2014/05/24
リヒャルト・シュトラウス生誕150周年、オペラ『アラベッラ』が5月22日 新国立劇場にて幕開けした。
オペラ『アラベッラ』は、美しい姉のアラベッラと、経済上の理由から男装して育てられた妹ズデンカの、それぞれの恋愛と姉妹愛を描いたストーリーだ。今回、演出を務めたフィリップ・アルローは、“光の魔術師”と呼ばれ、色彩豊かな舞台が魅力の演出家。第一幕では青と白のシンプルなステージが照明の角度によって、それぞれの心情を表すかのように全く違う表情を見せた。さらに第二幕では舞台セットや小道具など、200~300種類もの青で華やかな舞踏会が描き出され、森英恵による衣装も鮮やかなブルーでステージを彩った。
ズデンカ役のアニヤ=ニーナ・バーマン、アラベッラ役のアンナ・ガブラーはもちろんのこと、2人の母親アデライデの竹本節子や、唯一真っ赤な衣装で華を添えるフィアッカミッリ役の安井陽子など、愛すべき登場人物が生き生きと歌い上げられ、シュトラウスの甘美なメロディとともにテンポよくストーリーが進行していく。第一幕のアラベッラに求婚に訪れるマンドリカ(ヴォルフガング・コッホ)の自信満々な態度と、娘の父であるにも関わらずお金に目が眩んで舞い上がってしまうヴァルトナー伯爵(妻屋秀和)のユーモア溢れるやり取りには、思わず笑いがこぼれた。
第二幕でアラベッラとマンドリカが永遠の愛を誓ったのも束の間、ズデンカによって物語は良からぬ方向へ急展開。第三幕ではアラベッラにマッテオとの浮気疑惑がかけられてしまい、怒りにまかせて罵倒するマンドリカや、なんたる侮辱と憤慨する両親で大混乱。入口で配られたあらすじで結末を知っているにも関わらず、迫真の演技によって客席もマッテオに同情したり、マンドリカにイライラしたりと翻弄される。真実を知るズデンカの登場まで、やきもきしていると「パパ! ママ!」というセリフが響き渡り、少しずつ縺れた糸がほどけ始める。美しい青で彩られた夢のような舞台と、上質な歌手陣による魅力的なキャラクター、そしてロマンティックなシュトラウスの音楽によって導かれるハッピーエンドの物語は、観る者 全てを温かい気持ちにさせてくれるに違いない。
◎公演情報
オペラ『アラベッラ』
リヒャルト・シュトラウス作曲
全3幕、ドイツ語上演/字幕付
会場:新国立劇場 オペラパレス
日時:
5月22日(木)18:30
5月25日(日)14:00
5月28日(水)18:30
5月31日(土)14:00
6月3日(火)14:00
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
衣裳:森 英恵
出演:
ヴァルトナー伯爵/妻屋秀和
アデライデ/竹本節子
アラベッラ/アンナ・ガブラー
ズデンカ/アニヤ=ニーナ・バーマン
マンドリカ/ヴォルフガング・コッホ
マッテオ/マルティン・ニーヴァル
エレメル伯爵/望月哲也
ドミニク伯爵/萩原 潤
ラモラル伯爵/大久保光哉
フィアッカミッリ/安井陽子
カルタ占い/与田朝子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
More info:
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/
写真:新国立劇場オペラ「アラベッラ」(2014年5月) 撮影:寺司正彦 写真提供:新国立劇場
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