2014/09/10
米マサチューセッツ出身のメーガン・トレイナー20歳による、メジャー・デビュー・シングル「All About That Bass」が素晴らしい。今年6月にリリースされた同作は、The Billboard Hot 100で現在8週チャート・インの最高位2位。カナダやオーストラリア、ニュージーランドなど各国では1位を獲得している。ガール・パワー真っ盛りのカラフルなMVにおいても、個性豊かなダンサー陣に囲まれて身体を揺らすメーガン自身の姿が確認できる。
メーガンは、13歳のときにラップトップ上で作曲活動をスタートさせた若きシンガー・ソングライターで、ティーンネイジャーの頃には既にインディーズから作品を残している。彼女のデモ音源が名プロデューサーにして現エピック・レコーズCEO=L・A・リードの耳にとまり、メジャー・デビューが決定した。そして今回の「All About That Bass」リリースに至ったわけだが、これがメーガン・トレイナーというアーティストの存在意義を証明する、見事なデビュー曲に仕上がっているのである。
「All About That Bass」は、往年のモータウン・ガールズ・ポップを彷彿とさせるレトロな曲調でありながら、ふくよかで温もりのあるベース・ラインがポスト・ダブステップ/ベース・ミュージックの時代を映し出してもいる、という技ありな一曲だ。しかも、このアレンジの妙が歌詞と共鳴し、メーガンの主張をしっかりと支えている。「All About That Bass」の歌詞は、<私は、はっきり言えば太くて重たいベース音なの。高音じゃないのよ><雑誌に載ってる写真なんかみんなフォトショップでいじり回されてるし、そんなのリアルじゃないってみんな知ってるよ><男の子たちはちょっと大きめのオシリを抱くのが好きなんだから、サイズなんか気にしちゃダメって、ママも言ってたもの>といったふうに、まあグウの音も出ないほどの「ビバぽっちゃり」ソングなのである。
MVで確認できるメーガンのシルエットは、確かにポップ・スターとしてはややふくよか(とはいえ、筆者も含めて「グラマラスで可愛い」と言う人も少なくないはずだが)に見える。そんな彼女の個性をありのままに曝け出したナンバーが、「All About That Bass」なのだ。現在、マサチューセッツの離島の町からテネシー州ナッシュヴィルに移り住んでいるメーガンは、ビルボードの電話インタヴューに際して、「All About That Bass」が少なからず批判や論争を巻き起こしたこと、そんな中でもコルビー・キャレイらがこの曲を好きだと共感のツイートを寄せてくれたこと、そして「私が人々を救うことがあるなんて、信じられないわ」といった言葉を残している。
若い表現者が伝えるありのままの思いが、世界を覆う常識やムードを丸ごとひっくり返してしまうこと。そんなポップ・ミュージック独特の強いエネルギーが、「All About That Bass」のチャーミングな響きの奥底には渦巻いている。愛嬌とユーモア、そしてタフな反骨精神を兼ね備えたこの歌が、一人でも多くの人に届くことを期待したい。
Text:小池宏和
◎「All About That Bass」MV
http://youtu.be/7PCkvCPvDXk
iTunes:http://bit.ly/1rVSzuv
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