2014/10/16 11:22
金木犀の香りも一段落し、一雨ごとに秋が深まっていくこのごろ。そんなシックな夜に聴きたい音楽がある。それはAOR――アダルト・オリエンテッド・ロックだ。
その音楽を代表するミュージシャン、ボビー・コールドウェルがスタイリッシュなスーツに身を包み、昨年に引き続き『ビルボードライブ』で、秋雨の降る今夜もゴージャスでロマンティックな歌声を披露してくれた。デビュー当時と変わらないスリムな身体から発せられるスムースで伸びやかな声。外の天気とは正反対に躍動的でカラッとした演奏の「スペシャル・トゥ・ミー」でステージがスタート。彼女や奥さんと親密な夜を過ごしたいなら、彼の音楽はもはや“必需品”のはず。都会的で洗練されていながら、どこかトロピカルなリゾート感覚も漂う彼の楽曲の数々。もちろんボビー本人の歌もエモーショナルで、ときにソウルフルでありながらもスマートな表情を変えることはない。“ミスターAOR”のニックネームそのままの歌い回しとサウンドは、オーディエンスを都会の中にあるリゾート空間にワープさせてくれる。まさに、秋の夜長を堪能するにふさわしいアーティストだろう。
1951年にニューヨークのマンハッタンで生まれながら、幼少のころからマイアミで育ち、自然と南国的な開放感を身につけてきたボビー。彼は当時、地元で流行っていたマイアミ・ソウルを聴きながら育ったのだろう。78年に地元のソウル・レーベル“TK”からリリースしたシングル「風のシルエット」が日米両国でヒットし、一躍メジャー・ミュージシャンの仲間入りを果たした。
また、コンポーザーとしても、ボズ・スキャッグスに「ハート・オブ・マイン」、元シカゴのピーター・セテラに「ネクスト・タイム」や「ステイ・ウィズ・ミー」を提供し、すべてがヒット・チャートを駆け上がっている。それらの楽曲はその後、ボビー自身もレコーディングして、セクシーなナンバーに仕上げている。さらには、日本の煙草のCMにも曲が使用され、都市の摩天楼を俯瞰した映像と共に多くの人の記憶に刻まれているはずだ。
そんな彼のお洒落で洗練されたステージは、聴き手のみんなに、都会の喧騒の片隅に転がっているかもしれない、心暖まるロマンスとメルヘンを味わわせてくれる。また、彼の歌にはどこか懐かしい追憶感覚があるのも特徴だ。例えばデビュー・アルバムに収められた‘Take Me Back To Then’では「人生がメロウだったころ…」と、子供のころの想い出を甘いメロディとモノクロの映画を観ているような歌詞を綴ったナンバーだが、そのスティーヴィ・ワンダーを彷彿させるソウルフルな歌い回しが、何とも聴き手の胸を熱くするのだ。
人生には山もあれば谷もある。でも、ライフ・ゴーズ・オン――。そんな酸いも甘いも噛み分けたボビーが、目の前で熱唱してくれるのだから、こんなにゴージャスなライヴは滅多にない。丸みを帯びた深い響きを奏でる5人のバック・メンバーの腕も確かなもの。時代を超えた“大人の音楽”が、まさに目の前で繰り広げられる。その余韻も格別だ。
さぁ、今宵のプランは決定だね。ボビーの歌声に酔い痴れながら感じる深まり行く秋。もちろん、一緒に観に行く人との心の繋がりも深まるに違いない。
◎ボビー・コールドウェル公演情報
ビルボードライブ東京
2014年10月15日(水)~10月18日(土)
ビルボードライブ大阪
2014年10月21日(火)~10月24日(金)
More Info:http://billboard-live.com
Photo: Yuma Totsuka
Text: 安斎明定(あんざい・あきさだ)
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。深まる秋を彩る食材と共に楽しむには、南仏ラングドック地方のヴァン・ペイ・ドックに掘り出し物がたくさん。
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像