2014/08/09 16:20
伝説のファッションデザイナーのキャリアと人生を描いた映画『イヴ・サンローラン』で主役を務めるピエール・ニネが初来日し、8月8日に記者向けに会見を行った。
本作は、弱冠21歳で故クリスチャン・ディオールの後を継いでデザイナーとしてデビュー、さらに26歳で自らのブランドを設立したイヴ・サンローランの光と影を描いたストーリー。ブランド初公認の伝記作で、財団所有の貴重なアーカイヴ衣装の数々が登場する。
出演に際し、ピエール・ニネはイヴ・サンローランの独特な脆さを表している話し方を研究するため、本人の声をipodに入れて1日3~4時間聞いていたという。さらに、イヴ・サンローランの晩年に一緒に仕事をしていた女性にデッサンを学び、フィジカルコーチに体の使い方や作り方を学び、デザインやファッションの専門家に用語や布の扱い方を学ぶなど、入念な準備の上で撮影は進められた。ニネは「イヴ・サンローランは、22歳に躁うつ病と診断され、孤独を抱えた非常に複雑な人物。自分とは全く違う人物なので膨大な準備が必要でした。」と語った。
一番、撮影が大変だったのはラストのバレエ・リュスのシーンだったという。当時の年齢を再現する為にメイクに4時間半を要し、300人のエキストラによる観客、本物のモデルとドレスによって再現されたステージを、約5時間もの間 舞台袖で待ち続け、1テイクで撮影されたという。
「ステージ袖で待ち続けるということは、私にとって非常にストレスな時間でした。ですが、最後に拍手とともにステージに出た時、この長くてストレスフルな時間は、実際イヴ・サンローランが経験していた時間だったのだと気が付いたんです。それは、現実と映画が混ざり合ったような独特な感覚でした。さらに、この日は(イヴ・サンローランの公私ともにパートナーだった)ピエール・ベルジェ本人が見学に訪れていた唯一の撮影日。彼の前で演じた唯一の日という意味でも、非常に特別な日でした。」
最後に、ニネは作品について「いかにしてイヴ・サンローランが帝国を築き上げたのか。そして、アルコールやドラッグ中毒であった彼のダークで脆い面が赤裸々に描かれている点が見どころです。ですがポジティブなメッセージとして言えるのは、明晰な頭脳と、時代を先読みできる鋭い感受性を持つがゆえに、非常に暗い面も抱えていた彼が、その苦しみや痛みを芸術に転嫁させ、傑作を生み出すことができた人だということ。そこに、彼の素晴らしさがあると思います。」と締めくくった。
◎公開情報『イヴ・サンローラン』
<2014年 ベルリン国際映画祭 パノラマ部門 オープニング作品>
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ 、シャルロット・ル・ボン、ローラ・スメット、ニコライ・キンスキー
9月6日(土)角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他全国ロードショー
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