2014/07/10
ステッキをギターに持ち替えた音の魔術師が、色彩豊かな空間を創り上げたエンターテイメント・ショー!アコースティックの“バータイム”を擁した2ndステージをレポート。
定刻から10分少し過ぎたころ、会場のBGMがまだ鳴り止まぬうちにエモーショナルなギターの音色が聴こえはじめ、食事を取っていた客席の手が思わず止まる。そのままBGMがフェイドアウトし照明が暗転すると、ステージ下手側の客席階からバンドメンバーが登場。最後にギターを持ったままのヴァイが現れると、客席のファンから差し伸べられる手を律儀に取りながらステージへとあがる。この距離感もここビルボード・ライブの醍醐味だろう。
およそ300席を埋め尽くした(7、8日両日の1st・2ndステージともにほぼソールドアウトとのこと)客席を前にステージ中央に立つヴァイ。すっきりとした短髪に黒縁のメガネ、白いシャツの上に羽織った黒のベストという容姿もあいまり、自由自在に操るギターでオーディエンスに驚きと喜びを与える様はまさしく“マジシャン”のようだ。また、「Velorum」では、バンドのブレイクにあわせてまるで闘牛士のような軽やかなステップを踏んだり、人の声のようなギター・フレーズでオーディエンスとのコール&レスポンスを展開するなど、プレイに徹するのではなく、見せて、参加させて、楽しませるショーが出来るのも特筆すべき点。最近ではなかなかこれをクールにキメられるプレイヤーが少ないが、ヴァイのパフォーマンスは数年前にDVD化されたWHITESNAKE在籍時の華麗な動きから衰えるどころか、さらにしなやかさを増した印象だ。
たまに「ヴァイのギターは無機質だ」などという無知な声を聞くことがあるが、まったくの誤解だ。ステージ暗転中のイントロ部分で何かオーディエンスに感謝の祈りを捧げるかのようなジェスチャーを見せた「Whispering a Prayer」は、文字通り神がかっていた。幻想的な空間の中で聴かせる温かなギターの音色に思わずうっとりする。会場を包み込むそのサウンドからは、記憶の彼方にしまわれていた母の腕に抱かれているような安堵感を与えるものであった。
2ndステージだけに用意された“バータイム”もニクイ演出だ。「種の異なったラブソングで、月についてのラブソングだ」と紹介した「The Moon and I」では、アコースティック・ギターを手に自身の歌が披露される。ジョン・ウェットンを彷彿とさせた温かみのある歌声で前半をしっとり聞かせると、ギターと歌をシンクロさせてエキゾティックな空間を創りあげた。
イントロと同時に客席から歓声が上がった「The Ultra Zone」、「For The Love Of God」の人気曲で用意していたセットリストを終えると、深々と挨拶してステージを降りたものの、収拾のつかない興奮をハンドクラップに表すファンに応え再び登場する。アンコールでは、最前列の女性をステージに上げギターを肩にかけると、後ろから両手をギターに回しプレイするといった曲芸もみせる。ヴァイ自身も興奮している様子で、それまで座っていた客席も総立ちの大盛り上がりをみせ幕を閉じた。
変人フランク・ザッパ人脈のギタリストであり、またバンドに属さずソロとして世界屈指のギタリストに君臨し続けるスティーヴ・ヴァイ。常人離れしたフレージングや“完璧”なサウンドから変わり者扱いされることもあると思うが、生のプレイにはエモーションがたっぷりと込められている。期待通りの完璧なパフォーマンスで様々な空間へと誘うと共に、ファンに対しての敬意がひしひしと伝わってきた、彼の人情味あふれる人柄が伝わってくるステージであった。
Photo:Masanori Naruse
(写真は1stステージのもの)
◎【2ndステージ】
2014.07.07(月) at ビルボードライブ東京
01.Intro
02.Racing The World
03.Velorum
04.Band Intro's
05.The Crying Machine
06.Whispering a Prayer
07.Gravity Storm
08.Acoustic Set-
09.The Moon and I
10.Rescue Me
11.Pusa Road
12.Drum Solo
13.The Ultra Zone
14.For The Love Of God
15.Taurus Bulba
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