの姿に切り替わり涙を誘う。続いてエリックの犬の鳴きマネとともに始まるアッパーな「Colorado Bulldog」。そして、ジューダス・プリーストのカバー「Living After Midnight」。パットがサングラスにライダースジャケットを羽織り、ロブ・ハルフォードに扮してボーカルマイクを握った。ギターをビリー、ベースをエリック、ドラムスをポールとポジションをシャッフル。楽しそうにパットの得意なフィルをコピーしていたポールが印象的だった。
そして、最後は正ポジションに戻ってフリーのカバー曲「Mr.Big」。ドラムはもちろんパットが務めた。笑いの混じる楽しく温かなアンコール。最後に「アリガトウ、トーキョー」の言葉を残して、ライブは終わった。こうして25周年ライブを成功させたMR.BIG。その長いキャリアには栄光とともに多くの苦難もあった。武道館でみせたバンドメンバーの一挙手一投足がその歴史と絆を思い起こさせるものだった。またMR.BIGの歴史の重要な1ページとなることは間違いない。
なお、本ライブの模様は、WOWOWで2月に放送予定だ。
取材&テキスト:木村裕美
◎ライブ【MR.BIG LIVE in JAPAN 2014 at 日本武道館】
11月10日(月)日本武道館 セットリスト:
01.Daddy, Brother, Lover, Little Boy
02.Gotta Love the Ride
03.American Beauty
04.Undertow
05.Alive and Kickin
06.I Forget to Breathe
07.Take Cover
08.Green-Tinted Sixties Mind
09.Out of the Underground
10.The Monster in Me
11.Rock & Roll Over
12.As Far as I Can See
13.Wild World
14.East/West
15.Just Take My Heart
16.Fragile
17.Around the World
18.Addicted to That Rush
En1.To Be With You
En2.Colorado Bulldog
En3.Living After Midnight
En4.The Light of Day
En5.Mr. Big
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