2014/11/10
アッシャーが3年ぶりとなる北米アリーナツアー【The URX Tour】が現地時間11月1日にカナダ・ケベック公演を皮切りにスタート。キャリア20周年を迎えた彼は、北米の全27都市を2か月にわたってツアーを実施。その中から、11月7日に開催されたニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでのライヴレポートが到着。
「アッシャー! アッシャー! アッシャー!!」
11月7日、金曜日。ポップ/R&B界の頂点に立つ、アッシャーを見ようと、世界でもっとも有名なアリーナ、マディソン・スクエア・ガーデンに詰めかけた18,000人から、自然にかけ声がわき上がった。 観客に語りかけるつもりだったらしい主役が、いきなりの逆転現象に言葉を失って佇み、トレードマークの人懐っこい笑顔を見せる。全米27か所を回るキャリア3度目のアリーナ・ツアー、【The URX Tour】(The UR Experience Tourの略)は、まだ序盤戦。Vの字を象った ステージに登場すると、アレンジを効かせまくった「My Way」をなんとラップからスタートさせ、いきなり大ダンス大会の「OMG」をかます。ホーン隊4人、キーボードが2.5人(3人目はベースも兼任)、ドラムとDJという変則バンドは、意欲的にアレンジを変えた曲を次々とくり出す。 昨年に予定していた【Euphoria Tour】を、人気オーディション番組『The Voice』のコーチ役のためにキャンセルして新たに望んだ本ツアーは、いままで以上に音楽の幅にこだわった内容だった。
代表曲すべてがメガ・ヒットの上、根強く愛されている隠れ名曲も多数。00年代前半の正統派R&Bからヒップホップ・マナーやEDMのダンス・チューンまでと、アッシャーの楽曲は幅広い。「Love In This Club」などのクラブ・バンガーは比較的ストレートに歌ったものの、「U Remind Me」はブルージィーだったり、「Lil’ Freak」でまたラップを挟んだり。DJがプレイするだけの曲や、1分で切り替わる曲も。テンポを落として、前作『Looking 4 Myself』の リード・シングル「Climax」を歌い切ったのがハイライトのひとつ。「Twisted」は、ファレルがロビン・シックに提供した「Blurred Lines」と同じ路線で、アッシャーが一足早かったのだ、と再認識。最新曲「She Came to Give It to You」やクリス・ブラウンの「New Flame」もしっかりファンに届いている様子。2004 年のクラシック“Burn”での場内大合唱が、圧巻だった。
「There Goes My Baby」の後、冒頭のかけ声のシーンへ。アッシャーをMSGで見るのは、これで4回目になる。最初は、2001年のマイケル・ジャクソンの30周年記念特別コンサート。アッシャーはMJと一緒に「You Rock My World」を歌い、誰がキング・オブ・ポップの後継者か世界に宣言した。彼のパフォーマンスは抜きん出ていて、隣にいるマイケルが終始笑みを浮かべていたのをよく覚えている。2004年の『Confessions』後の【The Truth Tour】はダンスの上手さを全面的に押し出しながら、R&Bマナーのコンサートだったし、2010年『Raymond VS Raymond』後の【OMG Tour】は、一分の隙もないコリオグラフを施した緊張感溢れるステージだった。ちなみに、このセットはジャマイカの世界最大のレゲエ・フェス、【Reggae Sumfest】の最終日にそっくり再現、 アメリカのアーティストがセットごと持ち込んだのを見たのは初めてだったので、度肝を抜かれた。クリス・ブラウンが飛び入りして、ダンス・オフになったのは、楽しい思い出だ。アッシャーは会場のサイズより、その時々の表現したい内容にこだわるタイプ。2008年にはあえてホール・クラスで徹底的にセクシーな【One Night Stand : Ladies Only Tour】を敢行、MSGの徒歩圏内にあるハマーステイン・ボウルルームでインティメイトな時間を過ごした。その次に当たるのが、この【The URX Tour】。活動歴21年、36才になったアッシャーは、熱唱を響かせる場面、ダンス・スキルを見せつける場面、斬新なアレンジで聴かせる場面と、緩急をつけたステージを構成する大人になっていた。
日本のファンとして、今回は嬉しい話題も。女性3人男性5人のダンサーのうち、2人が日本人なのだ。本人が相当な踊り手であるアッシャーのバックを務めるのは、ダンサーとして最高の栄誉だろう。ケント・モリはグルーヴィーでダイナミックな動きが得意、金髪のユースケ・ナカイは切れ味抜群の端正なダンスと、それぞれ特徴が違い、見応えがあった。
「U Got It Bad」の後は、客席から女性をステージに上げての「Super Star」と「Bad Girl」。新曲「Good Kisser」のあとに、ドラム・ソロを披露する一幕も。ダンサーを紹介しながら「DJ Got Us Fallin' in Love」と「Yeah!」で一旦幕引き。アンコールはデイヴィッド・ゲッタとの「Without You」で、爽やかに閉めた。8作目を白紙に戻したと最近のインタヴューで答えたアッシャー。タイミングは見えないが、本人だけでなく、音楽シーン全体がまたしても震撼するような新しい切り口で来ることを予言するコンサートだった。
Text:池城美菜子
photo:Christie Goodwin / Jordan Taylor Wright
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