2014/08/13
イギー・アゼリアの「Fancy feat. Charli XCX」をThe Billboard Hot 100のトップから引き摺り下ろし、その後4週連続でその座に収まっているマジック!の「Rude」。リリースは2013年でありながら、今年に入ってじわじわとチャートを登り詰め遂に1位を奪取してしまった。デビュー・シングルがいきなりビルボード1位という、彗星のように現れたマジック!とは一体何者なのか。
マジック!は、カナダ・トロント出身のレゲエ・バンドであり、メンバーはナスリ・アトウェ(Vo.)、マーク・ペリズナー(G.)、ベン・スティヴァク(Ba.)、アレックス・タナス(Dr.)の4人。トロントは、カナダでは歴史的にジャマイカ系移民が多いことでも知られる都市だ。オーセンティックでルーツ色の強いレゲエというよりも、ハイブリッドでポップな、現代的に洗練されたレゲエ・ソングを披露し、今年6月には初のフル・アルバム『Don’t Kill the Magic』を発表したほか、ビルボードのワールド・ミュージック・チャート1位を獲得したFIFAワールドカップ公式アルバム『One Love, One Rhythm』にも「This Is Our Time (Agora É a Nossa Hora)」を提供している。
さて、そんなマジック!だが、実はフロントマンのナスリは、同じくトロント出身のアダム・メッシンガーとタッグを組むプロデューサー・チーム=ザ・メッセンジャーズとして、これまでにジャスティン・ビーバーの多くの楽曲をはじめ、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック、ピットブル、イギー・アゼリア、シャキーラらに楽曲を提供してきたヒット・メーカーだ。今春リリースされたシャキーラのセルフ・タイトル作では3曲をプロデュースし、そのうち「Cut Me Deep」ではマジック!がバンドごとフィーチャーされている。マジック!の活動にもナスリとアダムのパートナーシップは健在で、「ルード」はアダムのプロデュースであるほか、大半の楽曲においてもアダムは共同プロデューサーとして携わっている。
アルバム『Don’t Kill the Magic』では、ダブの手法を取り入れるにしても、ヴォーカルのハーモニーにディレイを加えてキラキラとドリーミーな効果を生み出したり、或いは「Stupid Me」やタイトル曲「Don’t Kill the Magic」で4つ打ちのリズムを採用したり。ヒット請負人チームの活躍は実に見事で、タイトルにニヤリとさせられながらの美曲「One Woman One Man」から、米西海岸レゲエ・パンク・バンドのサブライムを彷彿とさせる衝動的なナンバー「Little Girl Big World」と、作曲レンジも実に幅広い。
『Don’t Kill the Magic』日本盤は9月24日にリリース予定だが、公式サイトからは井上ジョーによる日本語対訳が添えられた「Rude(邦題:ルード★それでも僕は結婚する)」のビデオも閲覧できるので、ぜひチェックして欲しい。ルードとは、ジャマイカのスラングではしばしば「ワル」の意味で用いられてきた言葉だが、このプロポーズ・ソングでは彼女との結婚を何度も拒否する彼女の父親に対して「意地悪/無礼」の意味で使われているのが可笑しい。それにしてもナスリ、「最高のスーツを着て」って歌っているのに、ブラックのレザー・ジャケットはあんまりだろう。
Text:小池宏和
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